師冬side
今、確かに目の前で幼馴染である屋代あなたが死んだ。
光のない瞳。
微笑んだまま死んだ彼女の目をそっと閉じさせた。
彼女の髪についていた簪をそっと抜き取る。
抜き取った簪はそうっと懐に収めた。
夜。夢を見た。今日の昼の夢。
目の前にいるのは瞳から光を失った彼女。
ツンと鼻につく錆びた鉄のような血の匂い。
血に染まった薄い青の着物に、
白から血で赤になった茉莉花柄の帯。
身を焦がすような、この感覚。
薄ら濡れた頬は気づかないふりをした。
彼女が死んで一か月がたった。
あれから何度も夢に見る。
彼女が死んだ日の夢を見て、涙を流している自分がいる。
冷えきったはずの心に響く彼女という存在。
気にしないふりをして、一日を始める。そんな日々。
もっと違う結末があったんじゃないだろうか。
そんなことを思うと無力感で自分を呪いたくなる。
彼女への消化不良のような気持ちを放っておいてまた過ごす。
彼女が死んで半年たった。
あの日の夢はいまだに見る。
この半年間、何をしててもずっと腹の底でくすぶり続けているようなそんな感覚。
そんな風に思う原因はわかってる。
自分がまだ彼女の死を受け入れられてないからだろう。
現実を受け入れたくない心と現実を理解した頭が争って、
この不快感を産みだしているんだろう。
彼女が死んで一年がたった。
自分にとって、食べることが一番の幸福だったはずなのに彼女に出会ってすべて変わった。
どんなにおいしいものを食べたって、
どんなに珍しいものを食べたって、
自分の幸福の器は満たされない。
この運命を悔やみ呪った。
彼女からの愛がまだ足らない。
いない彼女に縋ってる自分がいる。
欠けたものは何で埋めたらいい?自問自答を続ける。
何度も夢見る。彼女の姿を。
何度も願う。
生まれて初めて自分に優しく触れてくれた彼女の温もりをまた感じたいと。
自分の胸で膿み続けている心の傷ですら癒せるような、自分を優しく撫でる手を。
何度だって都合のいい夢を見た。
物語のようなご都合主義の奇跡を望んだ。
”もしもあの時、彼女が生きられる選択肢があったなら”
そう願うことをどうしてもやめられない。
彼女の簪を握って涙を流す日が増えた。
直感でそう思った。
そんなときでも脳裏をよぎるのは彼女の姿だった。
わかってる、彼女はきっと天国にいる。
自分は地獄行きだ。
でも、でも、それでも、_____
ちゃんと伝えられなかったその言葉を、次どこかで出会えたらちゃんと伝えよう。
そっと閉じた瞼の裏に、彼女が舞う姿が浮かび上がった。
眩しい、自分の一番星。
今、会いに逝きます。
“待ってたよ”そんな声が聞こえた気がした。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。