メンディーside
緊迫した空気。
診察室に行った龍友と隼を
玲於を抱いた俺は静かに見送った。
裕太くんたち三人には一先ず家に帰ってもらい、
病院には俺と龍友、隼と玲於で来た。
着いた途端、焦ったように医者が隼を迎え、
俺の中の不安は莫大と化すばかりだった。
俺の腕の中の玲於が俺を見上げながら言った。
目には涙を溜め、今にも零れ落ちそうである。
俺が玲於の頭を撫でれば、
何故か思い切り抱きついてきた玲於。
弱い力で懸命に抱きついてくる。
俺は玲於の言葉を聞いた瞬間、血の気が引いた。
まて、どういうことだ。
だってたかが二、三十分の時間だよ?
その間に…は?
玲於の話を聞く限りでは、これは明らかに誘拐行為。
しかしこんなにも短時間でまさか誘拐されていたとは。
俺が色んな想像をしている間に、
隼の処置が終わったのか、龍友が戻ってきた。
と、龍友が外へ出ようとした。
しかし今の俺には言いたいことが山ほどある。
きっと今言わなければ、タイミングを逃すだろう。
だから咄嗟に龍友の腕を掴んだ。
頑なに信じようとしない龍友。
だから俺は、
さっき玲於が話してくれた出来事を龍友にも報告した。
龍友の問いかけにコクっと頷く玲於。
すると龍友はさっきまでの様子と一変した。
目が変わった。
すると玲於が龍友の腕に移った。
「メンくんも頼んだで。」
そう言いながら消えていく龍友は、
父親宛らの大きな背中だった。
あれから二週間後。
朝ごはん時にいつも付けている某ニュース番組
『SHIP』に見覚えのある出来事が報道されていた。
「□月◎日〇△県☆市の公園で誘拐事件が発生したことについての速報です。昨日昼一時頃、事件の容疑者が逮捕されました。逮捕されたのは五十六歳無職の男で、過去に性的暴行で逮捕歴があり、その日は男の釈放日だったとのことです。取り調べでは、「子供を殺してみたくなった。子供なら誰でもよかった。」と供述しており、容疑を認めています。誘拐された子供は三歳児双子で、二人とも無事が確認されています。発見時、片方の子供の容体が悪かったのですが、今は安定しているようです。続いてのニュースです。」
龍友は安心しきった顔で、再びキッチンへと戻って行った。
俺も立ち上がって準備をしようとすると、
朝早くに珍しく、階段を降りてくる音が聞こえてきた。
玲於がとろんとした目で俺の前で腕を広げた。
俺がしゃがみ、
呼べば効果音の付きそうな足取りで近づいてくる玲於。
そしてギュッと俺は玲於を包み込んだ。
温かくて、優しい温もりだった。
こんなに甘えん坊なのに、
トイレも一人で行けない怖がりなのに、
あの日は隼を守ったなんて驚く。
いつの間にか玲於も成長しているんだ。
人一倍成長スピードが遅くたって、
玲於は玲於なりに成長してるんだよね。
ゆっくりゆっくり、着実に。
俺はもう一度、玲於を強く優しく抱きしめた。
next…
-------------キリトリセン--------------
M🐤🥀さん!
リクエスト、ありがとうございました!
望まれた展開になってなかったかもしれません…
折角リクエスト頂いたのに
そうであったら申し訳ないです…。
またご機会があれば是非リクエストお願いします!
今回は本当にありがとうございました(* ´ ` *)ᐝ
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!