「じゃじゃーん!見て見て花冠!」
あの日から、私たちはあの花畑で一緒に遊んでいた。
私が気まぐれで作った花冠をユキちゃんの頭に乗せると、ユキちゃんは興味深そうにそれをマジマジと見つめている。
「きれい……。これ、リイカが作ったの?」
「うん!ユキちゃん、花冠見るのは初めて?」
私がそう問いかければ、小さく頷いてくれる。
更に作りたいかと続けて問えば、ユキちゃんは目を輝かせ次は大きく頷いた。
「よし、わかった!私に任せて!」
なんだか頼られてるのが嬉しくなり、私は胸を叩きながら声を上げる。
そして、いざ教えてみると、ユキちゃんはすぐにコツを掴んで手際良く作れるようになっていた。
もしかしたら、ユキちゃんは凄く要領のいい子なんじゃないかと考えてしまうほどだ。
だとしたら、普通の家庭に生まれていたらきっと、成績優秀ないい子に育っていただろう。
「できた〜!」
やがて完成した花冠は、初めてなのにとても綺麗に仕上がっていた。
私はそれに嬉しくなり、自分の事のように喜んでしまう。
「はい、リイカ!あげる!」
「え?」
ユキちゃんの言葉に困惑してると、頭の方から乾いたような音が聞こえる。
そっと頭に触れると、草が手に当たった。
どうやら、私の頭に花冠が乗ってるようだ。
「い、いいの?」
「うん!だって、リイカ私に花かんむりくれたでしょ?」
ユキちゃんは可愛い笑顔を浮かべながら、座り込んでる私と視線を合わせてくる。
「お返しだよ」なんて微笑むユキちゃん。
私は胸が絞れてしまうほど痛む感覚を覚え、それを紛らわすようにユキちゃんを抱きしめた。
「ありがと!大事にする!」
その言葉に、照れたような笑い声が返ってくる。
あぁ、可愛い。
溢れ出る想いをグッと堪えるために、私は抱き締める力を強くした。
・
夕方になるとユキちゃんは家に帰り、私は町へ出かける。
ユキちゃんが外に出てから私の家に来るまでに、手を出した人達に罰を与えるためだ。
悪い子には罰を与える。
当たり前の社会の常識。
今日は私と年齢の近い女の子が2人だった。
どちらも、魂の能力は殺傷性の高いものになる。
「…流石に、連日になると疲れてきちゃうな。」
10分ほどで動かなくなった死体から、魂の塊を手に取ってそれを砕く。
こうすると、もう何をしても生き返らないんだと、先日学校で知った。
予防線を張っておいて損は無い。
「……帰ろ。」
家に向かう途中、何か人の気配を感じた。
人数は1人だけ。
足を止めて後ろを振り向いたが、そこに人はいない。
「誰?」
声を上げても返事は帰って来ず、風の吹く音が微かに聞こえるだけだ。
やがて人の気配が無くなると、私は首を傾げながら帰宅した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!