前の話
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パラリ。
小さな音を立ててわたしの手から逃げていったのは、
一枚のテスト用紙。
とっさに手を伸ばす……けど、おしい。
ちょっと足りない。
わたしの手は空中をつかんで、
体がガクッと重力にひっぱられる。
テスト用紙はひらひらと、
制服のズボンを履いた生徒の前に着地した。
教室のみんなに聞こえる声で、その男子は言った。
笑い混じりの声で、女子が言う。
クスクスと笑い声が、教室中に広がった。
……ただひとり、わたしを残して。
テスト用紙を拾うと、うつむいたまま教室を出る。
人気のない渡り廊下まで来ると、ちょっぴり汚れた紙を広げて、ふぅっとため息をついた。
あららら。
こんなはずじゃなかったのになー。
今までは見た目通り、ちゃんとずーっと優等生で。
高校に入っても勉強頑張って、塾も行って。
このまま優等生でいられるんだと思ってたのになー。
みんな頭良すぎだよねぇ。
わたしはどうすればいいのかな。
何か居場所を、ポジションを……。
いやそんな贅沢言わないから、わたしに役割を恵んでください……。
青い青い空をあおぐ。
お昼、どうしよっかな。
食堂行くのめんどくさいなぁ。
今日は抜いちゃおうかなぁ。
窓を開けると、ふわっと風が舞い込んできた。
知らない人の声だ。
声のした方を見れば、制服を着た男の人が立っている。
そして、髪の毛が、
赤い。
※ カラーOKの高校です。
へぇ。
思ったことが声に出ていて、パッと口を押さえた。
まぁいっか。
きっともう会わない人だし。
その言葉を聞いたとたん、パァっと頭が冴えていった。
ポジション。役割。役に立てる……!
わたしが深くうなずくと、男の人はおもしろそうに笑った。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。