第79話

61.夢と希望
74
2026/01/25 16:50 更新
───。
・・・永遠に来ないように思えた。
数々の奇跡の連続で、ついにたどり着いた。

世界はまもなく、終わりを迎える。


あなた
・・・おわらせないよ
アズリエル
アズリエル
・・・はッ!ニンゲン一人に何ができる?
おまえはもう、詰みだ


両の手を掲げ、ショッカーブレーカーの大型の星弾が壁や床にぶつかり合い花火のように散っていく。
周囲全方向に飛ぶそれは、ニンゲンの散弾銃をモデルに考案された攻撃。

───点滅する光の粒が、視界でパチパチと弾ける。
他人の支えでようやく立ち上がれる程度に衰弱したニンゲンなど、たった一発でお終いだ。
・・・アズリエルは口を歪めて、土埃が晴れるのを悠々と待った。



しかし・・・
そいつは・・・なぜか傷一つなく、肩で息をしていた。
あなた
・・・ ・・・、
アズリエル
アズリエル
案外しぶといな。
もう「終わった」というのに、まだ足掻くか。
あなた
わるかったね、思い通りにならなくて
アズリエル
アズリエル
フン・・・──まあ、いいさ。
おれは地下の世界をも簡単に滅ぼせる力を得た。
きまぐれに遊んでやろう。

滑稽だ。
あの油断しきったボスモンスターたちの力を全て取り込み、我が身で一つとなった。ついでにアズゴアがこっそり隠し持っていた6つのタマシイもついでに奪取することに成功したし、名実ともにおれは世界の支配者だ。


アイツは預かり知らぬことだが、
もう・・・ここで「セーブ」をしたから、いつでもやり直せる。
自分をイラつかせる存在に怯える必要もない。

世界最強の魔王がココに降臨した。


アズリエル
アズリエル
・・・いつまでもつかな
あなた
・・・。

着地地点完全ランダムな広範囲な雷撃。
本来は有象無象の歩兵軍隊向けの技だが、それをたった一人のひ弱なニンゲンに向ける。

光の帯が床に叩きつけられ、轟々と地響きが遺跡中を反響する。
あまり強力すぎると岩山が壊れるから、加減が必要かな?


アズリエル
アズリエル
・・・・・・おまえを倒し、その力を手に入れる。そしたら、ここともおさらばだ。
あなた
そんな未来は、ないよ
あなた
わたしが、勝つから
アズリエル
アズリエル
ばかばかしい



しかし、この攻撃も避けきったのか。
服に汚れが付いているから、幽霊というわけでもないというのに。

こんな事に時間を使う予定はなかった、が。
いいだろう、暇つぶしに付き合ってやる。
希望を前にして、あと一歩で及ばず全てに絶望するところを見てやろう。


アズリエル
アズリエル
おまえが丁寧に積み上げたなにもかもを、全部なかったことにしてやる!
あなた
くっ、うぅ!・・・んのッ!
あなた
・・・やらせるかよ。
わたしたちの友達を・・・返してもらうよ

両手に魔法の剣を顕現させ、それをもってやつを叩く。
1回、2回、3回・・・連撃についに相手は体勢を崩し、床へと転がった。

十字星型弾幕を発生させて追尾。
─── 身体を捻ってそれを往なした。

これも、当たらないか。面白い。

アズリエル
アズリエル
友達?おまえにそんなものが居るわけがないだろ?
アズリエル
アズリエル
おれが全員、残らず消した。
かわいそうに、一人ぼっちだ・・・!!
でも安心しなよ、それもすぐに終わる。

再び、雷撃を床に散らす・・・。
あいつは地を這う雷を視線を送り、発出の直前で動く。
何ともいじらしく、そして誠に人間らしい浅知恵だ。

仕方ない。
ショッカーブレーカーはほぼ意味が無い。
では、スターブレイジングはどうだ?



あいつのご自慢の脚を封じる手段足り得るか?
ああ───楽しい。

おれは、いま本当に楽しい。
あなた
ま・・・・・・じか
地面、抉れたぞ?
アズリエル
アズリエル
フフ・・・、死を目前とするとさすがに焦りがでるか?おまえはいつもおれを知ったように見透かして・・・鬱陶しかったよ。
アズリエル
アズリエル
花の姿のおれを「アズリエル」と、
・・・そう言い掛けたな。「真実のラボ」で知ったか?
あなた
!!
アズリエル
アズリエル
しね、しんでしまえ!
・・・・・・アズリエルはこの、おれだ!!吹けば飛ぶ、サイアクに弱い、気持ち悪い「アレ」じゃないッ!!二度と混同するなッ
あなた
アズリエル・・・わたしは、
アズリエル
アズリエル
・・・・・・まあ、もうどうでもいい。
もうその過去は無いことになった。
おまえを殺せば、全てが終わる。


レーザー砲を出現させ、ヤツの足元にばらまく。
新たな攻撃を行っては見たが、やはり思った以上に効きが悪いように感じる。

続けて魔法剣の応酬で退路を削る。
光芒一閃、首を獲ったと思ったが、紙一重で躱された。

あなた
・・・アズリエル
アズリエル
アズリエル
フフ、どうした?
休憩でもしたいか?
あなた
いや・・・もう、こんなことはやめよう。
意味がない。
あなた
─── わたしは、諦めない。
だからキミがどんな攻撃をしようとも、
わたしのこのケツイには敵わない。
アズリエル
アズリエル
・・・何をのたまうのかと思えば!!
かろうじて耐えてるだけの矮小なニンゲン風情が!
アズリエル
アズリエル
・・・・・・あは、あはははッ!
まだ躾が足りないか!!


さあ、次はなにをしよう?
カオスバスターか、・・・ショッカーブレーカーか。
あるいは、ギャラクティックブレイジングかな?

・・・もっと、もっとだ。
おれを楽しませてくれ!!


あなた
──なあ、アズリエル。
・・・ ・・・もし、もしだよ?

アズリエル
アズリエル
あなた
・・・トリエルとアズゴアの元で生きる、
もしそれができるとしたら・・・キミは「戻りたい」か?
アズリエル
アズリエル
・・・ ・・・は、


バカなことを、バカなやつがいっている。

・・・既にアズゴアもトリエルも自分の中にある。
ソレらを取り出したら、今のアズリエルが成り立たなくなり、やがて花の姿に戻る。
あり得ざる過程など、検討する余地もない。



しかも・・・、戻るだと?
おれは多くの記憶で思い知っている。あの後、アズゴアやトリエルと暮らしたとて、もはやおれには何の感情も生まれないのに。
もはやどんなモンスターに対しても共感も、理解もできない。


───タマシイが無いから。
何もかも、仮定が成立しないことを思い知ってる。
こんなこと、わざわざ口に出して言うのも、馬鹿らしい。

心底軽蔑した気持ちで嗤う。



アズリエル
アズリエル
・・・・・・拷問そのものだな。
おれがそんなことを望むと思うか?
アズリエル
アズリエル
ありもしない世界に耽溺たんできしたければ・・・いまスグに死に絶え、
理想の夢、ありもしない希望とやらを見るがいい。永遠にな。
あなた
・・・ ・・・そうか
あなた
理想の夢、ありもしない希望、か。
あなた
・・・ ・・・なら、そうさせてもらうよ
アズリエル
アズリエル
っ!?
あなた
貧弱なニンゲンだけど・・・
「この場所限定」で、力を借りられる
あなた
・・・・・・さあ、_ _ _。
───約束を、
果たすときが来たよ。

─── っ!?
ソイツは、「ショッカーブレーカーII」を
発動前のおれに向かって手を広げた。


まず、い。
おれまで巻き込まれる。

ホーミングを処理を中断し、光を握りつぶす。


・・・・・・ふわ、と。
あまいにおいがした。









・・・・・・いつもボクを楽しませてくれた。
友達になりたいのに、誰とも心を通わせることができなくて、拳を叩く。

フラウィ
フラウィ
かわいいね

必死に説明をしても、誰も信じてくれなくて、
── それで、攻撃をされて・・・失意のまま、逃げる。

フラウィ
フラウィ
すごいや

こっちを殺そうとしたとき。
─── 殺されて「あげた」時はね。

そして、何事もなく。
最初からやり直しになるところを、
あえて見せてあげたんだ。

─── ふふ、

フラウィ
フラウィ
・・・いいね、最高だ

最高に絶望を表現する叫び。
それが、ほしかったんだ。

キミはボクのおもちゃ。
何回も遊んでくれる。

たのしいたのしい、一番のお気に入り。



いつか、何もかも諦めてモンスターを殺し尽くした。
こっちが嘲笑っても、無視をしてきた。


フラウィ
フラウィ
そんなこと「向いていない」のに、
フラウィ
フラウィ
ボクを乗り越えるために、
そんなことまでするんだ?


ああ、かわいそう。
どうするの?どうするの?


なかよしになりたかった子たちをその手にかけちゃうんだ。
それって、すっごく素敵だね?


─── そいつは、ナイフを取り落とす。
慟哭し、顔を掻き毟る。
爪の間に肉が絡まり、涙のようにほとばしる水の奔流。

あぁ、キレイなお顔してるのに、なんてかわいそう。
罪の重さに絶えきれず・・・・・・かき切って、それは絶えてしまった。

ボクはそれを、咲いながら見届ける。

フラウィ
フラウィ
・・・・・・・・・?


次の場所は、おかしかった。
ボクを全く探さないの。見つけられないの。

なんでだろう、変だな。
遺跡をなんども巡って、スノーフルまで着いて、また遺跡に戻る。

── ついに見つけたけど、何もかもが違うような?
・・・・・・ま、いいや。今回は捨て周回だ。
キミが動かないなら、全然進むことはないし、夏休みでも貰えたと思って、バカンスを過ごすことにしようかな。


歌って、踊って、跳ねて。
いつも以上に滑稽だ。
ボクもかわりの子と遊んじゃうんだからね。


どうせ世界はボクの箱庭。
リセットしたら戻っちゃう。

フラウィ
フラウィ
(は?魔法?どういうこと・・・??)

おかしい。何かがおかしい。
どうしてそんな力をつける?

っていうか、キミってそんなにアタマ良かったっけ??




「アズ、」

「お前、か・・・ッ!」


ああ、そういうことか。
結局はアプローチを変えただけってことね?
・・・・・・いいね、俄然おもしろくなってきた。
ならボクはそれを上回るだけだよ。

可哀想に。上手く行ったと思い込んで、油断して。
─── 最後に友達を全て奪われるんだから!!



フラウィ
フラウィ
これまでボクのことを無視して、
侮っていた罰を与えるよ。
フラウィ
フラウィ
あっはっは、無様に啼け!!
史上最高に思い上がったニンゲンが ───!!思い知れッ!














あ───??
ここは、どこだ。

おれは、さっきまで・・・遺跡の中で、戦っていたはずだろう?



ズキリ、とアズリエルは頭に痛みを覚え、抑える。
どくん、どくん。

鼓動と同期して、痛みは増す。
おかしい、

そんな魔法は使っていない。




アズリエル
アズリエル
なん、だ・・・?
アズリエル
アズリエル
・・・!?この、からだはッ!

手が小さい。
にぎる力が、弱い。
・・・アズリエルは周囲を、見渡す。








アズリエル
アズリエル
誰だッ!!アイツの仕業か!?
これは何だッ!!
☟︎◆︎❍︎♋︎■︎
☟︎◆︎❍︎♋︎■︎
こっちだよ、アズリエル。
アズリエル
アズリエル
・・・・・・!!
あなた
・・・ ・・・
わたしも居るよ
☟︎◆︎❍︎♋︎■︎
☟︎◆︎❍︎♋︎■︎
あなた
や、ほー
アズリエル
アズリエル
なんだ、おまえら!?
☟︎◆︎❍︎♋︎■︎
☟︎◆︎❍︎♋︎■︎
── なんだとは
また、ずいぶん他人行儀なご挨拶だね
あなた
わたしは「あなた」、
はじめましてアズリエルくん。
そっちも自己紹介が要るだろう?
あなた
なんせ数百年ぶり、しかもキミは───
スクのをしてるんだから
☟︎◆︎❍︎♋︎■︎
☟︎◆︎❍︎♋︎■︎
なるほど?確かに?
では、茶番も終いにしよう・・・
アズリエル
アズリエル
───・・・ぅ、そだ
_ _ _
_ _ _
・・・
_ _ _
_ _ _
・・・わたしだよ、アズリエル。久しぶり
アズリエル
アズリエル
ッ !!
アズリエル
アズリエル
そんな、あ・・・
ありえない!!これは夢だ!!
アズリエル
アズリエル
キミは、とっくに死んだ!!
お、お前はニセモノだッ!!
あなた
・・・・・・だと、さ?
_ _ _
_ _ _
わたしは、
遺跡の奥地で「待っていた」。
色々工夫・・して、ついに顕現けんげんした。
ま、説明はそれだけでよくないか?
_ _ _
_ _ _
確かに、わたしは「死んでる」が、
実際・・・・・・お前も、さっきまで死んでいただろ・・・アズリエル。
アズリエル
アズリエル
いやっ
それは、そう・・・かもだけど・・・
アズリエル
アズリエル
え、・・・ほんとうに・・・?
あなた
え、わたしに聞くの?
・・・ほんとほんと。
証明するよ、正真正銘一人目のニンゲン
_ _ _
_ _ _
ホントーに愚図だな?
頭にウジ虫でも飼ってるのか?
それとも耳にオケラを詰められたか?
アズリエル
アズリエル
わ・・・ぁ、この理不尽な怒涛の暴言
なつかしいなあ
あなた
それで納得できちゃうんだ?
どうなん?それ
_ _ _
_ _ _
・・・・・・まあ、いい。この場の不思議さは、枚挙まいきょにいとまがないから
アズリエルがグズるのも、致し方ない
あなた
だね。「死者」がこんなに集まっているんだ。
たぶん、生と死が曖昧なんだな。
アズリエル
アズリエル
───集まってる?
・・・・・・!!




「あなた」が手を天に掲げると、
色とりどりのタマシイが、そこに集まった。

🩵🧡💙💜💚💛

それらはくるくると回って、それぞれの影になった。

水色は、忍耐。
おもちゃのナイフといろあせたリボンを握る。

橙色は、勇気。
じょうぶなてぶくろを天に掲げ、いさましいバンダナがはためく。

青色は、誠実。
バレーシューズを鳴らし、おふるのチュチュがひらりと揺れる。

紫色は、不屈。
やぶれたノートを抱えて、くもったメガネで前を見据える。

緑色は、親切。
こげたフライパンに、よごれたエプロン。汚れは分け与えた数に比例。

黄色は、正義。
からっぽのピストルをくるりと回し、カウボーイハットを軽く押し上げる。

すべてのニンゲンが、ココに集った。





アズリエル
アズリエル
どう、いう・・・こと??
なぜ、こんなことが・・・
あなた
・・・・・・さてさて。
アズリエルくんに、ひとつ
お話がございます
アズリエル
アズリエル
うん?
_ _ _
_ _ _
おまえに、改めて選択権をやろう


「───道は、二つに一つ、だ」
「・・・今度こそは、迷ってくれるなよ」






_ _ _
_ _ _
ここにいる全員のタマシイを使って、
わたしとの「約束」を果たすか?
アズリエル
アズリエル
───ッ!
_ _ _
_ _ _
それとも、
このままわたしたちと永遠の夢を見るか?
_ _ _
_ _ _
・・・・・・選べ。アズリエル。
わたしはそのためにお前を呼んだ。
あなた
・・・そのために、
わたしはココにキミを連れてきた
アズリエル
アズリエル
・・・・・・ッ!!
アズリエル
アズリエル
こ、困るよ・・・ふたりとも!
急にそんなことを・・・いわれても・・・!
アズリエル
アズリエル
キミとの約束を
果たさず仕舞いだったこと、
心のこり、ではあったけど・・・


アズリエルはちらりと二人を伺う。

一番の親友・・・ ・・・そして、あなた。
周囲でアズリエルを心配そうに覗き込む、タマシイの子どもたち。







あぁ、
ココには、わるいニンゲンは、訪れない。
敵もない、戦争もない。

─── まさに楽園のような場所。



アズリエルを傷つけるものは居ないし、
アズリエルも傷つけることはないだろう。




アズリエルの胸の奥が
トクトクと温かい気持ちで満たされる。
これが、こころ・・・・・・。


_ _ _
_ _ _
・・・・・・
あなた
・・・・・・
アズリエル
アズリエル
─── ここは、やさしい。
・・・ ・・・嫌だ、失いたくない。
ボクは・・・「夢と希望」を見ていたい。
アズリエル
アズリエル
ずっと、独りぼっちだったんだ!!
ようやく報われた、と思ったんだ・・・ッ!!
アズリエル
アズリエル
ここが、いい。
・・・ボクは、キミたちと、
居たい・・・ッ!!
_ _ _
_ _ _
・・・・・・そ、
仕方ないか
あなた
・・・だよねぇ
あなた
キミはもう、たくさん苦しんだ
・・・・・・よく、がんばったね。

さ、審判は終わり終わり!
みんなで遊ぼうじゃないか。

とあなたは笑った。


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