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第7話

これで貴方も共犯者 / 2−3
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2025/12/09 12:00 更新







外の音が、ふと近づいてきた。

最初は遠巻きの足音と、ラジオみたいな声。
窓越しに見える影が揺れて、胸の奥がざわつく。
あのニュースからずっと、いつか来るだろうとは思っていたけど、実際に来ると心臓が喉に浮く。


ドア越しの声は落ち着いていた。
だけど、そこに混ざるコートの擦れる音、無造作に鳴る金具の音が尋常じゃない緊張を運んでくる。




三人。近所の巡回とも違う、明らかに「仕事」の空気をまとった三人が玄関前に立っている。




「警察だ。お話を伺いたい。」





一人が、ざっくりとそう告げる。声は穏やかだが、目は冷たい。生ぬるい血でも見透かすような視線だった。


俺は肩が小さく震えるのを抑えながら
リビングの隅に寄った。

ymmtは何事もないようにゆっくりと立ち上がり、
辺りを見回してから、人を招くようにドアに歩み寄った。


昨日したのに随分と動けそう。



彼の表情はさっきまでの柔らかさのままだったけど、
その手の動きの静けさが、妙に計算されたものに見えた。



ymmt「どうぞ、上がってください」




ymmtは微笑んで言った。
声は優しく、けれどその目だけが少しだけ光っていた。
三人は躊躇いながらも家に上がり、
厨房の方へと誘導される。
俺はその間、膝から力が抜けて床に座り込んでしまった。



無理だろ、こんなの。

俺追ってきてるやつが、こんなに近くにいる。

心臓が口から出てきそうだわほんま。


最初のやりとりは形式的なものだった。
身分証の提示、近隣からの通報の詳細、
こちらに了承を求めるような言葉。


男たちの一人、頑丈そうな中年の男が
カメラで部屋を一瞥すると、眉間に皺を寄せた。
警戒は確実に上がっている。

その時だった。ymmtが、ぽつりと低く言った。



ymmt「外で話しませんか?この中はちょっと狭いですし」



提案は一見無害だった。
だが、男たちの足取りは心なしか軽く、
外に誘われるまますぐに玄関の外へ出ていく。




────空気が変わった瞬間を俺ははっきり感じた。

外は昼光ではなく午後の陰で、
近所の民家の合間に細い路地が伸びている。
そこへ彼らは歩いていった。三歩、四歩、そして──



遠くから、鈍い衝撃の音がした。

最初は小さく、それからどんどん大きくなる。







人の声が割れ、


奇妙な金属音が混じり、


続けざまに上がる悲鳴。


俺の耳は異常に敏感になって、
音の一つ一つが皮膚を剥がすように痛くて、



数分後、玄関を開けて戻ってきたymmt。


目の前の貴方が何も変わらず立っているのが不気味だった。



sgi「っ……!」

sgi「やまも、おまえ…なにして、」



俺は立ち上がろうとした。

けれどymmtが、静かに手のひらを伸ばして俺の腕を掴む。




その力は驚くほどに温かく、確かだった。

彼は目を細めて、
まるで遠くで散った鳥を眺めるように言った。




ymmt「想定通りです。須貝さん、来てください」




促されるまま外へ出ると、
そこにはもう三人の姿はなかった。



代わりに、音が描いた光景が存在していた。


破れた服の残骸、

散乱した書類の束、

そして地面に滲む黒い帯──血の匂いが、


風に乗って鼻腔を刺した。
視界の端に、人の形が折り重なるように横たわっている。
胸の奥が、バキッと割れるような硬い衝撃に襲われた。


────三人は、倒れていた。


一人が呻き声を上げ、二人目はまったく動かない。
三人目は目を見開いて、まだ声を出そうとしている。
だが血の流れはもう止まらない。

俺の世界は急速に色を失い、
時間だけが遅れて流れるように感じた。

足元の影が、俺の意識を引っ張る。




sgi「……どうして」



俺の声は、かすれて小さくなる。
嘔吐感が胃袋を逆撫でする。



目の前で起きていることが現実であることを
どうしても受け入れられないでいた。



ymmtは、膝をついて吐き捨てるように言った。



ymmt「必要だったんです。これ以上、情報が外に出られるわけにはいかない」








なあ。





怖い、よ。







その口調に、一瞬だけ恐怖にも似た冷たさが混ざった。

彼は手早くそして無駄のない動きで状況に対応していく。

俺はその手つきにただ呆然とするばかりで、
言葉が喉に引っかかる。

彼が何をしたのか、どうやってそうなったのか────
細かな部分は頭に入ってこない。



ただ一つ確かなのは、あの日、自分が踏み込んだ先の線を越えてしまったという事実だった。


sgi「あの人たちも、家族がいるかもしれない」


俺はそう言った。言葉の端に震えがあった。

だがymmtは首を振らない。
彼の顔は、祈りの場で見せる表情に似ていた。
何かに委ねられ、選ばれた者のように落ち着いている。




ymmt「分かってます。だから、これでいいんです。須貝さんがここにいることが、これで守られるなら、僕はやります。僕は、守ると誓ったんですから」




その言葉は正当化に聞こえた。
だが、同時にそこには救いを求める叫びも混じっていた。

感じてしまった。

俺は手を震わせながら、
遠くで警笛が歪んで聞こえるのを感じた。
外の世界は、まだ気づいていないだけで
確実に近づいてきている。





後始末は静かに、素早く行われた。
ymmtの動きは無駄がなく、俺はただ
その傍らで呆然と立ち尽くす。

触れた手の感覚、血の温度、金属の冷たさ──現実は容赦なく、細部で俺を締め付ける。




胸の中に渦巻くのは恐怖と、底なしの罪悪感。



















その夜、布団に横になっても眠りは来なかった。
ymmtは隣で眠ったふりをして、時折俺の呼吸を確かめる。彼の囁きは低く、だが確信に満ちていた。



ymmt「ここなら大丈夫。僕がいるから、大丈夫だよ、須貝さん」

sgi「……おう」



その言葉は、まるで毒と薬が混じったように効いた。

安心の感触が胸に湧き上がる一方で、
俺は自分が消えかけていくのを感じた。

世界は静かに、だが確実に変わっていく。
守られるということは、同時に身を委ねることなのだろうか。あるいは、それは取り返しのつかない額に自分を差し出すことなのか。

窓の外を緊迫した夜風がすり抜ける。

遠くでサイレンが鳴るけれど、
それはまだこちらへ向かってはいなかった。
俺たちはその静けさの中で互いの息だけを頼りにしていた。

内側から広がる暗闇と、ymmtの穏やかな声が交差する。






どこまでが救いで、どこからが破滅なのか。
その境界線が、俺にはもう見えなくなっていた。



















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