第57話

第肆拾陸話~涙の勝利、そして……~
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2021/10/02 13:06
NOside

(陽光が差し込み、赤ん坊化した無惨は塵となり、

消えた。お館様は大粒の涙を溢した。隠たちと

隊士たちは物影から現れ、その様子を

目の当たりした。)
鬼殺隊士等
うわあああああ!
鬼殺隊士等
倒した!!無惨を倒した!!
無惨が死んだ!!
産屋敷くいな&かなた
お館様!
産屋敷輝利哉
怪我人の…………手当てを…………
(妹であるくいな様が傍に駆け寄り、

心配そうに、頭を撫でた。)
終わりじゃないぞ!!立て!!
怪我人の手当てだ!急いで救護に
回れ!
鬼殺隊士等
泣くな馬鹿、しっかりしろ!!
NOside  終了


悲鳴嶼行冥side
悲鳴嶼 行冥
よせ、薬を使うな。
鬼殺隊士等
ひっ、悲鳴嶼さんっ。
悲鳴嶼 行冥
私はもう手遅れだ。貴重な薬をドブ
捨てることになる。
悲鳴嶼 行冥
他の若者達の所へ行ってくれ。
鬼殺隊士等
でも…………でも…………
悲鳴嶼 行冥
頼む、私の最後の願いだ…………。
(意識の薄れる中、誰かが悲鳴嶼の手に触れた)
悲鳴嶼 行冥
…………ああ…………お前達か…………
先生
あの日の事をずっと謝りたかったの。
先生を傷付けたよね?
でも俺たち逃げようと
したんじゃないんだよ。
先生は目が見えないから守らなきゃと思って
武器を取りに行こうとしたんだ、外に農具があったから。
私は人を呼びに行こうとしてたの。
悲鳴嶼 行冥
ああ…………そう…………だったのか…………
獪岳を追い出したこともごめんなさい。
だけど理由があるの。嘘じゃないよ
いつも通りまた明日が来れば、
ちゃんと話も出来たのに。本当に
ごめんなさい。
そうだ明日さえ…………来ていれば…………

(悲鳴嶼の見えない目から涙が溢れる)
悲鳴嶼 行冥
私の方こそお前達を守ってやれず、
すまなかった…………
謝らないで。
皆、先生が大好きだよ。だから
ずっと、待ってたの…………
子供達が悲鳴嶼を抱き締める。
悲鳴嶼 行冥
そうか…………ありがとう…………じゃあ行こう…………皆で…………
悲鳴嶼 行冥
行こう…………
悲鳴嶼は涙を溢しながら、静かに息を引き取った。

隠の一人が脈を取り、涙する。
鬼殺隊士等
うっ、うっ…………
悲鳴嶼さん…………
《※本来なら此処で甘露寺さんと伊黒さんとの

告白が入りますが、生きて頂くため割愛します。

すみません》


悲鳴嶼行冥side 終了


不死川実弥side
(不死川は真っ暗な場所にいた。その先には

白い場所があり、其処には亡くなった不死川の

弟妹達が遊んでいた。黒死牟との戦いで死んだ

始めての弟の玄弥もいた)

玄弥…………皆向こうにいる…………
不死川 実弥
お袋?何で向こうに行かねぇんだ?
不死川 実弥
お袋!其処にいるんだろ?
(不死川が暗闇に向かって声をかける)
私はねぇ、そっちにはいけんのよ。
不死川 実弥
何でだよ。一緒に行こう、ほら。
駄目なのよ…………皆と同じ所へは
行けんのよ…………
(不死川が暗闇から手を掴む。其処には彼の

母親の志津が泣きながら立っていた)
我が子を手にかけて天国へは…………
不死川 実弥
…………分かった。じゃあ俺はお袋と
行くよ。
不死川 実弥
俺があんまり早く行ったら、玄弥が
悲しむだろうし。
不死川 実弥
お袋背負って、地獄を歩くよ。
(不死川は優しく微笑んで言う、しかし、志津の

手を掴んでいた不死川の腕をガッと誰かが

掴んだ。)
放せ、志津は俺と来るんだ。
(それは不死川の父親だった。彼は志津の

手首を掴み、息子の不死川を突き放した)
不死川 実弥
テメェッ…………!!糞親父っ!!
糞野郎、お袋を放せ!!
お前はまだあっちにもこっちにも
来れねぇよ。
(暗闇に落ちて行く不死川に淡々と告げる父親)
俺の息子だってことに感謝しろ。特別頑丈な体だ。
(泣く志津を抱き締めながら父親はそう言った。

それを聞き終えたと同時に不死川は目覚めた)
鬼殺隊士等
あっ!
鬼殺隊士等
あっ、意識戻った!不死川さん
起きた!!
不死川 実弥
くそが…………
不死川実弥side  終了


冨岡義勇side
いってぇ~~~~~っ!!
猪に噛まれたあ!!
めっちゃ元気こいつ。
ゲフッ(伊之助が吐血した音)
鬼殺隊士等
やばいやばい。吐血した、
死にそう!!
我妻 善逸
頼む。俺が死んだら妻の禰豆子に
愛していると伝えてくれ。
鬼殺隊士等
妻じゃないだろ…………
我妻 善逸
そして俺は勇敢だったと…………最後の最後まで禰豆子を…………
鬼殺隊士等
ずっと喋ってるじゃんコイツ…………
冨岡さん、冨岡さん。
ほんとお願いします。動かないで。
冨岡義勇
炭治郎とあなたは何処だ…………
冨岡義勇
炭治郎とあなたは無事か?
…………とっとりあえず手当てを
隠が俺の前に出て、何かを隠すように

焦って言った。そして、俺は大きく目を見開いた。

俺の視界に二人の姿が目に入ったからだ。

其処には両側で泣く隠たち。そして、折れた刀を

持ったままうつむき、座り込んだ炭治郎と

炭治郎の隣にもたれ掛かり、光の消えた瞳をし、

真っ白な髪が赤い血に染まったあなたがいた。

その傍に座り込んで、脈を取っている隠たち。
息してない、脈もない。炭治郎…………
…………あなたも息もしてない。
脈も…………ない。
うっ、うっ、うぅっ
ニッコリと笑う炭治郎。柔らかく微笑み、

俺の名を嬉しそうに呼ぶあなた。思い出せば、

思い出す程、涙が溢れてきた。静かに近づき、

あなたの光を失った赤と青の瞳を閉じさせ、

炭治郎の手に俺の手を置いた。そしてうつむき、

涙した。
冨岡義勇
また守れなかった。
冨岡義勇
俺は愛する人さえ守れない…………
冨岡義勇
俺は人に守られてばかりだ…………
冨岡義勇
許してくれ。
冨岡義勇
すまない、禰豆子。
冨岡義勇
すまない…………

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