第10話

慰藉
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2020/05/31 04:39
私たちは近くの公園に行きベンチに座った。



木全君は何も言ってこない。
私が話すのを待っているのだろうか。
私はぽつりぽつりと話し始める。


あなた「私サッカー部のマネージャーなんだけど


部長のことがずっと好きで


でも今日その部長が先輩マネージャーと付き合ったって聞いて」
翔也「そう、なんだ…」
あなた「まあわかってたことなんだけどね」
私はその後のことも話した。
あなた「それで部活中気分下がってたら汐恩が声かけてくれて」
木全君は黙って私の話を聞いてくれている。
あなた「ハグされて、俺のこと好きになれって」
翔也「えっ」
木全君は少し驚いたようだった。
あなた「でも私びっくりしちゃって、汐恩のこと突き放して逃げて来ちゃったの」
翔也「わぁ…」
あなた「私どうすればよかったんだろ」

そう言うとまた涙が出てきた。
さっきあんなに泣いたのに。

しかもほとんど喋ったことない相手の前で。

恥ずかしくて泣き止みたいのに涙は止まらない。
どうにかハンカチを出そうとしたが、着替えた時に鞄の奥底にしまったことを思い出した。
ティッシュは…

今日ちょうど最後の1枚を使ってしまった。

仕方なく手で涙を拭っていると木全君がポケットからハンカチを取り出した。
翔也「よかったら使いますか?」
ありがたい、けど今はもう夜になる。
1日使ったハンカチで涙を拭くのは少し抵抗があるなあ。
そんな考えが一瞬頭をよぎる。
翔也「あっ今日学校遅れそうで、急いでハンカチ取ったら2枚で…これは未使用の方」
慌ててそう言う木全君がおかしくて少し笑ってしまった。
あなた「ありがとう」
木全君からハンカチを受け取って涙を拭くと、優しい香りがした。
翔也「なんて言えばいいかわかんないけど、汐恩はあなたさんのこと大切にしてるからちゃんと話せば大丈夫だと思う」

あなた「うん」

翔也「ごめん、僕慰めるのあんまり得意じゃなくて」

あなた「いや、話聞いてくれてありがとう」

翔也「全然」

あなた「ハンカチ洗って返すね」

翔也「うん。 帰れそう?」

あなた「大丈夫」

翔也「じゃあ帰ろっか」
私と木全君は並んで歩き出した。
2人で電車に乗って隣に座るとすごく安心した。
こんなにすぐに心を許せているのが不思議で仕方なかった。
その安心と泣き疲れたせいで私はつい寝てしまった。

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