3月中旬
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それから数日後のとある打ち合わせ後
荷物をまとめて部屋を出た時、
ふたりに声をかけられた
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2人とも、まだ撮影中だったんだ。
もしかして、合間を縫って来てくれた…?
どっちにしろ嬉しい。
ふたりには感謝してる。
友達として、同じ事務所の仲間として、
そばに居てくれる。
私もあのふたりの、そばに居たい。
書類と製品のサンプルの入った
重めのカバンを背負って
事務所を後にし、
電車で最寄り駅まで向かった。
ピッ
そして改札を出て、家までの道を歩こうとした。
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すると、
なぜだかさとみがいた。
そうだけどって…
そんな迎えに来るのが当たり前、みたいな
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この間と同じようなことを言われた
"俺がしたくてやってんだからいいだろ"
嬉しいよ、すごく。
けど、
幼なじみのためにそこまでするのかな、普通
ねぇさとみは、どっちなの…?
"幼なじみ代表"
"さとみは優しいよね、誰にでも"
あぁそっか、これもさとみの優しさだ。
どっちとかじゃないんだ。
私は幼なじみでしかないんだ、きっと。
私は悟られないよう、
話をそらす。
自分で持ちかけた話題のくせに、
仕事の話になると、少し憂鬱になる。
別に打ち合わせや撮影が、嫌なわけじゃない。
むしろ楽しいくらいだ。
ただ…
きらとつばさにさえ言えなかったことが
なぜか言えるんだ。
気づけば全部話していた。
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私…らしさ…
さとみはこうしていつも、
私の話を長々と聞いてくれては、
的確なアドバイスをくれる。
これもさとみの優しさ。
これだからさとみには、
なんでも話そうと思うんだ。
けどそれは、長く一緒にいるっていうのも
あるのかもしれない。
ボソッと呟いた
そんなひとこと。
気づけば家の前に着いていた。
私は玄関の鍵を取り出して、ドアを開けようとする。
横目で、さとみも家に入っていくのが見えた。
優しい、
落ち着く、
気楽で、
なんでも話せる、
それでも、
だからこそ、
しょせんは
ガチャ
ドアを閉めて、鍵をかけた。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!