入学式から数週間が経ち、4月の終わりが近づいてきた頃。
人見知りな私の高校生活は、
あの日最初に話しかけてくれた『まひろまる。』のおかげで、思ったよりもずっと順調だった。
彼はとにかく明るい関西弁でぐいぐい距離を縮めてくる。
気がつけば、私たちはクラスの誰もが認めるくらい仲良くなっていた。
ある日の放課後。夕日の差し込む教室で、居残りで課題をこなしていたまひろまるが、
机に突っ伏しながら大きく伸びをした。
私のぶっきらぼうな返しにも、彼は「冷たいなぁ〜!」とケラケラ笑っている。
そんな彼の様子を横目で眺めながら、私はカバンから自分のスマートフォンを取り出した。
画面には、今日お兄ちゃん(ロゼ)から送られてきた、
私が描いた初投稿用のイラストの最終確認データが映っている。
高校生活にも慣れてきた。来月から、約束していたYouTubeの活動を本格的にスタートする予定だ。
まひろまるは弾かれたように勢いよく体を起こし、目を丸くした。
人見知りだから少し照れくさくて、私はわざとそっぽを向いて淡々と告げた。
すると彼は、驚きから一転して、すごく嬉しそうな満面の笑みを浮かべ、関西弁で力強くまくし立ててきた。
自分のことのように大はしゃぎする彼を見て、私の口元が自然と緩む。
そして私は、ずっと心の中で確信していた「もう一つのハナシ」を切り出すことにした。
まひろまるの動きがピタッと止まり、変な声が出た。
そうなのだ。
私は最初から気づいていた。
彼がSTPRから新しくデビューした、今勢いのある歌い手グループ『とぅるりぷ』のメンバーであることを。
お兄ちゃんの関係で、STPR界隈のグループ事情には普通に詳しいし、何より声と名前がそのままだ。
顔を真っ赤にして頭を抱えるまひろまるを見て、私は「あはは」と声を上げて笑った。
いつもは人見知りを発動してしまう私だけど、彼が相手だと不思議と素の自分でいられる。
口は悪いけれど、トーンを優しくして伝えた本音。
まひろまるは一瞬ぽかんとした後、照れくさそうに鼻の頭を掻きながら、またいつもの明るい笑顔を見せた。
夕暮れの教室に、私たちの笑い声が響く。頼れるお兄ちゃんたち、そして学校で見つけた最高の相棒。
最高の環境が整った私の新しい挑戦は、もうすぐそこまで迫っていた。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!