どうにかしてあなたと話したくて
あなたの家の前で待っていた頃
だんだんポツポツと冷たい水が俺の頬を伝った
あいにく傘は持ってきていない
とにかく雨宿りできる所 … と
あなたの家の斜向かいの店の軒下にお邪魔した
少し雨脚が強まったとき、 男があなたの家から
出てきた
そして俺の前を通り過ぎる
とある宝石商から貰った魔術のこもった
宝石を握りながらそう唱えると
男の心の中が手を取るように分かる
そこまで聞いてホッと一息をつく
あなたに危害を与えたようなやつなら
さっさと殺そうかと考えていたがそうならなくて
良かった
そこからまた、 数分待っていると
チリンと軽快な音がして扉が開く
あなたは俺に気が付かず、
暫くぼーっと空を眺めていた
軽く手を振って微笑む
名前を呼ぼうとすると、顔を歪めて
店に入ってしまった
伸ばした手の行き場がなくなり
力なくおろす
店の扉に人影が映り、 あなたが
寄りかかっているのがわかった
帰ろうかと引き返すと、
ドサッと何処からか音がした
まさか、 と思いあなたの家の前の扉へ向かい
軽く中をのぞくが誰もいない
またため息をついて視線を下へ向けると ____
幸い扉に鍵はかかっておらず引き戸だったため
あなたに当たる心配もなく扉は
開けられた
中にはあなたがはいてしまったであろう吐瀉物と
ぐったりと倒れたあなたがいた
慌てて駆け寄って抱き上げる
青白い顔で、 軽く過呼吸を起こしていた
背中をさすりながら家の中へ入る
畳に寝かせると、 先ほどよりは落ち着いたようで
呼吸は規則正しいものへと変わっていた
ホッと一息ついたのも束の間
そういえば勝手に家に入ってるやん
と我に返り、 慌てて家を出た
雨脚はさらに強くなって、
100m先も見えないほどだった
あいにく傘を持っていなかったから、
俺はびしょ濡れになる覚悟をして雨の中へ
飛び出した
雨に打たれながら、 俺は熟考する
……… やはり本当のことをあなたに話すべきなのか
フラフラと路地裏に入る
雨が降り、 ネオンに輝く街と反して
俺の目はどれだけドス黒いんだろう
帽子を深くかぶって、 人の目線から逃れるように
路地裏にうずくまる
俺はそのまま眠りについてしまった












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。