───。
・・・永遠に来ないように思えた。
数々の奇跡の連続で、ついにたどり着いた。
世界はまもなく、終わりを迎える。
両の手を掲げ、ショッカーブレーカーの大型の星弾が壁や床にぶつかり合い花火のように散っていく。
周囲全方向に飛ぶそれは、ニンゲンの散弾銃をモデルに考案された攻撃。
───点滅する光の粒が、視界でパチパチと弾ける。
他人の支えでようやく立ち上がれる程度に衰弱したニンゲンなど、たった一発でお終いだ。
・・・アズリエルは口を歪めて、土埃が晴れるのを悠々と待った。
しかし・・・
そいつは・・・なぜか傷一つなく、肩で息をしていた。
滑稽だ。
あの油断しきったボスモンスターたちの力を全て取り込み、我が身で一つとなった。ついでにアズゴアがこっそり隠し持っていた6つのタマシイもついでに奪取することに成功したし、名実ともにおれは世界の支配者だ。
アイツは預かり知らぬことだが、
もう・・・ここで「セーブ」をしたから、いつでもやり直せる。
自分をイラつかせる存在に怯える必要もない。
世界最強の魔王がココに降臨した。
着地地点完全ランダムな広範囲な雷撃。
本来は有象無象の歩兵軍隊向けの技だが、それをたった一人のひ弱なニンゲンに向ける。
光の帯が床に叩きつけられ、轟々と地響きが遺跡中を反響する。
あまり強力すぎると岩山が壊れるから、加減が必要かな?
しかし、この攻撃も避けきったのか。
服に汚れが付いているから、幽霊というわけでもないというのに。
こんな事に時間を使う予定はなかった、が。
いいだろう、暇つぶしに付き合ってやる。
希望を前にして、あと一歩で及ばず全てに絶望するところを見てやろう。
両手に魔法の剣を顕現させ、それをもってやつを叩く。
1回、2回、3回・・・連撃についに相手は体勢を崩し、床へと転がった。
十字星型弾幕を発生させて追尾。
─── 身体を捻ってそれを往なした。
これも、当たらないか。面白い。
再び、雷撃を床に散らす・・・。
あいつは地を這う雷を視線を送り、発出の直前で動く。
何ともいじらしく、そして誠に人間らしい浅知恵だ。
仕方ない。
ショッカーブレーカーはほぼ意味が無い。
では、スターブレイジングはどうだ?
あいつのご自慢の脚を封じる手段足り得るか?
ああ───楽しい。
おれは、いま本当に楽しい。
レーザー砲を出現させ、ヤツの足元にばらまく。
新たな攻撃を行っては見たが、やはり思った以上に効きが悪いように感じる。
続けて魔法剣の応酬で退路を削る。
光芒一閃、首を獲ったと思ったが、紙一重で躱された。
さあ、次はなにをしよう?
カオスバスターか、・・・ショッカーブレーカーか。
あるいは、ギャラクティックブレイジングかな?
・・・もっと、もっとだ。
おれを楽しませてくれ!!
バカなことを、バカなやつがいっている。
・・・既にアズゴアもトリエルも自分の中にある。
ソレらを取り出したら、今のアズリエルが成り立たなくなり、やがて花の姿に戻る。
あり得ざる過程など、検討する余地もない。
しかも・・・、戻るだと?
おれは多くの記憶で思い知っている。あの後、アズゴアやトリエルと暮らしたとて、もはやおれには何の感情も生まれないのに。
もはやどんなモンスターに対しても共感も、理解もできない。
───タマシイが無いから。
何もかも、仮定が成立しないことを思い知ってる。
こんなこと、わざわざ口に出して言うのも、馬鹿らしい。
心底軽蔑した気持ちで嗤う。
─── っ!?
ソイツは、「ショッカーブレーカーII」を
発動前のおれに向かって手を広げた。
まず、い。
おれまで巻き込まれる。
ホーミングを処理を中断し、光を握りつぶす。
・・・・・・ふわ、と。
あまいにおいがした。
・・・・・・いつもボクを楽しませてくれた。
友達になりたいのに、誰とも心を通わせることができなくて、拳を叩く。
必死に説明をしても、誰も信じてくれなくて、
── それで、攻撃をされて・・・失意のまま、逃げる。
こっちを殺そうとしたとき。
─── 殺されて「あげた」時はね。
そして、何事もなく。
最初からやり直しになるところを、
あえて見せてあげたんだ。
─── ふふ、
最高に絶望を表現する叫び。
それが、ほしかったんだ。
キミはボクのおもちゃ。
何回も遊んでくれる。
たのしいたのしい、一番のお気に入り。
いつか、何もかも諦めてモンスターを殺し尽くした。
こっちが嘲笑っても、無視をしてきた。
ああ、かわいそう。
どうするの?どうするの?
なかよしになりたかった子たちをその手にかけちゃうんだ。
それって、すっごく素敵だね?
─── そいつは、ナイフを取り落とす。
慟哭し、顔を掻き毟る。
爪の間に肉が絡まり、涙のようにほとばしる水の奔流。
あぁ、キレイなお顔してるのに、なんてかわいそう。
罪の重さに絶えきれず・・・・・・かき切って、それは絶えてしまった。
ボクはそれを、咲いながら見届ける。
次の場所は、おかしかった。
ボクを全く探さないの。見つけられないの。
なんでだろう、変だな。
遺跡をなんども巡って、スノーフルまで着いて、また遺跡に戻る。
── ついに見つけたけど、何もかもが違うような?
・・・・・・ま、いいや。今回は捨て周回だ。
キミが動かないなら、全然進むことはないし、夏休みでも貰えたと思って、バカンスを過ごすことにしようかな。
歌って、踊って、跳ねて。
いつも以上に滑稽だ。
ボクもかわりの子と遊んじゃうんだからね。
どうせ世界はボクの箱庭。
リセットしたら戻っちゃう。
おかしい。何かがおかしい。
どうしてそんな力をつける?
っていうか、キミってそんなにアタマ良かったっけ??
「アズ、」
「お前、か・・・ッ!」
ああ、そういうことか。
結局はアプローチを変えただけってことね?
・・・・・・いいね、俄然おもしろくなってきた。
ならボクはそれを上回るだけだよ。
可哀想に。上手く行ったと思い込んで、油断して。
─── 最後に友達を全て奪われるんだから!!
あ───??
ここは、どこだ。
おれは、さっきまで・・・遺跡の中で、戦っていたはずだろう?
ズキリ、とアズリエルは頭に痛みを覚え、抑える。
どくん、どくん。
鼓動と同期して、痛みは増す。
おかしい、
そんな魔法は使っていない。
手が小さい。
にぎる力が、弱い。
・・・アズリエルは周囲を、見渡す。
「あなた」が手を天に掲げると、
色とりどりのタマシイが、そこに集まった。
🩵🧡💙💜💚💛
それらはくるくると回って、それぞれの影になった。
水色は、忍耐。
おもちゃのナイフといろあせたリボンを握る。
橙色は、勇気。
じょうぶなてぶくろを天に掲げ、いさましいバンダナがはためく。
青色は、誠実。
バレーシューズを鳴らし、おふるのチュチュがひらりと揺れる。
紫色は、不屈。
やぶれたノートを抱えて、くもったメガネで前を見据える。
緑色は、親切。
こげたフライパンに、よごれたエプロン。汚れは分け与えた数に比例。
黄色は、正義。
からっぽのピストルをくるりと回し、カウボーイハットを軽く押し上げる。
すべてのニンゲンが、ココに集った。
「───道は、二つに一つ、だ」
「・・・今度こそは、迷ってくれるなよ」
アズリエルはちらりと二人を伺う。
一番の親友・・・ ・・・そして、あなた。
周囲でアズリエルを心配そうに覗き込む、タマシイの子どもたち。
あぁ、
ココには、わるいニンゲンは、訪れない。
敵もない、戦争もない。
─── まさに楽園のような場所。
アズリエルを傷つけるものは居ないし、
アズリエルも傷つけることはないだろう。
アズリエルの胸の奥が
トクトクと温かい気持ちで満たされる。
これが、こころ・・・・・・。
さ、審判は終わり終わり!
みんなで遊ぼうじゃないか。
とあなたは笑った。







































編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。