「んーじゃあみんな、もう戻っていいよ。」
手を軽く叩くと、皆はそれぞれの持ち場へと戻っていく。
2人だけがその場に残された。
「……改めてよろしくお願いします。」
沈黙を切り裂くように裕一さんが話し始める。
「はい、よろしくお願いします!!あの…俺、1課初めてなので分からないんですけど、まず最初に何するべきだと思います……?」
少し考える素振りをした後に。
「うーん、やっぱ聞き込み捜査かな。」
「たしかに、警察ぽいですね。」
「警察だからねぇ…。」
…なんてチョけることが出来るほどの余裕が出てきた。
「じゃあまず、現場周辺行ってみようか?」
もうだいぶ鑑識の仕事が終わり、死体はもう片付けられていた。
本当に人が死んだのか、と一瞬考えてしまうほどに綺麗だったが、周りの野次馬の多さが真実だと物語っていた。
「あぁ…あっちで井戸端会議してる奥様方が適任かな。」
良くも悪くもおしゃべりだからね、と続けて有坂が歩みを進める。
「え、あ、ちょ!置いてかないでくださいよ〜!」
裕一さんは、俺と初めて出会った時のように人当たりの良い笑顔を浮かべて話しかける。
目を閉じて、眉を八の字に少し下げて。
「……失礼、少しお話を伺ってもよろしいでしょうか?」
まるで待ってました!と言わんばかりにパッと笑顔を浮かべて弾丸トークを始める
「あら、あなたたちは警察の方?」
「はい、そうです。」
「そうよねぇ。何が聞きたいの?やっぱり、ここの事件のことよね?」
「はい、そうなりますね。何かご存知のことはありますか?」
変わらず困り笑顔を浮かべて、首を少し傾げる。
……あぁ、既視感の正体はこれだったんだ。
「…犯人の特徴について何か知りませんか?」
今まで黙っていた俺が急に質問をしたことに対して、少し裕一さんが驚いた顔でこちらを見てからニコッと笑った。
はぁ、そんな所まで似てるのかよ。
「犯人の特徴?……そうねぇ。」
心の中で渦巻くモヤのようなものを宥めながら、笑顔を作る。
「はい、小さなことでもいいんです。何か知りませんか?」
何かを思い出したように、両手をパチンと叩く
「あ、そうだわ。たしかこんな噂があったの。」
「噂、ですか?」
「えぇ、確か”長身の女性”だって話しよねぇ。」
「女性?」
「そうよ、何でも長い黒髪が綺麗って言われてるの。」
「SNSの掲示板で結構流行ってるのだけど、ご存知ない?」
どう思います?知ってます?という視線を裕一さんに送るが困った顔で首を左右に振る。
もちろん俺だってそんな噂は知らない。
「その噂は何処から出てきたものなのかご存知ですか?」
そう、裕一さんが切り出す。
「んーちょっと待ってね……。」
スマホを取り出すと、何かのページを開いたようだった。
「この掲示板だと思うわね。」
二人で一緒に覗き込んでみると、確かにそのような情報が書かれたサイトだった。
ひとつ問題な点があるとしたら、そこは”オカルトサイト”だったことだ。
「なるほど……?情報提供感謝します。」
そう礼を言って去ろうとすると、先程の女性に呼び止められた。
「あ、ちょっと待って!」
「はい、なんでしょうか?」
「今思い出したのだけれど、第一発見者の子、私知ってるわよ。」
突然の大きな情報に少し前のめりになる。
「本当ですか…!!」
「えぇ、事件現場のちょうど裏手に住んでる子なんだけどね、千冬ちゃんって言うの。」












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。