第32話

バケモノ
2,954
2023/11/19 04:08



“だぁい好きだよ?あなたくん♡”



“だから……私のモノになって?”




手が伸びる。

頬に触れる。


頬に黒い手形が残り、そこからどんどん染み込み全身にまで広がった




“うふふっ……あはっ、、あっははは!!!”


人の形をしていたソレが、形を変えて行く



“ずぅぅううと!!!!!”


“いっじょだがら”ねぇ"え"え"?!!!!?!!”


やめろ、来るな




辞めろ、やめろやめろやめろッ



中原中也
ぅ…あっ
来るな来るな来るな来るな来るな来るなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなやめろやめろくるなくるなやめろやめろくるな
中原中也
くるなっ、!


動かない身体を動かし抵抗する様に伸ばした腕が、空を切った



中原中也
はぁっ…はぁ、、はッ…
ぼやけていた視界が段々と戻っていく



先程までの真っ暗な世界ではなく、真っ白い天井がそこにはあった



中原中也
…びょうしつ、、
回らない口で呟いたそれに、何故だかは分からないが酷く安堵した


大丈夫。此処にはあのカイブツも居ない


此処には俺を殺して自分のモノにしようとする奴も居ない


大丈夫、だいじょうぶ




ふと、片手に違和感を覚え其方に目をやる



中原中也
ひっ
そこには、俺の手を握り眠っている太宰がいた


太宰治
……ん、…
ゆっくりと身体を起こし、俺の方を見て目を見開いた
太宰治
ッ!中也!!
中原中也
っ!?
太宰治
君、どれ程寝てたと思ってるの!?
3日!3日も仕事をサボり寝るなんて
いいご身分だねぇ!?
お陰で私に君の分の仕事まで回って
来たのだからねぇ!感謝したまえ!
ほんと…ッ……よかったッ
俺の手を両手で握り締め、まるで祈るかのように額に擦り付ける


その表情は隠れて見えないが、握り締められた手から震えているのが分かった



そんな太宰に俺は_____





中原中也
……
_______安堵と同時に、嫌悪感を覚えた




何故かは解らない。

ただ、太宰のその顔が怖かった

太宰のその仕草に安堵した

太宰の瞳が怖かった

太宰の声に安堵した


あのバケモノみたいな顔や瞳がどうしても怖かった


女とは違う、少し骨張った指先に何となく、安堵した







中原中也
(、、、あれ、)

そのバケモノって、、、なんだっけ?








作者
作者
夢の内容って直ぐ忘れちゃいますよねぇ
まぁ中也のこれは夢じゃないんだけど

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