琴葉side
私たちは悶えていた。
痛さに。
何で……何でこうなっちゃったの…
部屋のドアをノックされたのは朝の7時頃だ。
たしかにこの拠点に住んでいる50〜60チームの中でSランクの愚獣と対峙できる隊員は私たちしかいない。
そうだ。
私たちの戦い方は基本的に玲音ちゃんの指示に従って動いていた。
信頼していた__そう言えば聞こえは良いかもしれないけど、裏を返せば玲音ちゃんに丸投げしていたってこと。
それなのに、文句も言わず当たり前のように指示を飛ばしていた玲音ちゃんの頼もしい瞳を思い出すと、一瞬だけ視界が揺れた。
強さで言ったら結の方が強いかもしれない。
余裕を持ち、冷静な判断ができる玲音ちゃんがいない。
それはかなり大きなことだ。
丸投げにしていた代償がここになって来てしまったのかもしれない。
珍しく視線を泳がせたランを結は見つめた。
そんな決意の表情を向けられたら『大丈夫?』なんて言えないじゃん。
頷くでもなく、私たちはほぼ同時に任務の準備を始めた。
そろそろ行こう、と結に言われた。
すると、それまで待ってくれていたランに結が近づき、自分の右耳から通信機を外し何かをこそっと話す。
ランは少し困ったような表情をしながら、結の通信機を受け取った。
出会って早3年。
こんなに真剣な顔をした結は見たことがない。
無言のまま、外へ出た。
外に出てから結に、
聞いたが、はぐらかされてしまった。
しばらく歩くと愚獣の出現情報があった場所へ着いた。
すると、
グォォォォ"ォ"!!!!!
人形の見上げるほどの愚獣がよだれを垂らしていた。
幸い、1体だけのようだ。
これなら余裕…なんて思っていた私がバカだった。
玲音ちゃんの代わりに指示を飛ばす結の言葉が終わる前に、
グアァァ!!!!!
鋭い爪をもつ腕で攻撃される。
間一髪で避けるが、バランスを崩し結は倒れ込んだ。
慌てて英舞ちゃんが駆け寄って安全なところまで移動させた。
そうしてしばらく対峙していたが…
攻撃が全く当たりません。どういうことでしょう?
途方に暮れていたとき、結が戻ってきた。
3人になると愚獣も追い詰められているのか、疲れが出始めたのか、攻撃が当たり始める。
だけど、次の瞬間愚獣が消えた。
私たち…英舞ちゃんを含む4人は目を疑った。
一体、今の一瞬でどこへ…?
英舞ちゃんが指差した先には、影になってよく見えないけれど、対峙していた愚獣と思しきシルエットが____。
結の声に続いて「うんっ!」と返事をしてから、さーちゃんと共に愚獣の元へ駆け出した。
けれど、その愚獣に近づくにつれて違和感を覚える。
あれ?あの愚獣、あんなに細かったっけ?
それに全然動かない。
その違和感の正体に気付いた頃には結が炎剣をそれに向かって、振り下ろしていた。
結が炎剣を振り下ろした先にあったものとは、
木だった。
結は…いや、私たちは大袈裟なほどにうろたえる身振りをしてから、3人同時にパッと英舞ちゃんに目線を向けた。
申し訳なさそうに俯いた。
私たちの叫び声が響き、近くを飛んでいた鳥がバサバサと音を立てて逃げていく。
自信満々に指さす英舞ちゃんの先には…
木があった。
そんなこんなで私たちは文字通りボコボコにされてしまった。
真面目な顔で呟くランに私とさーちゃんでツッコんだ。
消毒が染みて言葉を失っていた結がいつもの調子を取り戻して、ぶつくさと文句を言い始める。
もう疲れ果ててランの声に答える気力も体力もなくなってしまったので、とりあえず汲んできた水を飲む。
いってて…、口の中も切れているらしい。
一口飲み込んでから、水を飲むのをやめた。
今日のお風呂は大変そうだなあ、…
私は他人事のように思ってから、傷だらけになった腕をさすった。
そして、今更思い直す。
本当に敵わないなあ…w
次回_____『里帰り編_9.繰り返す』















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。