第37話

#20 成長は刻一刻と
1,052
2021/06/19 09:47
メンディーside
緊迫した空気。
診察室に行った龍友と隼を
玲於を抱いた俺は静かに見送った。
裕太くんたち三人には一先ず家に帰ってもらい、
病院には俺と龍友、隼と玲於で来た。
着いた途端、焦ったように医者が隼を迎え、
俺の中の不安は莫大と化すばかりだった。
玲於
メンくっ…はあと、だーじょぶ?
俺の腕の中の玲於が俺を見上げながら言った。
目には涙を溜め、今にも零れ落ちそうである。
関口メンディー
大丈夫だよ。
今、お医者さんに診てもらってるからね。
俺が玲於の頭を撫でれば、
何故か思い切り抱きついてきた玲於。
弱い力で懸命に抱きついてくる。
関口メンディー
玲於?
玲於
…あのね、こあかった。
関口メンディー
隼がゼーゼーしてて?
玲於
ちあう。
しょえもだけど、おじしゃん。
(違う。それもだけど、おじさん。)
関口メンディー
おじさん?
玲於
おかあしゃんのおおもだちのおじしゃん。
ガアスではあとをきじゅつけよーとしたの。
(お母さんのお友達のおじさん。
ガラスで隼を傷付けようとしたの。)
俺は玲於の言葉を聞いた瞬間、血の気が引いた。
まて、どういうことだ。
だってたかが二、三十分の時間だよ?
その間に…は?
関口メンディー
玲於、もうちょっと詳しく聞かせて。
玲於
わぁった!
おじしゃんがね、
「おかあしゃんにああせてあげう」
っていったの。
ちゅいてったら、ねむなって。
しょしたら、
くあいへやにはあととふたりでいたの。
おれね!はあとまもったんだよ!
いっちょににえたの!
(一緒に逃げたの!)
玲於の話を聞く限りでは、これは明らかに誘拐行為。
しかしこんなにも短時間でまさか誘拐されていたとは。
龍友
メンくん。終わったで。
俺が色んな想像をしている間に、
隼の処置が終わったのか、龍友が戻ってきた。
関口メンディー
隼は?
龍友
万一のこと考えて、今日は一日入院らしい。
俺、隼の荷物取ってくるわ。
と、龍友が外へ出ようとした。
しかし今の俺には言いたいことが山ほどある。
きっと今言わなければ、タイミングを逃すだろう。
だから咄嗟に龍友の腕を掴んだ。
龍友
ちょ、なんやねんメンくん。
関口メンディー
あのさ龍友、今回の迷子、
ちょっと警察のお世話になるかもしんない。
龍友
は?何を言うてんねん。
たかが迷子やぞ?
関口メンディー
だから違うんだって。
迷子じゃなかったんだよ。
龍友
さっきから何を言っ…
関口メンディー
誘拐かもしれない。
龍友
ちょっと待てやメンくん。
それは流石に想像力が豊かすぎひんか?
誘拐やか…そんなわけあるかい。
頑なに信じようとしない龍友。
だから俺は、
さっき玲於が話してくれた出来事を龍友にも報告した。
関口メンディー
…で、玲於は隼を連れて逃げたんだよ。
龍友
……玲於、それほんまか?
龍友の問いかけにコクっと頷く玲於。
すると龍友はさっきまでの様子と一変した。
目が変わった。
龍友
予定変更や。
メンくんは隼の荷物取りに行ってて。
俺は玲於連れて、警察署行ってくる。
関口メンディー
分かった。
龍友、頼んだよ。
龍友
おう。
玲於、今日あったこと警察の人に話せるか?
玲於
けいちゃつのひと?
龍友
そうや。
隼を、
玲於を怖がらせたおじさんの話、出来る?
玲於
……はあと、よおこぶ?(喜ぶ?)
龍友
喜ぶと思うで。
さっきもな、
隼起きて一番に玲於の心配してたんやで。
玲於
はあとのためだったら、おれがんばえる!
(隼のためだったら、俺頑張れる!)
すると玲於が龍友の腕に移った。
「メンくんも頼んだで。」
そう言いながら消えていく龍友は、
父親宛らの大きな背中だった。
あれから二週間後。
関口メンディー
あっ!龍友、これ見て!
朝ごはん時にいつも付けている某ニュース番組
『SHIP』に見覚えのある出来事が報道されていた。
「□月◎日〇△県☆市の公園で誘拐事件が発生したことについての速報です。昨日昼一時頃、事件の容疑者が逮捕されました。逮捕されたのは五十六歳無職の男で、過去に性的暴行で逮捕歴があり、その日は男の釈放日だったとのことです。取り調べでは、「子供を殺してみたくなった。子供なら誰でもよかった。」と供述しており、容疑を認めています。誘拐された子供は三歳児双子で、二人とも無事が確認されています。発見時、片方の子供の容体が悪かったのですが、今は安定しているようです。続いてのニュースです。」
龍友
捕まったんやな。
関口メンディー
良かったよ、本当に。
龍友は安心しきった顔で、再びキッチンへと戻って行った。
俺も立ち上がって準備をしようとすると、
朝早くに珍しく、階段を降りてくる音が聞こえてきた。
玲於
メンくっ。
関口メンディー
玲於?どうしたの?起きちゃった?
玲於
だっこ…
玲於がとろんとした目で俺の前で腕を広げた。
関口メンディー
はい!おいで。
俺がしゃがみ、
呼べば効果音の付きそうな足取りで近づいてくる玲於。
そしてギュッと俺は玲於を包み込んだ。
温かくて、優しい温もりだった。
こんなに甘えん坊なのに、
トイレも一人で行けない怖がりなのに、
あの日は隼を守ったなんて驚く。
いつの間にか玲於も成長しているんだ。
人一倍成長スピードが遅くたって、
玲於は玲於なりに成長してるんだよね。
ゆっくりゆっくり、着実に。
俺はもう一度、玲於を強く優しく抱きしめた。
next…
 
-------------キリトリセン--------------
M🐤🥀さん!
リクエスト、ありがとうございました!
望まれた展開になってなかったかもしれません…
折角リクエスト頂いたのに
そうであったら申し訳ないです…。
またご機会があれば是非リクエストお願いします!
今回は本当にありがとうございました(* ´ ` *)ᐝ

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