…一応、雰囲気を出しておく為に黙っているが…ぶるーくはどうも気持ちが落ち着かないようで、下を向いたままだった。
俺は少しでもぶるーくが俺の優しさに溺れてくれるようにと、傍にいて頭を撫でたりしているが、本来の目的には気づいてくれないようだ。
…子供のように泣かれちゃ、俺も困る。
超〜〜絶不本意だが、俺は彼奴と通話を繋げてやることにした。
一応、なかむの名は知らないっていう体にするために、ちゃんと知らないふりをしておいた、俺偉い。
流石シャークん、話が早い。
俺は自分のインカムをぶるーくに付けさせ、何を喋るかを近くで聞いてやるためにデコをくっ付けた。
思った通り、ぶるーくが狼狽えた。
狼狽えれば、ちゃんとした応答も出来なくなる。そうすれば、情報が得られずに、"話す"ことだけが達成出来る…そうなるはずだ。
ぐ、と眉間に皺を寄せて、1人だけで冷静になろうと目を閉じて考えていた。
すると、ぶるーくがぱっと俺から離れて、明るい笑顔を見せた。
俺はぶるーくの耳からインカムを外しながら問いかけてみた。
…一切、ぶるーくがなかむと話している言葉を聞かなかったから急いで聞いてみた、が。
これで万が一なかむロボットとの会話が上手くいって、なかむへの想いがより一層強くなっていたらどうしよう、と聞いたことを後悔してしまった。
…なかむが本物ではないと諭さないようにするために適当な理由をつけたが、ぶるーくは単純だから俺の言うことをそのまま信じてくれた。
…なかむとの話は盛り上がらなかったようだ。良かった良かった。
まぁ、信号も何も、ぶるーくの周辺の人間を全員殺し終わって、ぶるーくもほとんど俺らと同じ細胞に変わってきたから切り上げる、ってだけなんだけど。
俺は、仲間たちの位置情報が載っているタブレットを見ながら、しばらく焦点をそこに当てる。
ぶるーくの事をずっと考えていたら、急にそのぶるーくから優しく抱きしめられた。
気づくと、ぶるーくの顔が俺のすぐ隣にあって、最初に会った時のような小動物のような感じは無く、対等に思えた。
…あれ、ぶるーくってこんなに大きかったんだ。
…ぶるーくながらに、俺の事を元気づけようとしてくれたんだろう。
俺、自分の表情はあっちの星では"ポーカーフェイス"とか言われるぐらいに硬かったんだけど…君がいたから、表情も変わりやすくなったのかな…
まぁ、そのせいで今心配されてるんだけどね?
頭を撫でようとすると、ぶるーくはその俺の左手をガッと掴んだ。
びっくりしてぶるーくの顔を見ると、ぶるーくは今まで見たこともないような歯をくいしばって鋭い目でこちらを見て来ていた。
ぶるーくに抱きついて、肩に頭を擦り付ける。
…あぁ、やっぱり。ぶるーくは、本当に…!!
そうだよ、俺が1番分かっていたじゃないか。
ぶるーくが、この世の誰よりも優しくて、俺のことを真っ直ぐ考えてくれる子だということを…!
懐かしい記憶を思い出して泣きそうになってしまったが、ぐっと涙を堪えて、いつもよりも自然に笑顔を浮かべた。
ぐ、っとぶるーくの右手を左手で引っ張り上げて、空の上へ上へと高度を上げていった。
その、花のような鮮やかな笑顔を見て
…ふと、昔の事を思い出した。
あれは、ぶるーくのことを学習させた偽物だった。
学習したことしか出来なかったから、小さい頃は騙せたとしても...俺の立場が変わることになった時は、自分で決断が出来なくて、そのまま同じことをしたから、俺に見破られてしまったけれど…
君がこんなに優しかったから、俺はここまで来れたんだ。









![【🎤】悪魔と天使のふたりぐらし[完]](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/1d831c74403abfecbe0102e7e70b345e5b04d9a1/cover/01JHEVWAXVWBF3K8ZCZBJ673XM_resized_240x340.jpg)



編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。