___10月11日___
今日は休み。なにもすることがない。
いつもなら各自、好きなことをするのだがモトキが赤ちゃんなため放っておくことができない。
踊り出しそうなほど跳ね上がるシルク。
興奮してモトキを高い高いするシルク。
……ちょー可愛い。食べちゃいたい。
自分も楽しみだと思いつつ、良からぬことを考えていた。
最近休みがなかったし、編集に追われてたからなー。息抜きにちょうどいいかもと思い提案したが、2人とも嬉しそうで良かった。
出掛け先は近くの動物園。徒歩20分くらいの場所である。
紅葉も楽しむという目的で歩いて向かった。
最近パンダの赤ちゃんが生まれたこと以外、園内は何も変わらなかった。
懐かしみながら園内を周った。
そう言い、カバンから必要なものを取り出し、ミルクを作るシルク。
作ったミルクをモトキの口に運んでいく。
相変わらずの飲みっぷり。シルクが作ったからなのか今日はよく飲む。
うーん。やっぱ昼飯、作っておいた方が良かったかー。
そう思いながら、近くのコンビニで弁当やら飲み物などを買い、2人の待つベンチへ戻ると……
知らない男2人がシルクに詰め寄っていた。
右に立っていた男がシルクの手を掴んだ。
すると、モトキがシルクの身の危険を感じたのか
大声で泣き始めた。
シルクから手を離し、立ち去る2人。
くずおれるようにシルクが地面に座りこんだ。
2人まとめて抱きしめた。
シルクの体がすごく震えている。
さらに強く抱きしめた。
モトキの頭をなでながら
そうつぶやくと、嬉しそうに笑った。
そう言いながらも、シルクの手はかすかに震えている。
俺は無言でシルクの手を握った。
かなり怖い思いをしたのだろう。わずかに体を俺の方に傾けている。
彼女の目は涙でうるんでいた。
帰宅後、お互い少々ぎこちないまま過ごし、その日を終えた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。