〜あなた目線〜
スパァァン
遊郭の最奥の部屋。
襖が勢いよく開かれた。
頭を思い切り下げ、口上を述べる。
噛まずに言えたっっ…!
ん?
えっ!?
この声は…
顔を上げるとそこには…
衆目美麗な鬼狩り様。
見慣れた半々羽織。
紛れもなく義勇さんがいた。
混乱するわたしの前に膝をつき、
義勇さんは顎をくいっと掴んだ。
義勇さんは一気に畳み掛けると
はぁっっと大きく溜め息をついた。
一段と大きく息を吐き、
優しく頬を撫でられた。
知らずとはいえ、自らがしようとしていた
ことの重大さに、今更ながら体が震えた。
ぽろりぽろりと涙が零れる。
義勇さんの大きな指が、
涙をすくっては、すりすりと撫でる。
義勇さんがそっと口付けた。
角度を変えて、何度も何度も。
くちびるを喰むように、
優しく…優しく…。
零れないようにがんばっている涙が
とめどなく溢れてしまう。
義勇さんは羽織だけをそっと脱ぐと
隊服姿のままわたしを押し倒した。
つづく
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。