第70話

【番外編】遊郭には行かせないぞ④
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2023/09/16 13:08
〜あなた目線〜


スパァァン



遊郭の最奥の部屋。

襖が勢いよく開かれた。

頭を思い切り下げ、口上を述べる。
あなた
御出なさいまし
今晩は旦那様のよろしゅうように
しつけてくださいまし
噛まずに言えたっっ…!



義勇さん
義勇さん
ふー…
やれやれだ

ん?
えっ!?

この声は…
義勇さん
義勇さん
…躾けか。
確かに必要だな
あなた
っって
え!え!?義勇さん!!??
顔を上げるとそこには…

衆目美麗な鬼狩り様。
見慣れた半々羽織。

紛れもなく義勇さんがいた。

あなた
わ、わたし帰りませんよ!
わたしの大事な任務ですもの
義勇さん
義勇さん
勘違いするな
連れ帰しに来たのではない
義勇さん
義勇さん
三日三晩、俺が買ったんだ
あなた
え…と
混乱するわたしの前に膝をつき、
義勇さんは顎をくいっと掴んだ。
義勇さん
義勇さん
全く莫迦ばかだ君は
義勇さん
義勇さん
どこぞの男に触れさせられるか
義勇さん
義勇さん
潜入任務とはいえ、
あなたに指をふれる男なぞ許さない
義勇さんは一気に畳み掛けると
はぁっっと大きく溜め息をついた。
あなた
えっと…
お水?お酒を差し上げることが
お仕事かと…
義勇さん
義勇さん
そんなわけないだろう
一段と大きく息を吐き、
優しく頬を撫でられた。
義勇さん
義勇さん
水揚げとは、遊郭で初めて
客に体を暴いてもらうことだ
あなた
!!
知りませんでした…
わたし…
義勇さん
義勇さん
そんなことだろうと思った
あなた
無知で…
はしたない…
知らずとはいえ、自らがしようとしていた
ことの重大さに、今更ながら体が震えた。

ぽろりぽろりと涙がこぼれる。
義勇さん
義勇さん
莫迦だな
泣くことはないだろう
義勇さんの大きな指が、
涙をすくっては、すりすりと撫でる。
あなた
義勇さん、わたしのこと…
幻滅なさいますか?
義勇さん
義勇さん
それこそ莫迦な
義勇さんがそっと口付けた。

角度を変えて、何度も何度も。
くちびるを喰むように、
優しく…優しく…。

零れないようにがんばっている涙が
とめどなく溢れてしまう。
義勇さん
義勇さん
だが、
わからせてやる必要はあるな
あなた
はい…
義勇さん
義勇さん
あなた…
義勇さんは羽織だけをそっと脱ぐと
隊服姿のままわたしを押し倒した。



つづく

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