カタカタカタカタ
報告事項を打ち終わり、一段落ついて息を吐いた映姫の背後に…
ヘカーティアは、音も一切の気配も無く現れた。
状況すらも完全に理解できないまま、映姫は目の前の上司に向かって困惑気味に問う。
その表情は、以前歪みを破壊した時の様な威圧に満ち溢れたような物では無かった。
その様子だけ見れば、本当にただの少女かと思ってしまう程に…柔らかな笑みが、彼女の顔に浮かんでいる。
ヘカーティアは、頬を緩ませる映姫に顔の位置を合わせてそっとその頭に手を載せる。
そして、その暖かい表情から浮かべられた笑みに…映姫もまた、少しだけ照れ臭そうに笑ったのだった。
その言葉に心なしか下を向いて頷く映姫の顔の前で、ヘカ―ティアはパンパンと手を叩く。
映姫が不思議そうに顔を上げたのを見て、ヘカーティアは腰に手を当ててにかっと笑った。
映姫はそこで、その場を去ろうとするヘカーティアを引き留める様に声を上げる。
彼女に聞いておかなければいけない事を思い出したからだ。
「―他でも無い、あの子達自身なのよ」
午前9時、殺伐とした方の幻想郷の紅魔館ロビーには13人の叫び声が木霊していた。
近くにいたモブ妖精たちが何匹かびっくりして気を失っているが、まぁそれについては後で良いだろう()
平和な方の幻想郷の紫は真剣な表情で答える。
どうやら嬉しさや歓喜よりも困惑の方が数倍勝っている様だ。
それもその筈、慣れぬ方の紅魔館で一夜を過ごしたと思ったら告げられたのは…
崩壊した筈の自分達の幻想郷が元に戻っているという、目玉飛び出しどころでは無い衝撃の内容だったのだから。
疲れ切った表情で紫はため息交じりに言う。
その横で、真央はこの喜びと困惑がごちゃ混ぜになったどっちつかずの雰囲気を
一切気にしていない様子で何かを思い出したように手を叩いた。
そう遠い目で言う紫に、全員が何かを察した。
幻想郷の住人…つまり妖怪も人間もまとめて避難させるとなれば、
何かの事件が起こっても何らおかしくは無いだろう。
ヴォン
ヴォン
空中に開いたスキマから、右手だけが出てきてひらひらと振られる。
色々な事をして疲れたのか、はたまたこれが通常運転なのか…
紫の姿すら見せぬまま、スキマはすぐに閉じていった。
「―私達の幻想郷へ」
ヴォン
二日後
【二匹で一つの神獣】高麗野あうん
「―知ってるよ」
―これは、世界の存亡をかけた激戦の記録であり、他愛ない茶飯事の一ページでもある。
この世界は…まだ、終わらない。終わらせない。
彼らの、彼女達の、幻想郷の物語は…永遠に、続いていくから。
今はただ、噛みしめていよう。
―この掛け替えのない仲間達と歩む、最高で最強な物語を。
『何でお前ら幻想郷同士で戦争してんの!?』
―終幕。
























































































編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。