第5話

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2026/06/22 12:26 更新
入学式から数週間が経ち、4月の終わりが近づいてきた頃。

人見知りな私の高校生活は、

あの日最初に話しかけてくれた『まひろまる。』のおかげで、思ったよりもずっと順調だった。

彼はとにかく明るい関西弁でぐいぐい距離を縮めてくる。

気がつけば、私たちはクラスの誰もが認めるくらい仲良くなっていた。

ある日の放課後。夕日の差し込む教室で、居残りで課題をこなしていたまひろまるが、

机に突っ伏しながら大きく伸びをした。
まひろまる。
まひろまる。
あーー! 終わらん! 白空、これの3番どういう意味!? 首席の頭脳でうちを救ってくれへん!?
白空
白空
うるさい、まひろまる。静かにして。ただの因数分解だよ、普通に解いて
私のぶっきらぼうな返しにも、彼は「冷たいなぁ〜!」とケラケラ笑っている。

そんな彼の様子を横目で眺めながら、私はカバンから自分のスマートフォンを取り出した。

画面には、今日お兄ちゃん(ロゼ)から送られてきた、

私が描いた初投稿用のイラストの最終確認データが映っている。

高校生活にも慣れてきた。来月から、約束していたYouTubeの活動を本格的にスタートする予定だ。
白空
白空
……ねえ、まひろまる
まひろまる。
まひろまる。
ん? なに、ついに優しく教えてくれる気になった?
白空
白空
違う。……私、来月からYouTube始めるんだよね
まひろまる。
まひろまる。
えっ、YouTube!?
まひろまるは弾かれたように勢いよく体を起こし、目を丸くした。
白空
白空
動画投稿とか生配信とかやる予定。昔から歌うの好きだし、ヴァイオリンも弾くし、
絵も自分で描くから。……高校生になったらやるって、ずっと決めてたんだ
人見知りだから少し照れくさくて、私はわざとそっぽを向いて淡々と告げた。

すると彼は、驚きから一転して、すごく嬉しそうな満面の笑みを浮かべ、関西弁で力強くまくし立ててきた。
まひろまる。
まひろまる。
マ、マジで!? え、めっちゃ凄いやん! 白空歌上手そうやし、絵もプロレベルやもんなぁ! 
絶対見に行くわ! チャンネル名決まったらすぐ教えてや!
自分のことのように大はしゃぎする彼を見て、私の口元が自然と緩む。

そして私は、ずっと心の中で確信していた「もう一つのハナシ」を切り出すことにした。
白空
白空
ありがと。……ま、YouTubeの先輩として、いろいろ教えてよ。































白空
白空
――『とぅるりぷ』の、まひろまる。くん?
まひろまる。
まひろまる。
ふぇっ!?
まひろまるの動きがピタッと止まり、変な声が出た。

そうなのだ。

私は最初から気づいていた。

彼がSTPRから新しくデビューした、今勢いのある歌い手グループ『とぅるりぷ』のメンバーであることを。

お兄ちゃんの関係で、STPR界隈のグループ事情には普通に詳しいし、何より声と名前がそのままだ。
まひろまる。
まひろまる。
え、待って、なんで知って……っ!? バレてた!?
白空
白空
声で一発。隠す気ゼロでしょ。お騒がせなツッコミ担当さん
まひろまる。
まひろまる。
うわあああ! めっちゃ恥ずかしいやんそれ! 言うてや先に!
顔を真っ赤にして頭を抱えるまひろまるを見て、私は「あはは」と声を上げて笑った。

いつもは人見知りを発動してしまう私だけど、彼が相手だと不思議と素の自分でいられる。
白空
白空
別に言いふらしたりしないよ。ただ……ちょっと安心したかな
まひろまる。
まひろまる。
安心?
白空
白空
大学は知り合いがいる早稲田に行こうか悩んでるくらい、
私、知らない人だらけの場所が苦手だからさ。
でも、同じクラスに同じ『活動者』のまひろまるがいてくれて、普通に心強いよ。
白空
白空
……ありがとね
口は悪いけれど、トーンを優しくして伝えた本音。

まひろまるは一瞬ぽかんとした後、照れくさそうに鼻の頭を掻きながら、またいつもの明るい笑顔を見せた。
まひろまる。
まひろまる。
……ずるいわぁ、そんなん言われたら応援するしかないやん。
よっしゃ! これから活動のことで困ったことあったら、何でもこの先輩に聞いてな!
めっちゃ頼りにしてええよ!
白空
白空
調子乗るなら聞かない。自分の課題、早く終わらせなよ
まひろまる。
まひろまる。
そこは優しくしてぇな!?
夕暮れの教室に、私たちの笑い声が響く。頼れるお兄ちゃんたち、そして学校で見つけた最高の相棒。

最高の環境が整った私の新しい挑戦は、もうすぐそこまで迫っていた。

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