あなたの手を握ったまま、街を歩く。
街路樹の下に降る柔らかい日差し、 遠くで漂うカフェのコーヒーの香り。
——全部、香水のヒントになりそうだ。
あなたは小さなメモ帳を取り出し、歩きながら何かを書き込んでいる。
時折、空を見上げたり、通り過ぎる花壇の花に顔を寄せたり。
その仕草が、自然で、かわいくて、 胸の奥がぎゅ、と締め付けられる。
「……あのさ、りゅうき」
あなたが少し照れたように顔を上げる。
「ん?」 思わず顔を向ける。
「今日のこの場所、香水のイメージに使いたいの。だから、一緒に回ってほしい」
その言葉に、胸が熱くなる。
一緒にって、俺を頼ってくれてるんだ。 手を握る力が、自然に強くなる。
「もちろん。喜んで」
思わず笑顔になる。 でも内心、ドキドキが止まらない。
歩道の花壇の前で立ち止まる。
あなたがしゃがんで、一つ一つの花を嗅ぎ分けるように指先で触れる。
その姿に、目が離せなくなる。
「……香り、強すぎない?」
小声で俺に聞く。
「大丈夫だよ」 少し照れながら答える。
自然に、肩が触れ合う。 胸の奥が、ぎゅん、とする。
歩きながら、公園のベンチに腰を下ろす。
あなたはメモ帳を膝に置き、何かをつぶやきながら書き込む。
風がそっと彼女の髪を揺らし、 その香りに混ざった公園の木や花の匂いが、
まるで香水の原料みたいに感じる。
——俺、今、完全にきゅんきゅんしてる……
…あれ、なんか俺今日キモくね、?
思わず自分の手のひらを見る。
まだあなたの手を握ったまま。 自然に、でもしっかりと。
「……りゅうき、どう思う?」
あなたが顔を上げる。 その瞳に、少しだけ期待がある。
「……最高だよ」
思わず、言葉が出る。 その瞬間、彼女が小さく笑った。 その笑顔に、また胸が熱くなる。
最高なのは、…キミの方だよ。
——今日の香水
——あの笑顔のイメージを閉じ込めてほしい
公園の空気、花の香り、そしてあなたの横顔。
すべてが、香りのインスピレーションになる。
手を握り合ったまま、静かに時間を刻む。
今日は、二人だけの小さな冒険。
でも、俺にとっては、宝物みたいな時間だった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。