第5話

# 05
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2026/05/10 21:00 更新


 体育館を出る。

 外の空気が、少しだけ冷たい。

 中にいたときより静かだ。

 それでも、

 さっきの光景だけがやけに残っている。



あなた
 (見てたな、 



 ほんの一瞬。

 視線が合ったわけじゃない。

 でも、確かにこっちを捉えていた。

 それだけで十分だった。




あなた
 (いや、… 



 軽く首を振る。

 考えても仕方ない。

 やることは決まっている。

 歩き出そうとして、足が止まる。

 体育館の方を見ると、

 まだ、明かりがついている。




あなた
 (、…まぁ 



 戻る理由なんて、いくらでもある。

 ボールの感触を確かめたいとか。

 フォームを調整したいとか。

 言い訳はいくらでも作れる。




あなた
 、…いいか 



 そのまま引き返した。














 体育館の扉を開ける。

 さっきより、ずっと静かだ。

 コートには、誰もいない。

 ただ、ボールがいくつか、転がっている。

 一つ拾う。軽く弾く。

 乾いた音が、やけに響く。





あなた
 (あいつなら、 



 自然と、さっきの動きが浮かぶ。

 レシーブ。

 体勢。

 一歩目。

 無駄がない。

 だからこそ、余計なものが混ざらない。

 選ばない、っていう意思も。



あなた
 、…っ 




 トスを上げる。

 助走に入る。

 踏み切る。

 打つ。

 ネットにかかる。

 落ちる。






あなた
 、…ははっ 



 小さく息が漏れる。

 分かっていたことだ。

 さっき見たものと、自分の動きが違うなんて。

 比べるまでもない。











 もう一度、拾う。

 同じようにやる。

 また、ズレる。

 タイミングが合わない。

 打点も低い。

 フォームも、どこか違う。


あなた
 こんなもんか、 



 呟く。

 納得したわけじゃない。

 ただ、確認しただけだ。

 今の位置を。
















 ふと、手が止まる。

 さっきのラリー。

 あの一本。

 自分が繋いだボール。

 あれは、悪くなかった。

 むしろ、良かったはずだ。

 誰が見ても。

 それでも。




あなた
 (選ばなかった。 



 理由は、分かっている。

 技術じゃない。

 タイミングでもない。

 もっと単純な話だ。




あなた
 嫌われてんのかね、笑 



 口にしてみる。

 少しだけ笑える。

 でも、すぐにどうでもよくなる。

 そんなことは。重要じゃない。



















 ボールを回す。

 指先に力を込める。





あなた
 (関係ないな 



 嫌われてようが、

 避けられてようが、

 選ばれないなら、

 それだけだ。

 じゃあ、どうするか。

 答えは簡単。



あなた
 、…選ばせる。 




 小さく呟く。

 誰もいない体育館に、落ちる。

 そのまま、トスを上げる。

 踏み込む。

 打つ。

 さっきより、少しだけいい音がした。












 ボールを拾う。

 呼吸を整える。

 もう一度、構える。

 コートの向こう側を、見る。

 誰もいない。

 当たり前だ。







 それでも。

 そこに立っている姿を、想像する。

 レシーブの位置。

 動き出し。

 視線。





あなた
 、…次は、切らせねぇよ。 





 小さく吐き出す。

 そのまま、踏み込んだ。





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