第13話

エピローグ
20
2024/03/21 06:29
時刻は3時過ぎ。

私は冷たくなったリイカをずっと抱きしめていた。

サラサラした髪をそっと撫でると、私の手に抜けた髪が絡む。

もう蛆も湧いてきていた。



私のせいで誰かが消えたのは、これが初めてじゃない。

それでも、誰かが死んでいくのは怖い。



(………あの時の…。)



リイカが最後に見せた、あの表情。

私が見てきた中で、1番幸せそうな愛おしいものを見るような表情だった。

それはもう、声が出ないほど。

あの時、リイカは何を思っていたのだろう。

私を憎んだだろうか。

無理もない。

私のせいで、リイカは死んだのだ。

私と関わらなければ、リイカは死ぬことはなかった。

あの時、「関わるな」と突き放していれば、こんな事にはならずに済んだ。

私が、リイカを殺したのだ。



「……いつまで、そうやってるつもりだ?」



知らない声だった。

顔を上げると、断頭台の奥に背の低い子が立っている。

顔はベタベタした髪で隠れていて、よく見えない。



「……だれ?」



泣いていたせいか、絞り出した声は枯れてしまっていた。

そんな事も気にせず、目の前の子は唯一見える口角を上げる。



「君の先祖だよ。名無しって呼ばれてる。」

「…せんぞ?」

「君と血が繋がってる人のこと。」



名無しは断頭台を跨り、私の隣まで来る。

私はポツリ、と独り言より小さな声で呟いた。



「……私、どうすれば良かったのかな。」

「君がどうしようと、こうなる未来は変わらなかっただろうさ。」

「…リイカを、守れたのかな。」

「異変に気づけていたら、もしかしたらな。」

「私、生きてていいのかな。」

「……。」



「ねぇ」と私は名無しの方を見る。

僅かに、髪の隙間から瞳孔が見えた。



「私を、殺してほしいの。」



私がその言葉を口にすると、名無しは笑みを浮かべた。



「それはまだできない。」

「……どうして?」

「君にはまだ、やるべき事があるからね。」



名無しはそう言って断頭台から離れた。

私は名無しの背中を目で追っている。

やがてコチラを振り向くと、一言寄せて姿を消した。



「また来るよ。9人目。」

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