第5話

初対面
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2021/04/21 13:32

THE RAMPAGEが結成されて初めてのレコーディングの日。


まだ幼い顔立ちのボーカル3人。

緊張した面持ちでやって来たスタジオ。
スタッフ
スタッフ
ご紹介しますね。
Lightningをお作りになったあなたさんです。
(なまえ)
あなた
初めまして。
あなたです(笑)
ニッコリと含みのない笑顔。
RIKU
RIKU
青山陸です。
北人
北人
吉野北人です。
壱馬
壱馬
川村壱馬…です。
自己紹介さえ硬い。

クスッと笑うあなた。
(なまえ)
あなた
緊張してるのに来てごめんなさいね(笑)
レコーディングには必ず立ち合わせてもらってるの。
RIKU
RIKU
よろしくお願いします。
揃って頭を下げた。
(なまえ)
あなた
リードボーカルは…。
壱馬
壱馬
あ…俺です…。
(なまえ)
あなた
じゃ、あなたから。
ブースの中へ促される。

ヘッドホンをして集音器の前に立つ壱馬。


小窓からブースの外へ視線を移した。


あれが…

Lightningを作った人…?


あんな細くて…

華奢な女が…?


触れたら…

壊れてしまいそうなのに…


曲とあなたのイメージのギャップ。


綺麗な…

人だな…


フワッと胸に沸く甘酸っぱい感情。

それを断ち切るように
スタッフ
スタッフ
では、川村さん始めます。
スタッフの声。


細い腕を組んで、穏やかだった笑みをスーッと引っ込めていくあなた。


流れ出す音楽。

しょっぱなから身体に響く重低音に、身体を揺らす壱馬。

スゥ…と息を吸って低音ボイスを吐き出した。


ここから始まるんだ…


聞け…

俺の歌を… 


登坂広臣の弟じゃなくて…

川村壱馬の歌を聞け…


音のひとつも外さない安定感。
スタッフ
スタッフ
いいですね(笑)
満足そうな顔のスタッフ。

独り言のように呟いたのとほぼ同時だった。
(なまえ)
あなた
止めて貰えますか?
スタッフ
スタッフ
え?
あなたを不思議そうに見上げる。
(なまえ)
あなた
止めてください。
気持ちよく歌っていたのに、突然ぶち切られた音。

驚いてブースの外を見る壱馬に放った一言。
(なまえ)
あなた
もう一度。初めから。
壱馬
壱馬
えっ……。
さすがに陸と北人も驚いた顔を見合わせた。


再び流れ出す音楽。

気を取り直してさっきのように息を吸い込んで歌い出す。


でもあなたは、その後も途中で音を容赦なく止めた。

その度初めから歌い直しを求められる。
壱馬
壱馬
なんやねんっ!さっきから!
我慢出来なかった壱馬。

ブースの中で噛み付いた。

少しも動じないあなたはサラッと言い放つ。
(なまえ)
あなた
自分で気付けないの?
壱馬
壱馬
はっ!?ちゃんと歌えとるやろ!
その一言に
(なまえ)
あなた
吉野くん。代わって。
ため息をついてそう言った。


戸惑った顔で陸を見れば小さく頷かれる。

不貞腐れた顔でブースから出てくる壱馬と入れ替わった。
(なまえ)
あなた
吉野くん、いい?
北人
北人
はい。
流れ出す音楽。

北人が歌い始めても音が止まることは無い。


腕を組んで見せるのは、壱馬の時と同じ顔。

小さな背中を見つめて壱馬は唇をキュッと噛んだ。


何がちゃうねん…

北人も止めろや…

なんで俺だけやねん…



その日。

壱馬がOKを貰ったのは開始から8時間後だった。

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