「……ここは?」
そこは、白くて…
「……眩しいっ。」
太陽が、床に、壁に、天井に反射して、その空間は光に溢れている、綺麗な宮殿。真っ白な大理石でできた床や柱、真横にある高さ三メートルの両開きの窓が少し開いていて、そこから吹く風が心地良い。
「おはよう。」
「誰⁉︎」
いや、私はこの人を知っている。顔も声も、名前さえ覚えがない。しかし、私はこの人を知っている。そんな気がした。
「わたしだって聴きたいよ、あなたは誰?」
「わたし、分からないの。自分が誰なのか。そして、なんでかあなたのこと知ってる気がする。アナタは、私が誰か知らない?」
「私も!私もアナタのこと、知っているような気がするの。」
なんだか不思議な気分。なぜ二人ともお互いのことを知っているのだろう?たとえ知っていても顔や名前が分からないのなら知っているとは言わないのではないか?それに、私達はなぜココにいるのだろうか?
ココにいる理由も自分が誰なのかもわかんなくて、お互いにお互いを知ってるのもおかしいのに、意外と冷静でいれる。
「ねぇ、私達なんでココにいるのかな?」
この人も同じことを考えてたみたいだ。
「記憶がないのも、わたしたちがお互いを知ってるのも謎だし……」
「そもそも、わたしたちお互いの名前すら知らないのになんで知ってるって分かったのかな?」
確かに、そうだ。見覚えがあるわけでもないのに知っていると感じた。もしかして、記憶がない事と関係があるのだろうか。しかし、記憶が無くなったのなら知り合いだということも忘れるはず……謎が謎を呼ぶ。
そもそもこの人とどこで知り合ったのかもわかんない。でもそれが分かってもこの人のことが思い出せるわけじゃない。わたしたち、どうすればいいんだろ?
まあ、できることだけやればいいかぁ。でも、今わたしたちなにができるんだろ?
そしてその時ハッと気づく。『何でも出来る』事に。今まで出来なかった事も、普通なら出来るはずのない事も、魔法の様な事だって、何もかも可能だ。試しに、食べ物を出してみる。
「え、なにそれ」
私が出したのは、ブルーベリー。カゴに入って出て来た(流石に一粒では無かった)。
「私達今、何でも出来るんだよ。」
「ほんとだ!」
だしたのはグレープフルーツ。
よりによってなんでそれ?笑
「魔法みたい……」
こうなると、一度やってみたい事がある。
「ねぇ、私、アナタと入れ替わってみたいんだけど、興味無い?」
入れ替わり……自分とは違う人の感覚を知る事。これ程までに興味を唆る物は無い。
やってみたい。他の人と入れ替わるのって、なんか楽しそう!
「あるある!やってみたい!」
「じゃあ、始めるよ……」
わたしの身体も、性格も、ここで育んだたった数分の記憶も……全部あなたのと『交換』しちゃおう。
私とこの子の思考、感覚の違いを知る…………その不可能が今、可能になり得ることに私は感動とも、興奮とも言える感情を抱いていた。
わたしは私に…
私はわたしに…変わる。
その瞬間、色々なものが頭の中に入り込んできた………ソレの流れは速すぎた。脳が思考を止め、ソレの侵入を拒んだが止まらない。頭が割れそうで、目の前が真っ暗で、その苦しみの中で、気付いた……
(違う、入って来たんじゃない、『呼び起こされた』んだ!)
コレの正体は、多分『記憶』。でも、思い出そうとしたらダメ。記憶が流れてるだけで苦しいんだもん。それ以上記憶に触れたら、間違いなくおかしくなっちゃうから。
どれくらいの時間が経っただろう。いつまでも続く苦しみに、流石にそろそろ限界がやって来た。
もう……これ以上………耐えられない…………ワタシ、死んじゃうのかな?
意識が遠のいていく中、(ワタシ、もう死ぬんだ……)ただそれだけしか考えられなかった。
目が覚めた。
「……ココは?」
そこは、白くて…
「……眩しいっ。」
太陽が、床に、壁に、天井に反射して、その空間は光に溢れている、綺麗な宮殿。真っ白な大理石で出来た床や柱、真横には高さが三メートルくらいある両開きの窓があり、そこから吹く風はなんとも心地が良いものだった…………………。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!