ぐるるる...
俺が恥ずかしくて何も言わないまましばらく歩いていたところ、沈黙の中に大きなぶるーくのお腹の音が鳴り響いた。
...はは、お腹空いたんだ...可愛いなぁ
ぶるーくのお腹の音が可愛すぎて、俺は表情も言葉も綻んでしまい、笑顔でポケットの中身を探ってみる。
...あ、なんかの袋ある、何だっけこれ...
シャークんが作ってくれたそれを、俺はぶるーくの手のひらの上にそっと乗せる。
...何だっけ、"本"と"サメ"と"マイク"だっけな?
シャークんが地球の調査の時に好きになっていたものの形を象ったもの、らしい。
...まぁ、俺らと同じ食べ物を食べるってことは、俺らの細胞を作る元がぶるーくの体に入るわけで...
さっきまでは食べられなかったこのお菓子も、食べれば食べるほどぶるーくの体が順応してきて、食べられるようになる、という仕組みなんだよね。
多分。
...という訳で、ぶるーくは噛めば噛む程お菓子を美味しそうに食べるようになった。
可愛いものを見て、俺のさっきまでのモヤモヤは晴れていった。
何だか、ぶるーくの足取りが重くなっている。
...心拍数、血圧も、正常値から大分離れた値になってしまっている。
でも、そんなこと直接聞いたら気持ち悪がられてしまうかもしれない。オブラートにもう少し包んで...
俺が顔色の悪いぶるーくを心配した、という体にして声をかけた瞬間、俺の肩にぶるーくの頭が乗せられた。
その瞬間細胞全部が跳ね上がりそうな程にびっくりしたが、地球人が倒れるってことは相当な体調不良に陥っているということに気づいて、急いで切り替えた。
ぶるーくは、俺に抱きついて肩に頭を置いたまま、耳元で過呼吸気味に息を吸ったり吐いたりしている。
距離の近さで俺の心臓もキャパオーバーしそうだが…んなことよりぶるーくが死んじゃったら元も子もない。
…俺らの細胞の変化が速いばかりに。
そう声をかけると、従順な俺たちの細胞はちゃんと言うことを聞いて、ぶるーくの過呼吸は段々と治まってきていた。
ぶるーくのことをぎゅっと抱きしめて、右肩のぶるーくの頭をそっと左手で撫でてあげる。
…あぁ、ふわふわの髪。髪の毛は、まだ純粋な地球人だった時と同じだ。
あぁ、本当に愛おしい。
ぶるーくはそっと俺から離れて、泣きそうな顔を自分の腕で隠した。
そして、少しだけ涙を拭った後、俺に対してにぱっと笑いかけ、俺の手をぎゅっと両手で握った。
…ぶるーくの体が今変化中だということを考慮すると、無理に動かすとまた体調不良に陥るかもしれない。
内蔵が変化するということは、運動してあえて活性化するようなことは避けた方がいいだろう…それに、足取りがふらむいていたり体幹が弱くなっているようにみえる。
そう、ぶるーくの体をじっと見つめながら考える。
…それなら、俺がやることはひとつだ。
ぶるーくは自覚していないだろうが…俺に抱えられた瞬間、顔を耳まで真っ赤にしていた。
いや〜〜可愛い、役得役得。
俺に対して抵抗しようとしたのだろうが、やっぱり自分でも体の不調を感じていたのだろう、ぐっと言葉を飲み込んで俺に体を預けた。
…細胞たちは、俺の声が大好きだ。
だから、ぶるーくが知らない間にゆっくりゆっくりと体を侵略していくようにするために、俺は歌う。
…ぶるーくも、半分以上がもう俺らの細胞と一緒だからか、心地良さそうな顔をしている。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!