第53話

胸騒ぎ
2,692
2021/05/06 23:45

東京ドームの出入口ゲートのディスプレイ。

電光掲示板に映し出されていた。



"三代目JSB 東京公演 3days"



既に会場の外では多くのファンが集まっていた。



それぞれルーティンをこなして集まる控え室。


臣は真っ先に携帯を掴む。

電話もLINEも着信した履歴はない。



少しだけガッカリした気持ち。

胸に湧いた。
隆二
隆二
ねぇ、あなた見に来ないの?
臣
え?
あぁ…どうかな…。
健二郎
健二郎
なんや、そういう話せぇへんのん?
臣
んー…仕事の話あんましないからなぁ…。



その日の朝。

臣
あなた!
遅れそうだから行くね!

玄関で靴を履きながら声をかける。

パタパタとスリッパを引きずる音が近付いてくる。
(なまえ)
あなた
もう…早いなら早いって言ってくれたらいいのに…。
臣
ごめんごめん(笑)

臣は腕を伸ばす。

小さな身体がおさまった。
臣
今日からドームだから。
帰りは少し遅くなるよ。
(なまえ)
あなた
うん。頑張ってね(笑)

あなたが顔をあげれば見つめ合う。
臣
して…。
(なまえ)
あなた
え?
臣
キス…。

ポッとあなたの頬が赤くなるのが分かる。
臣
遅れちゃうから……早く、して…//

唇を軽く結んでぬらすと、チュッと触れるだけの可愛いキスを送る。

その後に来る深いキス。


そのまま押し倒されそうなくらいの勢い。

唇が離れる時のリップ音。
臣
んー…ヤバい…。
(なまえ)
あなた
え…何が…?
臣
抱きたくなっちゃった(笑)
(なまえ)
あなた
ちょっ…//

あなたの反応にクスッと笑う。
臣
夜のお楽しみにするよ。
今日は遅れられないからね(笑)

頭をポンと軽く叩く。
臣
じゃ。行ってきます(笑)
(なまえ)
あなた
気を付けて。

笑顔で手を振るあなたに見送られた。



そう言えば…

あなた…


三代目のライブ見に来たこと…

あったっけな…



確かに幸せな朝だったはずなのに、妙な胸騒ぎ。



手にしていた携帯。

あなたの番号をコールすると耳に運ぶ。



プルルル…



あなたの寝室。

ベッドの上で震え出す携帯。
(なまえ)
あなた
んっ…んッ!アッ!アッ!
壱馬
壱馬
またィくんか?
なぁ?何度目や?(笑)
(なまえ)
あなた
やっ!ダメッ!かず…まッ!!
壱馬
壱馬
ここやろ?あ?
(なまえ)
あなた
イヤッ!ダメぇッ!
壱馬
壱馬
逃げんな。
ィけやッ!ほらッ!(笑)

浮いてしまう腰を強引に引き戻した。



ソファで壱馬にたっぷり愛されているあなたの甘い声がかき消す。

着信のバイブ音。


応答されなくてコールをやめる臣。


何で出ない…?

何してる…?

どこ行ってる…?


少しの苛立ちの中再び鳴らす。

それでも、あなたの声が応答してくれることは無かった。

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