アンケート
どっちが勝つと思う?
燈影紅愛&霧雨魔理沙
28%
柊柚莉愛&紫霊
72%
投票数: 137票
シュン
魔理沙は帽子を被り直しつつ勢いよく立ち上がる。
どうやら戦いたくて仕方が無かった様だ。
紫霊は完全に漲っていた。
存分に相手をボコしていいという大前提のもと繰り広げられる世界を懸けた戦い…
例えもう誰も殺さないと誓った紫霊であろうと、戦い自体にはそりゃあ興奮する―
シュン!
(―オマエの事…信じてるからな)
トッ
少女説明中…
瞬間、何かが弾けた。
弾け、空中に現れたそれ…大中小様々な大きさの紅色の弾幕が、二人に向かって飛んでいく。
スペルを唱えた瞬間、柚莉愛の全身を柔らかな黄色のオーラが纏った。
と思うと、柚莉愛は5本のナイフを投擲しその全てを弾幕に命中させる。
ナイフと弾幕は激しくぶつかり合い、対消滅した。
ヒュン!
再び投擲されたナイフの次の標的は、他でも無い紅愛だった。
自ら目掛けて飛んでくるナイフを後ろに飛んで回避しつつ、再びスペルを発動する。
紅愛の正面に巨大な紅色の結界が現れ、ナイフはそれに当たって地面に落ちていく。
―そして、彼女のスペルはそれだけでは無かった。
ドドドドドッ!!!
ナイフが全て地に落ちたその瞬間、盾から溢れ出したのはどういう原理か柚莉愛が投げた筈のナイフだった。
逆方向に飛ぶナイフは柚莉愛を標的に定め、一斉に降下する。
フェイク・ザ・シールド…触れたものの魔力をコピーしそれを技として放つ、原理不明のインチキ技である。
紅愛はこの5分間だけで3つもスペルを消費しているが、その様子が衰える事は一切ない。
一体どれだけのスペル、そして魔力を持っているのか…
本能が詮索を拒むような、判らないものに対する根源的な恐怖を感じる。
―もっとも、この知識欲大魔神はそんな恐怖なぞより無尽蔵の知識欲の方が遥かに上回っていた様だが。
パチン!
ドォン!
瞬間、柚莉愛は目を見開いた。あまりにも一瞬で、何が起こったのかわからなかったから。
しかし、攻撃…土埃が晴れ、とある変化に気づいた事によってすぐに起こった攻撃の内容を理解する。
地面に落ちていた筈のナイフが、無くなっていた。しかも一つや二つでは無い、反撃として喰らった分全てだ。
新しい玩具を手にした子供の様な笑みを浮かべる柚莉愛に対し、紅愛も紅愛でにやりと不敵に笑う。
今までの言動で目の前の少女の知識欲が非常に旺盛かつ頭脳が優れているいう事は理解できた、
これはそんな相手に対する強者としての慈悲であり挑発でもあるのだ。
再び右手を挙げた紅愛に、柚莉愛は何が来るかと身構える―
―攻撃は、後ろからだったが。
ドォン!!!
柚莉愛と魔理沙の間に間一髪で割って入ったのは、他でも無い紫霊だった。
構えを取りつつ体当たりすることで、それ以上の進行を無理矢理停止させたのだ。
阻まれた魔理沙は反撃を警戒し、素早く後ろに下がる。
そう言ってため息を吐きつつ、紫霊は軽く睨みつける様に再び魔理沙の方を見上げた。
紅愛も手を叩きながら隣に着いており、4人は改めて互いに向き合っている。
その言葉を最後に、魔理沙は箒に直立で飛び乗り再び浮かび上がる。
そして背後に現れたのは…皆様お馴染み、派手なデザインの彼女のオプション達だった。
レーザーと星弾がフィールド上を絶え間なく埋め尽くし、
何もしなければ確実にやられるという事が見ているだけでひしひしと伝わってくる。
―んで、これに更に追撃するからこそ彼女達は幻想少女なのだ。
そして少女の手中に現れたのは、血を想起させるような紅色の剣だった。
その剣…ダーインスレイヴは、赤色のオーラを纏ったかと思うと紫霊と柚莉愛の元に一直線に飛んで行く。
一人が広範囲を担当し、もう一人がそれに手間どう相手の隙を突いて一点集中の技を放つ…
古代から伝わる通称クソゲーである。
ドンッ!
紫霊が自分の元に肉薄してくる事に気づいた瞬間、魔理沙はにまりと口角を上げた。
そして、箒に飛び乗り魔理沙も魔理沙で紫霊の元に突撃する。
魔理沙はその場から動いたが、弾幕の嵐は一切止む様子を見せない。
それもその筈、この弾幕の嵐の生成元はあくまでオプションであり魔理沙本人では無いのだから。
そう促され、紫霊は一瞬だけ記憶を辿る。勿論気は抜かずにだ。
確かに軽く思い出してみても、
人形を操り命を吹き込もうとしている魔女やら
本気を出せば万物の素すら掌握しかねない能力を使う魔女やら…
そのメンツはあまりにも個性的で、そう簡単に対処できる相手では無い。
魔理沙は一回転し、トレードマークの帽子を脱ぐ。
そして中から取り出したのは、小さな八角形の…
―あまりにも有名な彼女の武器、ミニ八卦炉だった。
カチャッ
ドォォォォォォン!!!
構えたと同時に即座に発射された極太の砲撃。
それは紫霊の体を貫き丸焦げにし、脳内で情景を想像する読者達の
SAN値をゴリゴリに削る…筈だった。
しかし現実というものは、時に想像をも超える。
紫霊はそれを体勢を屈める事で回避していた。
それだけでは無い、体勢を屈めた状態で魔理沙の懐に潜り込む事によって下からナイフで奇襲を仕掛けたのだ。
マスタースパークは威力こそおかしいがデメリットがある。
それは放出されるエネルギーが強すぎるがあまり発射している間は動きが極端に遅くなるという点だ。
ある程度発射しなければこの技は止まらない、そして今この瞬間に
発射されているマスタースパークはまだクールタイムに到達していない。
それは即ち、動けない状態の魔理沙に紫霊が一撃与える事を意味する―
―霧雨魔理沙という人物が、恐ろしい程に用意周到で無ければの話だが。
魔理沙がサッカーボールの如く紫霊に向けて蹴り飛ばしたもの、それは…
星のデザインが施された、小型の魔法爆弾だった。
ドォォォン!
その魔理沙の言葉は、決してこの場で初めて出たようなただの啖呵では無かった。
生まれながらに力を持った強者達と同じフィールドに立つ為に、何十倍も何千倍も努力して
同じ場所に立っている…この言葉は、そんな彼女の本心だったのかもしれない。
白い地面に血が吐き出される。ただの爆弾では無い、研究に研究を重ねた魔法爆弾だ…
もろにくらえばどうなるかなんて、すぐにわかるだろう。
これは最早決意云々の話では無い。精神力で限界を突破するより先に、
本能が警鐘を鳴らしている。これ以上立ち上がったら死ぬと。
バタッ
魔理沙の背後に迫る柚莉愛に、鬼気迫った表情で紅愛は右手を突き出す。
それに共鳴するかの様に、薔薇の蔦達が一斉に柚莉愛の元に放出された。
しかし、柚莉愛は最早そんな程度では止まらない。
困惑して身動きが取れなかった魔理沙の右足をがっちりと掴みつつ、再びスペルを発動した。
ブスッ
顔から急速に血の気が引いていく。紅愛も、そして…魔理沙もだ。
―苦悶に歪む表情のまま、魔理沙は気を失っていた。
血色はどんどん悪くなり、このまま放置していればロクな事にはならないだろう。
そのスピードは、人間である柚莉愛が軽々と見切れるものでは無かった。
勢いよく胸倉を掴み、何をしたのか問い詰める。
その顔は鬼気迫っており、瞳に宿る光は紅く燃え滾っている。
それに対し、柚莉愛は血相を悪くしながらも鼻を鳴らして答えた。
ゴンッ!
柚莉愛の体は、地面に叩きつけられた。
そして、柚莉愛は紅愛の表情をちらりと見上げ…何とも言えない表情を浮かべる。
その表情には、いつもの紅愛なんか映っちゃいなかった。
瞳から光は消え失せ、ひたすらに恐怖感だけが見た者の体を包む。

「―ソイツの事は、絶対に地獄送りにするって…決めてるんだ」
パチン
―どうやら少女もまだ…死ぬ気はさらさら無いらしい。
【夢想天性】
柚莉愛の周りを、七色の陰陽玉が取り囲む。
そして発射されるのは…一直線に飛んでいく、無数の御札だ。
ドカァン!!!
―刹那、紅愛の周りを爆発が覆った。
そして、煙が上がった頃には…
紅愛に当たっている筈の御札は通り抜け、結果紅愛の体には何の傷もついていなかった。
「―パクリでも敵を倒すには充分、か。良い事言うじゃないか!」
そこに立っていた少女の姿は、いつも通りの筈なのに…凄く頼もしく見えて。

―本当に大魔法使いかと思ってしまう程に、流星の如く光り輝いていた。
少女が翻した物―それは、どこかで見た事のある…深い青色のマントだった。
魔理沙はそれを肩に装着する。懐かしい雰囲気に…全身が包まれた、気がした。
ゴウッ!
そして吹いた風は…力強く、激しく、何かを纏った様なものだった。
本来何にも干渉されない筈の柚莉愛の体も、微かに風が当たっている。
対処しようとスペルを発動した時には、もう遅かった。
「…マスタースパーク…」

「―リーインカーネーショーーーーーーーンッッッ!!!」
ドカァァァァァァァン!!!!!
土埃の中、自らの体は宙に浮く。
本来の夢想天性なら…何の技も効かない筈なのに。
効いてしまった。少女の技は。
その技がただの真似事であり、完全では無かったから。
そして…一人の魔法使いの軌跡が、神の真似事すらも凌駕したから―
『神話~story that will never disappear~』
シュゥ…
ただ、相手が最終奥義を放っただけ。
結果は、何一つとして出ていない…筈なのに。
本能が、それを肯定している。突如入り込んできた違和感の塊の筈の情報に、納得しか感じない。
「勝者は柊柚莉愛と紫霊」
それしか無かった。それでしかなかった。
今この瞬間に、世界の絶対たる真実はこれになった。
根源から派生した1では無い。絶対的な、0だ。
疑う気力すら起きない。疑問を抱いた瞬間に思考回路が矯正される。
神の力、闇に染まり切った力。笑えるほどに強く、戦うというレベルの話では無い。
例えば、そんな勝とうと思う事すら馬鹿馬鹿しくなってしまう程の神の技を…ただの少女が使ったら。
結末は塗り替えられ、彼女達の軍はまた一つ勝利を掴み取る。
そして、そんな光り輝く世界で…
―彼女一人が…真っ暗闇だ。
ガガガガガガガガッ!!!!
ドクン
パリーン!!!!!
自らの体の安寧を何とか確保したところで、紅愛は再び柚莉愛に目を向ける。
魔理沙は倒れ、気を失っていた。ただでさえ毒からギリギリで復活したというのに…
自分ですらギリギリで自我を繋ぎ止める程のオーラだ、魔法に恋しただけの普通の少女が…耐えられる訳が無い。
そして、その姿を再び見た瞬間…その光景に、少女は目を見開いた。
そこには、先程の悶え苦しむ少女の姿は無かった。
代わりにあったのは…
―どこを視ているのかも判らない…柊柚莉愛の形をしたナニカだった。
あまりにもグッドタイミング、突如として飛び起きたのは紫霊だった。
―紫霊は空中に目を向け、そして固まった。
其の姿が…ナニカにその身を乗っ取られた柚莉愛の姿が、目に飛び込んで来たから。
だが、程なくしてその表情は翳りみるみる歪んでいく。
どうやらそれは、初の事象による困惑というよりかは…
経験した事のある事象が再び起こった事に対する、絶望の様だった。
そこまで言って、紫霊は言葉を詰まらせ物理的に頭を抱える。
というより、数多の感情が押し寄せ脳内がぐちゃぐちゃになっている様だ。
薄々勘づいてはいたのだ。
柚莉愛の瞳が、やけに妖しく光り輝いている事に。
求めていたモノがが不意に出てきて大興奮するいつもの事の筈の彼女の姿が、やけに狂気的だった事に。
それは、ほんの小さな違和感。
意識してもそれが違和感だと気づけないくらいに小さな、隠されたいつもと違う要素…
―その正体は、神だった。
紅愛は目を細め、宙に浮かぶ柚莉愛…否、柚莉愛の器を使った神の姿を見据える。
どうやら突然出てきたこともあり未だ本調子では無い様で、エネルギーを溜めている様だ。
エネルギーがたまっていない状態でこのオーラ…
今すぐに止めないととんでもない事になるのは火を見るよりも明らかだが、
これはそれと同時にエネルギーを溜めている間は作戦会議が出来るという事でもある。
もっとも、長く作戦を練る時間など無いが。
紫霊は立ち上がる紅愛を見上げて呆然とした。
そして次の瞬間彼女が何をしようとしているのか理解し、慌てて自分も立ち上がる。

「―神くらい軽く喰らってやるわ、悪魔舐めんじゃないわよ」
ゴウッ!
パリーン!
「…え?ちょっと、また出番?ついさっきも動いたのに」
「きっと何かやってるんでしょ、あの子達ならやりかねないわ」
「全く…いつになってもあいつらは乱暴ね」
「まぁまぁ、あの御二方らしいじゃないですか」
「…さて…呼ばれたのなら、使命を全うしましょうか」




「「「―ええ、勿論」」」
ドォォォォン!!!!
魔界メイドの、大怨霊の、魔界の神の、死の少女の…神秘に満ちた魔の力。
その力は、神をも縛り付けた。白日の元に晒すが如く、決して離さない様に―
『―なら、解放してあげなさい!刃を振るってあげなさい!一生かけて護ると誓ったのなら!!!』
「―お前を殺す!!!」
ザンッ!!!!!
バタン
後ろから聞こえた、気絶していた柚莉愛が上げた微かな声。
紫霊はそれに音速で反応し、少女の元に駆け寄った。
そう弱々しく呟いた少女の顔は、あまりにも絶望に満ちていて。
取り繕いだと一目でわかる程のぎこちない笑みが浮かべられるその夕陽色の瞳の縁からは、
大粒の雫が溢れ出ていた。
「―お疲れ様」
青年は、少女の頬に触れる。
そして、そっと―



































































































編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。