第260話

あなたが幸せでありますように。
177
2025/09/07 08:32 更新
んーーー、んー?んー、
いや多いな




久しぶりに家の郵便受けを開けた。




大量の手紙。


元々少し大きめな郵便受けがパンパンになっていた。
















早朝。

ランニングの後の歯磨きをしている途中で突然思い立った。





あ、そういや手紙手紙って話題に出しても全然見てないじゃん、やばいじゃん。











ちゃぶ台に広げた手紙たち。


いつもは白一色がほとんどなのが、今日はなんだかカラフルな便箋がいくつかある。








なんかよくわかんないけど多分仕分けのやつだ、なんて色つきのものと、そうでないものを分けていた。
んーすご、量すご

よく見れば裏側にも、マークがあったり番号が振られていたりと、なんだか捨てるなと遠回しに言われているような。



うぅん?










今まで捨ててきたのは大丈夫だったのだろうか、まじで中身見ずに燃やしたりしてたからなぁ…






…開けなさい、ねぇ


真っ白の封筒に赤くて大きな筆の文字。



ここまでしなければ中身を見ないことを、差出人である未来の私はよく知っているらしい。







さてと、どんなことが書いてあるのかな?


ハサミを広げて封を切る。




中から出てきた可愛らしいシールがいくつか貼られた紙。











裏には長々と、チカチカしてくるような文章があった。





























昔の私へ


お元気でしょうか?
そちらの具合や天気、友人関係は上手くいっていますか?
私はもちろん良好です。

さて、前置きは短くして本題に入りましょう。
ポストを久しぶりに空けたあなたはその量と仕分けの作業にそろそろぐったりする頃でしょう。
お疲れ様です、もう終わりにしてグチャっとまとめちゃってもいいやつなんだよね実は。
無理はしない程度に満足いくまで仕分けちゃってもいいからね、好きにしてね。

その手紙は、“ その時 ” が来るまでタンスの奥の方に閉まっておいてください。
あなたが見ることは許されないし、“ その時 ” 以前に誰かの手に渡ることも許されません。
これはあなたのためであり、未来を変えないための重要な決め事です。どうか守るように。
何故か分からないのなら今はそのままで良い。
きっといつか何かを悟って、私のように手紙を書き始める日が来るのだから。
おかげで腱鞘炎になりかけています。
たすけてぇ、、、



そちらの季節は今何なのでしょうか?
こちらは春手前.、まだ少し肌寒い風が屋敷をふきぬけていきます。傍を歩く子供たちも変な顔でくしゃみをして、笑い合います。
つぼみが膨らみ、新しい美しさを手に入れようとしています。私はそれが楽しみで仕方がありません。

一日一日、一人一人を大切に生きてください。
色とりどりで、音に溢れて、幸せな顔をして生きてください。
あなたが今、誰かと笑っていられる時間があるならば





それが、私の誇りであり幸せです。






よく、この手紙は本当は夢やイタズラで、未来の私からなんて届いていない、と考えることがある。








もし、これがイタズラなら。



なんて悪趣味で気持ち悪いんだろう、と思う。









あまりにも楽しそうに、あまりにも懐かしそうに、読んでいるこちらが書き手の声を容易に想像できてしまうくらいに心のこもった文章。


私はこれに、一生を振り回されて生きるのかもしれない。











今はなんだかそれでもいいくらいに、この手紙の書き手を抱きしめたい気持ちに狩られた。
































































とりあえず大きな紙袋に大量の手紙を重ねて入れ、それを箱状に折りたたんでタンスの奥にしまった。



だけれどいつか来る “ その時 ” まで私はきっと、この手紙をしまったことすら忘れてしまうんだろう。

おやすみなさい




謎が多くて霧の濃いその未来に、いつか触れられたらいいなと。





心の底から思った。

プリ小説オーディオドラマ