あなたさんが現れると、ヒョン達がいっせいに嬉々として話し出す。ナムジュニヒョンに関しては距離感がおかしいし。
その様子を見ているだけでなんとなくイラッとした。
悶々としていると、いつの間にか黙りこんでしまっていたらしい。
テヒョニヒョンに促されたけど、まっすぐなあなたさんの瞳をなぜか見られなくて、愛想なく返してしまった。
彼女の反応は他のヒョン達に対してと変わらなかったけど、きっと警戒されてしまっただろう。
若干後悔していると、あからさまにナムジュニヒョンがあなたさんに近づいていちゃつき始めた。それに、あなたさんも満更でもなさそうだ。
アイドルとしてデビューを控えているというのに、それにヒョンはリーダーなのに。女の子にこんなに近づくなんて、何を考えているんだ。それに応えているあなたさんも、見ていられない。
ムカつきが止まらなくなって、気づいたらトゲを含む言葉を2人に投げていた。
周りのヒョン達が驚いているのを感じたが、当のナムジュニヒョンは瞼をぴくりとだけ動かして俺を見つめる。
_今はまだ。
ヒョンの言葉の後にそう続いている気がして、でもそう言われたらもう何も言えなくて。
ちらっとあなたさんの顔を見たけど、彼女が何を考えているのかは分からなかった。
唐突にテヒョニヒョンが声を上げる。指さす方に視線をやると、暗くて見えにくいがここから先に道が続いているようだった。
ヒョンはわくわくしているとき、分かりやすく目が輝く。その普段通りの様子に、少し和んだ。
ジミニヒョンの言葉で、みんなでぞろぞろ動き出す。
綺麗に整えられた木々に囲まれた、迷路のような真っ暗の道は、よく見ると足元を照らす洒落たランタンが等間隔に置かれていた。オレンジ色のぼんやりした光と、たまに姿を現す彫像も相まって幻想的な雰囲気だ。
みんなが話す輪になんとなく入れないでいると、歩く俺の横にジンヒョンが並んできて、肩を組まれる。
ただ、二人を見ると胸がジリジリした感覚になる。
はっとしてジンヒョンの顔を見る。
気まずくて、あなたさんに目を向ける。相変わらずナムジュニヒョンがしっかり隣にいるので、自分でも眉間に皺が寄るのが分かった。
これは、果たして仲良くなりたいという気持ちで合っているのだろうか。モヤモヤするばかりで、明確な答えは無い。が、
どうしようもなく、彼女が気になることは疑いようの無い事実だ。
実は話を聞いていたらしいユンギヒョンがそんなことを急に言い出すので慌てた。
口角をくいっと上げて、ヒョンは楽しそうに笑いながら俺たちと離れてホソギヒョンの方に近づいて行った。
…完全にからかわれている。
そう思うとこれまでビクビクしていた自分がなんだか急に馬鹿らしくなってきて、やってやろうじゃないかという勇気まで湧いてきた。
ナムジュニヒョンと会話が途切れたタイミングを見計らって、あなたさんに声をかける。
あなたさんが振り返って不思議そうに言う。
そりゃそうだろう、さっきまで不機嫌丸出しだった人が急に話しかけてきたのだ。
ああ、そういえばまだ俺だけタメ口にしてなかったな。了承を得られるまで同い年相手でも敬語を崩さない礼儀正しさが素敵だと思った。
恐る恐るそう伝えてみると、彼女の顔がぱっと明るくなる。その様子がまるで花が優しくほころぶようで、キュンとした。
満面の笑みでそう言われると鼓動がうるさい。かわいい人だと、素直にそう思って頬が緩んだ。
他のヒョン達より出遅れたぶん、思い切ってまだ誰も提案していなかったことを伝えてみる。
彼女はニコニコで自分のスマホを取り出す。華奢な細い指が、液晶をなぞった。
韓国でメッセージアプリといえばカカオトークだけど日本では違うらしく、あなたに新しくアプリを入れてもらう。
わざわざ俺のために…と小さな喜びにひたっているところ、横でやりとりをずっと見ていたナムジュニヒョンが言った。
彼女と連絡先を交換したのは俺だけだ、という小さな優越感は一瞬で終わったが、あなたのカカオトークに1番最初に登録されるのは自分だというだけで満足だ。
話を聞きつけた他のメンバーも集まってきて、結局彼女は7人全員と連絡先を交換したらしい。
全員登録し終わった後、あなたはスマホを嬉しそうに眺めながら、
なんてかわいらしい笑顔で言うもんだから、俺たちはそれぞれときめきに愛しさに尊さに、色んな感情を持ったことは間違いない。




















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!