高明さんがよく笑ってくれて、しっかり感情表現をするようになってから、
気づいたら2週間、もう季節は9月で、夏の暑さもだいぶ落ち着いてきた。
後輩くん「あなたの名前刑事!ごはん、行きましょう!!」
そう、後輩くんには付き合ったことを伝えていない。
いや、悪いことをしているなぁとは思っている。思っているけれども
職場恋愛自体あんまりよくないから、職場の人には伝えたくないなぁ、というのと
それで高明さんと後輩くんが険悪になるのもいやだなぁ、というのと
そして、なにより、タイミングがなかった、から伝えられていない。
あなたの名字「え、うん!行こうか」
だから、それで変にごはんの誘いを断るのも申し訳なく、なんだかんだで後輩くんともご飯を食べに行く。
高明さんがいる日は高明さんもついてくるし、由衣ちゃんや大和警部もついてくるから、何ともなかったんだけど
ついに、その3人がいない日が訪れてしまった。
後輩くん「久しぶりですね、2人きりでお昼って」
あなたの名字「そ、そうだね。どこに食べに行こうか」
後輩くん「じゃあお蕎麦行きましょ!なんだかんだであなたの名前刑事と食べる蕎麦が僕、一番好きなので」
同僚「あの2人お似合いだよね!!頼れるお姉さん刑事とかわいい犬系の後輩、みたいな?」
同僚「でも、諸伏警部とあなたの名字刑事もお似合いだと思うよ?」
同僚「いやぁ、たしかにね?」
諸伏Side
諸伏「急いで解決させてきましたけど、12時回ってしまいましたね、もうあなたの名前は休憩取り始めちゃいましたかね」
上原「うーん、いなそうですね、あなたの名前ちゃん」
大和「後輩くんもいねぇな」
諸伏「まさか、2人で......」
大和「おい、落ち着け。そもそもお前らが付き合ってるのを知ってんのは俺たちだけなんだから、知らなかったら普通に同僚くらい飯に誘うだろ」
諸伏「いえ、ですが後輩くんはあなたの名前のことが......」
上原「ま、まぁまぁ、ね?落ち着きましょう?諸伏警部......」
大和「てか俺たちも飯行こうぜ、高明、上原」
上原「そ、そうね!まだ私たちもご飯食べてないものね!!」
諸伏「あの、あなたの名字さんと後輩くんがどこにいるかご存じですか?」
同僚「ひっ......ど、どうしたんですか......そんな怖い顔して......」
諸伏「いえ、少し"大切なお話"がありまして」
同僚「そ、そうですか......。えっと、2人でご飯に行くのを見ました。どこに食べに行ったのかまでは知りませんが......」
諸伏「そうですか、ありがとうございm......」
大和「すまねぇな、うちの高明が。業務、邪魔したか?」
同僚「い、いえ、大丈夫です」
大和「高明、お前もやりすぎだ」
諸伏「......申し訳ありません、ご迷惑をおかけしました」
同僚「いえ......」
諸伏「それでは、お蕎麦でも食べに行きましょうか」
上原「え?蕎麦?」
諸伏「ええ、いつもいろんなお店にご飯を食べに行きますが、あの蕎麦屋さんに行くときに限って楽しそうなんですよ。きっと彼はあなたの名前とあの蕎麦を食べるのが好きなんでしょう」
大和「おい、待て。今そのままあなたの名字に会いに行けば恋人であることがばれたりするぞ」
上原「そ、それはまずいかも......。諸伏警部!!いったん落ち着きましょう?」
諸伏「あなたの名前が私ではない男と2人で食事をしているのに?落ち着けというのですか」
大和「お前、そんな重い感情持ってたのか.....?」
諸伏「私を、しかも2回も、救ってくれた英雄ですから、」
上原「で、でも....」
諸伏「あなたの名前だって、私もいないのだから断ってくれればいいものを......」
大和「あなたの名字も性格的に断れなかったんだろ」
諸伏「でもですよ、もっと私のことを考えてくれたっていいじゃないですか」
上原「うーん、じゃあ嫉妬大作戦でもする?」
諸伏「嫉妬大作戦......?」
上原「はい!私と諸伏警部が仲良くしたらあなたの名前ちゃんも嫉妬、するんじゃないですか?」
諸伏「どうでしょう、前に、私と敢助くんと上原さんで仲良くしているのが好きなんだーって言っていましたから、嫉妬とかするのでしょうか。それに何より、敢助くんが......」
大和「ま、まぁ、高明なら......それに演技ってわかってりゃあ、なんとか......」
上原「まあ、やってみるに越したことはないでしょう!」
諸伏「で、でしたら......由衣さんって呼んだ方がよいですかね」
上原「じゃあ、私も高明くんって.......敢ちゃん!!そんな怖い顔で見てこないで!!演技って言ってるでしょ!」
大和「ま、まぁそうだよな。由衣が連れ去られた日の礼があなたの名字と高明にはあるし....ここは応援側に回ってやるよ」
あなたの名字「美味しかったね、蕎麦。午後もがんばれそう!」
後輩くん「はい!僕も頑張れそうです!」
上原「あ、おかえり!あなたの名前ちゃん!ほら、高明さん、あなたの名前ちゃん、戻ってきましたよ?」
諸伏「そうですか。あ、そうだ、由衣さん、この仕事、お願いしても?」
上原「あ、はい!」
あなたの名字Side
なんか、お昼から戻ったら高明さんと由衣ちゃんがすごい仲良さそうにしている......。
名前で呼び合うところはまだしも、そもそも幼馴染だし......。
でも、でもなんかいつもなら頼ってくれる私を頼らず、由衣ちゃんを......。
いや、嫉妬するのも変な話だ。なにより、由衣ちゃんには大和警部がいるし。でも、なんか少しもやっとしてしまった。
あなたの名字「あ、あの、高明さん......」
諸伏「なんでしょうか、あなたの名字さん。ここは職場ですが」
あなたの名字「あっ......」
私が職場とはわかっていながらもあえて高明さんって呼ぶと、高明さんはいつもよりそっけなく返す。
高明さんとお付き合いを始めてから、たまに職場で高明さんなんて呼べば、職場ですよ?といいながらも
あなたの名前って、返してくれるから、今日はどうしたんだろう......。
2日後の19時過ぎ。そろそろ高明さんも仕事が終わる頃だろうか。
ここ2日、ずっと冷たくあしらわれたり、帰りも私の方が仕事終わるの遅かったりして、
今まではまってくれていたのに、最近は待ってくれずに帰ってしまう。
まぁ、大和警部や由衣ちゃんも一緒だから、普通に友達と帰りたいだけだろうけど。
でも、少し寂しい。
でも今日は、私の方が早く仕事が終わった。久しぶりに、一緒に帰りたい。
あなたの名字「も、諸伏警部、一緒に帰りませんか......?」
諸伏「すみません、まだ仕事が残っていますので。先に帰ってください、あなたの名字さん」
あなたの名字「は、はい。ごめんなさい、お忙しい中話しかけて.....」
あまりにも冷たくされるものだから、申し訳なさが勝る。
それに......なにか、嫌われるようなことしただろうか。
思い当たることはない。高明さんがいろんな表情を見せるようになってから、
高明さんはよく笑うようになったし、しかも私の前では特に。
それにデートなんかにもまた誘ってくれた。
職務中もすごい頼ってくれるようになって、事件の時も書類仕事も。
でも、でも嫌われるようなことって、あったっけ......。
諸伏「上は.....由衣さん!」
上原「どうしましたか、高明さん」
上原さんって、呼ぼうとした?無理して由衣さんって呼んでる?いや、そんなわけないよね。
そもそもなんでそんなわざと由衣さんって呼ぶ意味があるのだろうか。
だから、気のせい、あるいは普通に仲良くはなったんだけど前の癖で、とかだろう。
でも、最近なんだか仲良いよな、あの3人。
いや、私が来る前からずっと仲良しで、ずっとあんな感じだったのだから、
そりゃ当たり前といえば当たり前なんだけど......。
それでも、4人で仲良くしようねなんて言ってくれたことがあったから、少し寂しい。
そんな3人を見てると辛くなってくる。
帰ろう。1人で。
いつも、高明さんと別れたりであったりする交差点。
ここ2日毎朝、毎晩、ここを通るたびに胸が苦しくなる。
あなたの名字「やっぱり、嫌われちゃった、のかな」
諸伏Side
上原「どうしましたか、高明さん」
諸伏「あ、あの。耐えられない、です」
上原「はい?」
諸伏「いや、その、あなたの名前に冷たく当たるの、辛い、です」
上原「嫉妬大作戦は向かなかったか......敢ちゃん!!」
私は、あなたの名前が好きだ。だからこそ、冷たく当たったりするのが辛いと感じてしまう。
なんだか距離があるみたいで、なんだか嫌われてしまいそうで、
これでまたあなたの名前が、後輩くんではなく私を見てくれるならいいのですが、
でも、耐えられない、というか......。
大和「どうした、由衣......って、高明、どうした」
上原「いやぁ、それが......」
諸伏「あなたの名前に冷たい態度とったりするの、辛いです......。嫌われたらどうしようって」
大和「おいおい......」
諸伏「すみません、ちょっと、だめで......」
あなたの名前に悩みを話して、すっきりして、それから寝なかったこととかを怒られてから、
私はしっかり睡眠をとるようになりましたし、辛かったこともちゃんと吐き出しました。
だから、ここまで辛くなるはずがないのに、けれどどうしても......
上原「恋は盲目とかいうけど......」
大和「まさか、お前がこうなるとはな....」
諸伏「しょうがないじゃないですか。だって......」
上原「じゃあ正直に言ってきたらいいじゃないですか、あなたの名前ちゃんに」
諸伏「無理ですよ、そんな勇気、私にはありません」
でも、あなたの名前なら......
大和「あなたの名字なら、言えるだろうなぁ、そういう勇気はあるからなぁ」
そんなことを考えていると、敢助くんが心を読んだかのようなことを言ってくる。
諸伏「それは......挑発ですか?」
大和「ま、そんなところだ。こんなくよくよしてる高明見てんのも変な感じするしよ」
諸伏「でも......」
上原「あなたの名前ちゃんもきっと、素直に言ってくれた方が嬉しいですよ」
諸伏「そう、ですか?」
上原「はい、きっと」
諸伏「でも、私、今日あなたの名前、先に帰らせてしまいました」
大和「それ、いつだ」
諸伏「えっと、5分くらい、前でしょうか」
上原「なら.....」
大和「追いつく、な。走れ、高明」
諸伏「わ、わかりました。すみません、ご迷惑をおかけして」
それから私はさっと荷物をまとめて、県警をあとにする。
事件で犯人を追うときかのように、速く、速く走るけれど、あなたの名前の姿は見えない。
諸伏「あなたの名前、私が、こんなんだから.....ごめんな、さい.......」
そうつぶやいたとき、いつも出会ったりわかれたりする交差点に、
見覚えしかない
今とても会いたい
そんな人の背中が見えた。
あなたの名字「やっぱり、嫌われちゃった、のかな」
私が近づいていくと、彼女がそんな言葉を漏らしているのが聞こえた。
あなたの名前はまだ、私の存在には気づいていないようで、交差点にただただ、立ち尽くしている。
諸伏「あなたの名前!ごめんなさい!私は、君のことが大好きですよ。この言葉に嘘はありません」
あなたの名字「たっ、高明、さん......!?」
衝動にかられた私は、あなたの名前のその背中に抱きついた。
いつもそばにいるあなたの名前を、間近で感じられて、久々に会ったからというのもあるのだろうか。
嬉しさと、安心感と、そして何より、ドキドキが止まらなかった。
あなたの名字Side
私がそんなことをつぶやきながら、交差点に立ち尽くしていると、
背中に思いっきり衝撃を感じた。そして、声が聞こえる。私の、大好きな人の声が。
諸伏「あなたの名前!ごめんなさい!私は、君のことが大好きですよ。この言葉に嘘はありません」
あなたの名字「たっ、高明、さん......!?」
突然のことに驚く。
私のことが嫌いになっていたんじゃないかと思うような態度をとっていたにもかかわらず、こうして
高明さんが私のことを抱きしめてくれていた。
離れたくない、そんな心地よさを覚える。
あなたの名字「嫌いになったんじゃ、なかったんですか?」
諸伏「そんな訳がないでしょう。むしろ、好きすぎるあまり、後輩くんに嫉妬してしまいまして。私という、その、彼氏、がいるのに、他の男性と2人でご飯なんて、許せないに決まっているでしょう。よりによって、君に好意を抱いている男性と」
あなたの名字「それは、その、ごめんなさい。断れなくって」
諸伏「いえ、そばにいてあげられなかった私も悪いです。それで、こんなことを、してしまって申し訳なかったです。嫉妬させて不安にさせて、それで振り向きなおしてもらおうって」
あなたの名字「そんなことしなくても、私はいつも高明さんを.....」
諸伏「じゃあ後輩くんとごはんなんて、行かないでください」
そういう高明さんは、私に抱き着きながら、すごい小さな声を出し、顔も真っ赤になっていた。
高明さんがこうしてわがままを言ったりすることはなかったから、こんな一面もあるんだってしれて、
嬉しかった。
あなたの名字「わかりました。私の方こそご心配おかけして、申し訳ありません」
諸伏「いえ、君が謝ることでは」
あなたの名字「でも、後輩くんは私たちが付き合ったこと知らないわけですし、なんて断れば......」
諸伏「いっそのこと言ってしまいましょうか?職場で」
あなたの名字「え、それはまずいんじゃ」
諸伏「私ももう35、君だって29です」
あなたの名字「なにが、言いたいんですか」
諸伏「結婚の報告なら、職場にだってすべきでしょう?」
あなたの名字「えっ!?」
プロポーズ、というやつだろうか。確かに年齢的にもそろそろ結婚は考えるべきかもしれない。
でも、そんな、いきなり!?付き合って1か月弱だし、そもそも出会って2か月半しかたっていないし...
諸伏「あ、これはプロポーズではありません。もっと、素敵なところでしたいですし、もっとあなたの名前のことを知ってからしたいですから。でも、結婚を前提に、これからもお付き合いしていただけませんか?」
あなたの名字「え、あ、はい!もちろん、です。私もこんなに頼れて、優しくて、かっこよくて、そんな人が旦那さんだったら、素敵、でしょうから......」
諸伏「これで職場で隠す必要もありませんよ」
あなたの名字「高明さん、もてるから変に敵を作りそうなのでそれは嫌です」
諸伏「何かあったらお守りしますよ」
あなたの名字「いや、そういうことじゃ......」
諸伏「でも、これで後輩くんの誘いはしっかり断れますか?」
あなたの名字「は、はい。多分....」
諸伏「多分、ですか?それは、悪い子だ。せっかく私も勇気を出して思いを伝えたのに、約束できないというのですか?」
いきなりため口からのお叱り口調。それをこんなイケボで言われてしまっては、すこしドキッとしてしまう。
この人は中身と顔だけでなく、声までかっこいいから、本当に、ずるい。
諸伏「ま、あなたの名前が断れなかったら、その時は私が断りますから、安心してください。もう、あなたの名前のことは誰にも渡しません」
諸伏「愛しています、あなたの名前」
翌日のお昼、長野県警本部にて
後輩くん「あなたの名前刑事!お昼、一緒に食べましょう!」
あなたの名字「え、あ、いや今日はちょっと....というかこれからはちょっと.....」
後輩くん「え、僕とごはん食べるの、そんなに嫌でしたか...?」
あなたの名字「いや、そういうわけじゃないんだけど......」
後輩くん「じゃあいいじゃないですか」
諸伏「駄目ですよ、あなたの名前は私の彼女ですから」
あなたの名字「も、諸伏警部!?」
諸伏「いつもみたいに高明さんって呼んでくれたって構いませんよ?」
そういう高明さんはいつもに増して楽しそうで、それに、私の横に、普段なら立つだけだのに
今日は手をつないできた、しかも恋人つなぎ。
いくらなんでもやりすぎでしょ!!職場だよ!!見られたらどうすんの!!なんて心配よりも
ドキドキが上回ってしまう。
後輩くん「いつから......」
諸伏「諏訪湖の花火の時からです、自慢の彼女ですから、他の男には何があったって譲りませんよ?」
後輩くん「相手が諸伏警部じゃ、勝ち目もない、か......」
諸伏「では、あなたの名前は私と"2人"で、どこか昼食を取りに行きましょうか」
あなたの名字「え、あ、はい!ご、ごめんね!!後輩くん!!君にはもっと素敵な人が絶対いるから!!」
後輩くん「最後まで優しい人だ、貴方は。ありがとうございます」
諸伏「それではどこに行きましょうか」
あなたの名字「今日はパスタにしましょうか」
諸伏「心、読めるんですか?」
あなたの名字「心読めるも何も、高明さん、いつでもパスタは食べたいでしょう?」
諸伏「それは、そうかもしれませんね」
そうして笑う、高明さんの笑顔が、私は本当に、大好きだ。
後日談#8 嫉妬に狂ったコウメイさん 完結











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。