太智は、1人で屋上にいた。
夜風が、少し冷たい。
街の光が、遠くで煌めいている。
( 選ぶって言ったくせに、
まだ…選びきれてない )
いや、違う。
「決められない」んじゃない。
「決めない」と決めたのだと、
やっと自分で分かった。
足音がして、
後ろに気配が増える。
振り向くと、
舜太、柔太朗、仁人、勇斗。
全員が、そこにいた。
太智は、苦く笑う。
仁人が言う。
太智は、深く息を吸った。
柔太朗が、少し驚いた顔をする。
太智は、はっきり言った。
沈黙。
でも、それは責めるような沈黙じゃなかった。
胸に手を当てる。
舜太が、先に笑った。
柔太朗も、少し困った顔で言う。
仁人は、腕を組んで。
最後に、勇斗。
太智は、少し考えてから言った。
誰も否定しなかった。
夜景が、みんなの間を通り抜ける。
柔太朗が聞く。
太智は、首を振る。
仁人が言う。
舜太が、肩をすくめる。
でも、声は優しかった。
勇斗が、空を見上げて言う。
太智は、優しく微笑んだ。
誰かを選ばない。
でも、
誰かを失ったわけじゃない。
太智は思う。
( 答えを出さないって )
( 逃げじゃない )
( “今の自分に“ )
( 正直でいる、ってことなんだ )
夜の中で、
5人は、同じ景色を見ていた。
それぞれ違う気持ちを持ちながら、
それでも、
同じ場所に立っていた。
この決断を下されても、
誰も怒らない。
誰も責めない。
なんでだろう。
理由はたった1つ。
太智のことが好きすぎるからだ。
ーーーFinーーー

















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。