第15話

もう一度、恋をしよう
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2026/01/15 06:00 更新
「ねぇ、悠真。」

夜、ベランダに出た紗菜が、缶コーヒーを片手にぽつりとつぶやいた。
冷たい風が頬を撫で、街の灯りが遠くで瞬いている。

「なんかさ、またこうして並んでるの、変な感じだね。」
「変か?」
「うん……だって一回終わったのに、またここにいるんだもん。」

悠真は笑った。
「終わった、って思ってたのはお前だけかもな。」

「え?」

「俺、あの日……“終わった”なんて一度も思ってなかった。」

その声は、静かだけど、確かだった。
いつも強がっていた彼の目が、まっすぐに紗菜を見つめている。

「ただ、どうしても素直になれなかった。
お前が泣いた顔見るのが、怖かった。」

「……バカ。」
「知ってる。」

くすっと笑い合う。
その笑いの中に、少し涙が混じった。



「じゃあさ、もう一回、最初から始めようよ。」
紗菜が言うと、悠真は目を丸くする。

「最初から?」
「うん。出会いから。……“大学の新入生の私”と“たまたまルームシェアすることになった悠真”って設定で。」
「お前、何それ。」
「いいじゃん、ロマンチックで。」

そう言って、紗菜はにっと笑った。
悠真は小さくため息をつきながらも、その笑顔に負けて笑い返す。

「……わかった。じゃあ、最初のセリフからやり直すか。」
「え?」
「『……は?なんであんたがここにいんの?』だろ?」
「ちょ、やめて! それ私のセリフじゃん!」
「演技指導してやろうか?」
「いらない!」

笑いながら肩を叩き合って、
気づけば二人の距離は、また少し近づいていた。



部屋に戻ると、テーブルの上には二つのマグカップ。
ココアの湯気が、やわらかく揺れる。

「ねぇ、悠真。」
「ん?」
「好きだよ。」

一瞬、時が止まった。
そして、悠真はゆっくりと笑う。

「俺も。……何回でも、言ってやる。」

その言葉に、胸がきゅっと締めつけられる。
でも、もう泣きたくなかった。

だから、笑った。
この人となら、きっと大丈夫だって思えた。



外では、春の風がカーテンを揺らしている。
新しい季節が、もうそこまで来ていた。

——失った恋じゃない。
——今度こそ、“続いていく恋”なんだ。

「ねぇ、悠真。」
「ん?」
「もう一度、恋しよう。」

「……ああ。お前と、何回でも。」

二人の笑い声が、同じ屋根の下に響いた。
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