第49話

取れない電話
2,207
2021/05/26 03:05

部屋の中に流れるピアノの音色。

指先が止まれば音も止まる。



壱馬…

大丈夫かな…


ちゃんと…

病院行ったのかな…



考えてしまう。

壱馬のこと。



ずっと呼んでた…

私の事…



頭から離れない。

熱にうなされながらあなたを呼ぶ壱馬の声が。


心臓の音が大きくなっていく気がして、胸に手を当てる。



騒がないで…

北人に言われたから行っただけ…

それだけよ…



自分自身に言い聞かせる。

何度も。
臣
ただいま(笑)

ヒョコッと顔を覗かせてきた臣。

少し照れくさそうに笑った。
(なまえ)
あなた
臣。

ピアノの蓋を閉めると立ち上がる。

すぐに気付いた。

足元のスーツケースに。
(なまえ)
あなた
どこか行くの?
臣
部屋から服とかとりあえずの物を持ってきた(笑)
(なまえ)
あなた
え…?
臣
ここじゃ、あっちの荷物は入らないだろ?
だから新しい部屋を探しに行かないか?

首筋を撫でる大きな手。

あなたを壁においつめて、色気のある視線で見つめる。
臣
気が変わった…なんて言わないでよ…?
(なまえ)
あなた
臣…。
臣
ん?
(なまえ)
あなた
家に…帰ったのよね…?
臣
え?
まぁ…荷物取りに行ったからね?
どうして?

壱馬の様子…

どうだった…?


喉元まで出ている言葉。

臣の親指がスーッと唇を撫でる。
臣
壱馬の事…考えたか…?
(なまえ)
あなた
えっ…違っ…んっ…//

一気に重なった唇。

少し強ばっても強引にこじ開けてくる。


リップ音を立てながら絡める舌先。


臣の身体に添える小さな手。

手首を掴まれると、壁に押し付けられた。
(なまえ)
あなた
んっ…ふっ…お…みっ……。

服の裾から大きな手が潜り込んで身体を撫でる。

ピクンと反応する様を、その手に感じた。



たまらない…

俺を感じてるこの反応…


もっと虐めたくなる…


もっと…

欲しくなる…


プルルル…



ピアノの上で鳴り出したあなたの携帯。

ハッとする。
(なまえ)
あなた
臣っ…電話がっ…。

取りに行きたいあなたを離さない。
臣
ダメ……。
(なまえ)
あなた
でもっ…。

スカートの裾を捲りあげて指先を下着に引っかけた。
臣
集中…して…。
(なまえ)
あなた
んっ…ァッ…んアッ…。
臣
もっと…。
(なまえ)
あなた
やっ…んっ…お…みっ……ぁんッ…。
臣
もっとだよ…。

もっと感じて…

解放して…


気持ちいい…

欲しいと思う気持ち…


俺でしか満足出来なくしてあげるから…



暫く鳴り続けていた携帯の画面には、壱馬の名前が表示されていた。

プリ小説オーディオドラマ