曲が始まると、私とRMさんは向き合って一礼する。その姿と仕草も美しい。
彼の左手がするっと私の腰に回されて、ぐっと距離が近づく。反対の手は優しくとられ、軽く握られた。思ったより距離が近く彼の匂いと体温だけを感じて、鼓動が聞こえていないか心配なほどドキドキする。顔も真っ赤になっているだろう。
慣れた様子の彼に対して私はぎこちなく、握られていない方の手を彼の肩に乗せた。
思い切って顔を見上げてみると、真剣な瞳で彼が私を見つめている。それにまた心臓が破裂しそうになった。

頭上からの突然の心地よい低音ボイスに驚いて、彼の唇と口元のほくろをちらちらと見る。
一瞬彼が何のつもりでそう言ったのか分からなかった。が、私に教えてくれるということは…距離を縮めてもいい、ということだろうか。
2人は音楽に乗ってゆっくりと動き始める。
彼のエスコートは丁寧で、初心者の私でもついていけそうだ。
思いがけない言葉だった。期待と不安が混ざったような顔で、こちらをうかがうように彼は私にそう言う。
それは…私と親しくなりたいという意思だと受け取ってもいいの?
少しの間彼の動きについていくだけで、何も言えなかった。
私が片手を離し距離をとって大きくターンした後 彼の腕の中に戻ってくるとやっと言葉を発した。
少し緊張している風だった彼の表情が和らぐ。
その言葉と表情が、すごく嬉しくて。
私も微笑んで言った。
彼は少し目を見張ってから、これ以上ないくらいの笑顔を浮かべる。
2人の距離がさっきよりもぐっと近づいた気がした。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。