第3話

3.鬱陶
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2024/08/26 09:00 更新
俺はあの後、どうやって帰ったか覚えていない。

ただ、北斗を見つけたときの記憶だけがずっとフラッシュバックして、

夜は眠れなくてオールした。

もう頭がぐしゃぐしゃで、

でも何故かこの状況を理解できてしまっている俺がいて、

悲しくて、苦しくて、

なんとも言えなくて。

感情なのかわからない気持ちがぐちゃぐちゃにすり潰されてて、

家に帰っても、

ベッドは冷たかった。



2人で買った家具

2人で買ったアクセサリー

2人で囲んだテーブル

2人で座ったソファ

その全てが俺を刺激して、涙腺が緩む。

京本「……、ほくとっ……」

人生で一番その言葉を口にした日だったかもしれない。

恋人の名前を呼んで

恋人のことを想って泣いて

恋人との思い出に浸って。

恋人のいる、人のいる生活が

こんなに尊いなんて………。

俺はこの大切さに気付かされた。

今まで自分が気付けなかったことに腹が立つとともに、

街中を歩くカップルたちが酷く鬱陶しかった。

それは当たり前じゃないんだぞ。

嫌いって言って触れられない期間が勿体無すぎる。

わかんないくせに。

人っていつ失うかわかんないのに

それをわからず手を繋いで

好きって言い合って

幸せだなって思いながら、

明日会う約束をする。

気づけてなかった俺も

気づけてないお前らも

みんなみんな鬱陶しい。

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