浜辺から上がり、道路に出る。
ここから100mくらいか。
道路の向こう側にあなたの家がある。
一歩ずつ、近づく。
道路を挟んで、宿が見えるところまで来た。
塀の上に、懐かしいウッドデッキが見える。
勝手に心臓がバクバクなってる。
初めてステージで
自分の歌声を披露した時と同じくらい。
『…..いや、てか、いるかわかんないし』
緊張しすぎて急に出たひとりツッコミ。
多分今ちょっと頭おかしい。
自分で自分に言い聞かせてる。
そのとき、遠くから声が聞こえた。
『おかあさーん、
ナギサ、泣いてるからもういくよーー!』
聞こえた声に固まってしまった。
あなたの声だった。
あなたが、いた。
間違えるわけがない。
それと同時に、
聴きなれない赤ちゃんの泣き声も聞こえた。
『………..ぇ』
ナギサ?
本当に意味がわからなかったけど
脳が勝手に色々考え始めようとした瞬間に
敷地内から一台の車が出てきた。
後部座席に座るあなた。
俺の前を車が通り過ぎた。
数ヶ月ぶりに見るあなたの顔。
たったの数秒の時間が、
コマ送りに見えた。
『………あなた.............』
溢れでる声。
呆然としてるうちに車は行ってしまった。
また、会えないのか。
いや、やっと会えたと言うべきか。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。