東京ドームの出入口ゲートのディスプレイ。
電光掲示板に映し出されていた。
"三代目JSB 東京公演 3days"
既に会場の外では多くのファンが集まっていた。
それぞれルーティンをこなして集まる控え室。
臣は真っ先に携帯を掴む。
電話もLINEも着信した履歴はない。
少しだけガッカリした気持ち。
胸に湧いた。
その日の朝。
玄関で靴を履きながら声をかける。
パタパタとスリッパを引きずる音が近付いてくる。
臣は腕を伸ばす。
小さな身体がおさまった。
あなたが顔をあげれば見つめ合う。
ポッとあなたの頬が赤くなるのが分かる。
唇を軽く結んでぬらすと、チュッと触れるだけの可愛いキスを送る。
その後に来る深いキス。
そのまま押し倒されそうなくらいの勢い。
唇が離れる時のリップ音。
あなたの反応にクスッと笑う。
頭をポンと軽く叩く。
笑顔で手を振るあなたに見送られた。
そう言えば…
あなた…
三代目のライブ見に来たこと…
あったっけな…
確かに幸せな朝だったはずなのに、妙な胸騒ぎ。
手にしていた携帯。
あなたの番号をコールすると耳に運ぶ。
プルルル…
あなたの寝室。
ベッドの上で震え出す携帯。
浮いてしまう腰を強引に引き戻した。
ソファで壱馬にたっぷり愛されているあなたの甘い声がかき消す。
着信のバイブ音。
応答されなくてコールをやめる臣。
何で出ない…?
何してる…?
どこ行ってる…?
少しの苛立ちの中再び鳴らす。
それでも、あなたの声が応答してくれることは無かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。