第12話

愛してる
25
2024/03/21 06:29
気を失った私は、気がつくと断頭台の前に立っていた。

悪魔の子関連で処刑される時、これを使うと聞いてはいたが、まさか本当だったとは。

処刑させる少し前だと言うのに、私はやけに落ち着いていた。



(……あーあ。死ぬ前に、ユキちゃんと一緒にお出かけしたかっなぁ。)



ユキちゃんが町の人に見つかるのを避けるため、今まであの花畑以外で遊んだことは無かった。

こんな事になるなら、1回でもショッピングとか、普通のデートを一緒に楽しみたかった。



(……そんな事を考えても、もう手遅れか。)



1歩、足を踏み出したその時。



「リイカ!!!!!!!!!」



耳障りな雑音の中から、1層透き通った声が私の意識を現実まで引っ張ってきた。

声のした方を見れば、ユキちゃんがコチラに向かって人を押しながら走ってきている。



「……ユキちゃん。」



私のために、ここまで走ってきてくれたのか。

そう考えると、途端に愛おしさが込み上げ、同時に「死にたくない」という思考が脳に染み込む。

私は負けじと声を張り上げ、ユキちゃんの名前を呼んだ。



「ユキちゃん!!!」



ユキちゃんは私の声を聞くと、ハッと顔を上げこちらを見上げた。

その顔は腫れたり痣ができていたり、ここまで来るのにかなり暴力を受けてきたようだった。

それでも、ユキちゃんはまだ走るのを辞めない。



「リイカ!!!」



でも、

きっともう間に合わない。

二度とユキちゃんに会うことは出来ない。

それなら、

それなら、ユキちゃんの記憶に強く残りたい。



「……ユキちゃん。」



もう感情を抑える必要はなくなった。

私は抑えていた表情筋も全て解放し、ありったけの愛を込める。



「愛してる。」



14年の私の生涯は、ここで幕を閉じたのだった。

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