第29話

言葉にしなくても:ini
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2026/05/14 08:08 更新











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乾は、たぶん人の心が読めるんだと思う。



いや、正確には違う。
読むというよりも“察する”能力が異様に高いのかもしれない。


そんなくだらない事を、ぼんやり考えてしまっている。











ini
今日ずっと難しい顔してるけど
・・・なんかあった?




大学近くのカフェ。

レポートを広げたまま固まっていた私に、向かいの席の乾がストローを咥えながら言った。


あなた
・・・・・・別に
ini
はい、嘘ついてるー


私の返答を遮るように言う。
しかも、ちょっと笑ってやがる。




ini
ゼミ?
あなた
違う
ini
サークル?
あなた
違う
ini
バイト?
あなた
ちがう
ini
じゃあ、人間関係だ




テンポよく質問攻めされ、思わずむっとする。

しかも人間関係で悩んでいることを見抜かれ、余計に悔しかった。

あなた
尋問みたいでなんか嫌なんだけど・・・
ini
え、消去法で聞いてるだけなんだが
あなた
なおさら嫌。
ini
そりゃ失礼




乾はそう言ってカフェラテを飲む。


ini
んで、実際のとこどうなの?


グラスの縁に氷が触れ、カランと澄んだ音が鳴る。



全て見透かしたような眼で私を見つめる乾。
いつも飄々としている癖に、変なところで他人のことをよく見ている。

あなた
・・・よくある女同士の諍いだよ
ini
ふーん?
あなた
ってか、乾ってエスパーなの?
私隠してたつもりだったんだけど
ini
んー、エスパーかもね
あなた
・・・は?


自分から変なことを口走った癖に、乾のあまりにもあっさりした返答に変な声が出た。

ini
あ、でも
テレパシーは使えないみたいなんだよね
あなた
ん?え?
ごめん、どういう事?



私の上をいく素っ頓狂な言葉に首を傾げていると、乾は何食わぬ顔でテーブルに頬杖をついた。


ini
あなたにずっと送ってるんだけど
ini
テレパシー



その一言で、一瞬空気が少しだけ変わった気がした。




店内には洋楽が流れ、周りの席から話し声もするのに、空間か切り取られたような、そんな不思議な感覚。


私がポカンとした顔で反応に困っていると、乾は少し笑いながら話し始める。



ini
まず前提としてあなたの人間関係の話ね

あなたの友達には好きな先輩がいるんだけど、その先輩に何故かあなたが気に入られちゃってて、変に誤解されてる
ini
そのせいで、
友達から敵対視されてしまってる
ini
ここまで合ってる?


どこから仕入れてきたんだと感心する程の正確な情報。
私は驚きつつも頷いた。

ini
ん。
で、こっからが大切なんだけど
ini
俺は俺で、あなたが他の男・・・
まぁ、今でいうとその先輩なんだけど

そいつと話してるの嫌だなーって思うし
ini
あと、
連絡来なくなるとめっちゃ気になるし
ini
それと、
会えない日が続くと調子狂うなーって


淡々と喋っているのに、一つ一つの言葉の威力が凄い。
心臓をずっと何かに掴まれている気分。



ini
・・・ここまで言っても伝わらない?
あなた
あ、えーと・・・
ini
ずっとテレパシー送ってんだけどな





自惚れじゃなければ、きっとそういう事。

だけどもし間違ってた時、勘違いもいいところ。



どうしよう、どうしよう。
なんて言えば正解なんだと、自問自答していると




ini
あなた?
あなた
っ・・・何?



私の顔を指差して、へらっと笑う乾。

ini
その表情さ、
俺の気持ちが伝わったって事で良い?




じわりと熱が広がって、耳の先まで火照っていく。
今の私は、見なくても分かるくらい赤くなっている。



何か言おうとしても上手く声にならず、ただ小さく頷く事しか出来なかった。



















▫️あとがき▫️

色々と忙しすぎて全然小説書けてなかったので、リハビリのつもりで書きました。

M!LKの『テレパシー』かわいい曲で好きです。


プリ小説オーディオドラマ