第39話

#21 はたらきあり
855
2020/10/17 11:28
龍友side
龍友
メンくっ?かあしゃん?とーちゃん?
冷たい風が俺の頬に体当たりしてくる。
段々と暗くなってくる辺りは、
昼間よりも不気味さが増して何とも気味が悪かった。
「龍友はお兄ちゃんにはなれない!!!」
メンくんはなんで僕にそう言ったんだろう。
僕はお兄ちゃんじゃないのに。
お兄ちゃんはメンくんの方なのに。
龍友
かあしゃん!とーちゃん!
周りには誰一人として人はおらず、
どこかも分からない場所でぽつんと僕一人。
「もう知らないっ!」
メンくんはどこに行っちゃったんだろう。
龍友
メンくっー!
叫んでも叫んでも、僕の声なんて途中で消えてなくなる。
僕の靴音だけが響いている。
夏だというのに肌寒い、やっぱり不気味。
僕は歩き疲れて、近くの段差に腰掛けた。
足元に一匹の蟻がはっている。
小さい体で懸命に歩いていた。
お兄ちゃんにはなれない。
そんなメンくんの言葉を、
もう一度自分の頭に再生させてみる。
あの真剣な目つきに嘘はないだろう。
ゆっくりと目を閉じ、冷静に考えてみることにした。
過去を思い出してみる。
「龍友ーメンディー!ご飯よー!」
違う。
「お!龍友も手伝ってくれるのか!」
違う。
「ここにあったリモコンはー!」
違う。
「龍友、落ち着いて聞いて…」
違……
いや、これだ。
「落ち着いて聞いて…あのね、
さっき僕聞いちゃったんだけどね、
お母さんのお腹に赤ちゃんがいるんだって!
そう!龍友がお兄ちゃんだよ!!!」
弟。僕の弟。
「おにちゃんってたのちい?(お兄ちゃん)」
「…龍友なんてもう知らないっ!」
関口メンディー
龍友!!!!
不意に前方から聞こえてくるメンくんの声。
メンくんは僕の方に突進してきて、
その勢いのまま僕は思い切り抱きしめられた。
龍友
メンくん…
関口メンディー
龍友!よかった…よかった…!
涙声が混じるメンくんの声に僕の疑問は増えるばかり。
龍友
メンくっ!
なんでぼく、おにちゃんになえないの?
僕の言葉の後、メンくんの声は途絶えた。
不審に思った僕が顔を上げる。
そこにいたメンくんは、
いつものメンくんじゃなかった。
泣いてた。
龍友
どちたの!?
関口メンディー
ごめっ…さっきのことだよねグスッ…
龍友
…?
関口メンディー
僕が龍友は
お兄ちゃんになれないって言ったから。
グスッ…違うの龍友。
あれは僕が悪かった。
何も知らない龍友に八つ当たりしてたグスッ。
メンくんが僕の頬を撫でる。
その優しい温もりに僕はもう一度メンくんに抱きついた。
関口メンディー
龍友?
龍友
メンくんはわうくない。
なんにもわういことないよ?
だーじょぶ、だーじょぶ。
関口メンディー
…………りゅーどぉぉぉ!!!
龍友
うるちゃい!
そんなハチャメチャな一日の終わりの一枚。
裕太
グスッ…ええ話やなぁ…うんうん。
龍友
もぉー泣くなやー!
亜嵐
二人にこんな感動秘話があったなんて…
関口メンディー
でしょでしょ?
龍友
メンくんも調子のらんでええねん!
涼太
でも結局、
メンくんの言葉の意味はなんだったの?
龍友
あー、あれは。
たまたまメンくんが流産したこと
聞いてしもたらしくてな?
俺が「楽しい?」って質問したことで
そのこと思い出しちゃったんやって。
関口メンディー
龍友、お兄ちゃんになること
楽しみにしてるんじゃないかと思って、
中々言いにくかったの!
もー恥ずかしいから…この話終わりっ!
はい!仕事もーどーる!
メンくんに背中を押され、皆が部屋から出ていった。
部屋の急な静まりように、
少しばかりの名残惜しさを感じた。
俺はアルバムを、組み立てたばかりの本棚に立てた。
背表紙のガタガタの文字がなんとも趣深い。
今度は二人じゃない。
二人だけのアルバムじゃない。
七人のアルバムで本棚溢れさそ。
沢山の思い出つきで。
next…
--------キリトリ線--------
GENEチャンRAMPチャンfantaチャンLOVEさん!
いつも閲覧、いいねありがとうございます!
そして!リクエスト、ありがとうございました✨
ご希望に添えてきれなかった部分があるかもしれません。
更新も遅くなってしまい、誠に申し訳ございません。
私なりに精一杯、
リクエストに答えさせていただいた所存でございます。
こんな調子の作者ですが、
是非ともこれからも
付き合っていただけましたら嬉しき極まりないです!!
最高のリクエストをありがとうございました!
また是非、リクエストお願い致します!
https://novel.prcm.jp/user/bf42ac579783ef9890632a373efb7398c5255548

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