京本「…………ほくと?」
俺の瞳に映ったのは、
浴槽の中で水に浸かっている北斗だった。
京本「…………」
服は着たままだし、顔は白いし、
浴槽にはってある昨日の水は少し赤みがかっていた。
………まさか………。
京本「北斗!!!」
俺は北斗の元へ走った。
広くないバスルームを、そんなに遠くない距離を。
でも、俺にはやけに長く感じて、
俺、ほんとに進んでる?
と思う程だった。
ぴちゃぴちゃ、と音をたてながら北斗を抱き上げる。
北斗のからだは異常に冷たく、力が入っていなかった。
………みゃ………
みゃく………!!!
北斗の首に手をあけ、脈を確かめる。
あれ、ここじゃないのかな。
ここもない、
え、でも脈ってここらへんじゃ………。
最悪の事態を想像して、北斗の首から手を離した。
俺の手に黒く、少し赤みのある液体がついていた。
………これ、
………血………?
顔が青ざめる気がした。
きゅうきゅうしゃ……
京本「救急車呼ばなきゃっ…!!」
俺はポケットのなかに入っていたスマホを取り出し、「119」とうった。
なんとか状況を説明し、住所を教えた。
「約15分ほどで着きます」
……15分?
15分…………。
………いや、大丈夫。大丈夫だから。
北斗は、北斗は俺におはようって、
だって、昨日言ってくれたんだもん。
昨日の夜だって、
大好き〜って言ったら、
顔を赤くして照れてたじゃん。
そんな、
そんなわけないよ。
だって、………
ねぇ…………?
翌日、俺の家のバスルームには規制線がかかり、「KEEP OUT」という文字が繰り返されていた。
俺は冷たくなった北斗の手をぎゅっとにぎった。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!