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改札を抜けると夜の空気はまだ冷たく、ぽつりと零れた言葉で息がうっすら白く浮かぶ。
駅前のロータリーは人影がまばらで、コンビニの明かりだけがやけに明るく見える。
期待半分でスマホを取り出したけれど、画面は静かなままで、着信の通知はない。
東京にいる乾と、遠距離になって半年。
最初の頃は毎日電話していたのに、最近はお互い仕事が忙しくて週に一回話せればいい方。
寂しくないって言えば嘘になる。
でも素直に気持ちを伝えたらきっと乾を困らせる。
都内の大学に通っていた学生時代が、なんだかずいぶん昔のことのように思う。
家庭の事情で就職は地元に戻ったけれど、遠距離がこんなに寂しいものだとは思っていなかった。
だから私は電話をする時、なるべく明るい声で「元気だよ」とか「ちゃんとご飯食べてね」なんていつも同じような事ばかり話してた。
ぼんやりそんなことを考えながら、家の方向へ向かい歩き始めると、ロータリーの少し離れたベンチに座っている派手髪に似合わないスーツを着ている男の人が視界に入る。
その人はどうにも見覚えがあるのだけど、こんな時間にこんな場所にいるはずがない人で・・・
「まさか」と半信半疑で近付いてみる。
私の足音に気付いたその人は、ぱっと顔を上げて、どこか照れくさそうに笑いながら、
数秒、そのまま見つめ合う。
頭が追いつかない。
だって今日、電話もしてない。
来るなんて一言も聞いてない。
私がやっと言葉を発すると、乾はゆっくりと立ち上がりいつものちょっと偉そうな表情でそう言った。
そして、悔しいが・・・・・・図星である。
その一言で、
溜め込んでた色んな感情が一気に込み上げてきた。
寂しかったことも、
会いたかったことも、
電話が来なくて少し落ち込んだ日も、
全部、急に我慢できなくなってしまう。
気付けば私は乾のところまで駆け寄っていて、そのまま彼の胸に顔を埋めてしまっていた。
乾は少しだけ黙る。
それから私の頭に手を乗せて、静かに言った。
その言葉が聞こえた瞬間、涙が止まらなくなった。
スーツ姿の派手髪の乾と、泣いている私。
他人が見たら相当変なカップルに見えたと思う。
それでも、久しぶりに感じた乾の温もりとか匂いとか直接脳内に響く低い声とかそういうの全部で、周りの目なんてどうでもよくなった。
胸に顔を押し付けたまま、くぐもった声でそう言うと、乾が少しだけ笑った気がした。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。