朝の光が障子の隙間から差し込む。
あなたの下の名前はぼんやりと目を覚ました。
昨夜のことを思い出そうとして――
頬が熱くなる。
あの近さ、あの声。
額に触れたぬくもり。
起き上がると、台所のほうから包丁の音がした。
聞き慣れた低い声も。
ぶっきらぼうなのに、
どこか照れているようにも見える。
心夏は座布団にちょこんと座りながら、
台所に立つ背中を眺めた。
広い肩。
無骨な腕。
普段は人を斬るためのその手が、
今は優しく料理をしている。
湯気の立つ味噌汁と焼き魚。
テーブルに置かれた瞬間、
ふわりと香ばしい匂いが広がった。
箸を取ると、不死川さんがじっと見ていた。
そんなに見つめられると、口に運ぶのも恥ずかしい。
少し拗ねたように言うと、
不死川さんが微かに笑った。
その笑みが、あまりにも穏やかで。
見た瞬間、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。
不死川は目をそらして、ご飯をかき込む。
その耳がうっすら赤いのを、あなたの下の名前は見逃さなかった。
食後、茶を淹れようと立ち上がったあなたの下の名前の手を、
そっと掴んだ。
思わず口をついて出た呼び方。
不死川が動きを止め、目を見開いた。
名前を呼ばれた瞬間、体がふるえた。
その声の熱が、
まるで心の奥まで染み込んでくるみたいで。
低く、確信に満ちた声。
あなたの下の名前は顔を上げられなかった。
だって、彼の瞳が真っ直ぐすぎて。
何も言えないまま、不死川の手が髪から頬へと滑る。
あと少しで、唇が触れる距離。
けれど――彼は寸前で止めた。
もう限界だった。
鼓動が早すぎて、息をするのもやっと。
その朝は、どんな任務よりも危険だった。
だって、彼の優しさに、
心が溶けてしまいそうだったから。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。