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第1話

いち
21
2023/11/05 15:11 更新
パラリ。

小さな音を立ててわたしの手から逃げていったのは、
一枚のテスト用紙。

とっさに手を伸ばす……けど、おしい。

ちょっと足りない。

わたしの手は空中をつかんで、
体がガクッと重力にひっぱられる。

テスト用紙はひらひらと、
制服のズボンを履いた生徒の前に着地した。
46てーん! え、宮古さんって頭そんな良くないんだ
教室のみんなに聞こえる声で、その男子は言った。
ちょっとやめなよ可哀想じゃん
笑い混じりの声で、女子が言う。

クスクスと笑い声が、教室中に広がった。



……ただひとり、わたしを残して。



テスト用紙を拾うと、うつむいたまま教室を出る。

人気のない渡り廊下まで来ると、ちょっぴり汚れた紙を広げて、ふぅっとため息をついた。


あららら。

こんなはずじゃなかったのになー。

今までは見た目通り、ちゃんとずーっと優等生で。

高校に入っても勉強頑張って、塾も行って。

このまま優等生でいられるんだと思ってたのになー。

みんな頭良すぎだよねぇ。

わたしはどうすればいいのかな。

何か居場所を、ポジションを……。

いやそんな贅沢言わないから、わたしに役割を恵んでください……。


青い青い空をあおぐ。


お昼、どうしよっかな。

食堂行くのめんどくさいなぁ。

今日は抜いちゃおうかなぁ。


窓を開けると、ふわっと風が舞い込んできた。
なにしてるの?
知らない人の声だ。

声のした方を見れば、制服を着た男の人が立っている。


そして、髪の毛が、

赤い。

※ カラーOKの高校です。
あ、もしかして迷子?
一年生?
こっちの校舎は今は生徒会でしか使われてないよー
へぇ。
宮古 惺月 しづき
だから人が少なかったんだ……
思ったことが声に出ていて、パッと口を押さえた。

まぁいっか。

きっともう会わない人だし。
……ねぇ、生徒会くる?
いま書記の子がしばらく休んでて、人足りてないんだよね
その言葉を聞いたとたん、パァっと頭が冴えていった。

ポジション。役割。役に立てる……!
宮古 惺月 しづき
やります
わ、急に目キラキラしてんね。
生徒会、興味あったんだ。
なんなら寄ってく? 今から
宮古 惺月 しづき
いきます
わたしが深くうなずくと、男の人はおもしろそうに笑った。
山下 海吏 かいり
おれ、2年の山下海吏ね。よろしく

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