第5話

守るもの
37
2024/03/17 10:57
コツ、コツと私の靴がコンクリートと擦れる。

ユキちゃんが帰ってから、私は薄暗くなった町を1人で歩いていた。

目標は3人。

今日、ユキちゃんに話しかけていたあの平民たちだ。

あの年齢的に、まだ外を歩き回ってるはずだ。



「___それで、__」


「_まえ____やっ__」



正面からやって来たのは、私がちょうど探していた人達。

一か八か賭けてみるが、背丈や年齢の差から反撃を食らうかもしれない。

だが、今はそれもどうでも良い。



「君たち。」



私が空気を揺らすと、彼らはコチラに気づいたようで、6つの目を目が合う。

少しの間の沈黙を破ったのは、真ん中にいる人だ。



「………あぁ?んだよ、あんとこのお嬢様じゃねーか。」



向こうは私のことを知ってるようだった。

両隣の人達は口々に「知り合い?」等と質問を投げかけるが、どうやら真ん中の彼の父親の社長が、私のお父様らしい。

これは少し、未来のことを考えると心が傷んでしまいそうだ。



「んで、嬢様は俺らに何か用か?」

「えぇ。何となく予想はできるでしょう?」



私がそう言って3人をそれぞれ一瞥するが、彼らは心当たりがないようで、キョトンとしたアホ面を浮かべていた。

私はそんな彼らを見て、思わずため息が零れる。



「……分からないなら、もういい。」



私は事前に用意していた物のスイッチを入れると、激しい光の明滅と共に、電気の流れる音がする。

それを見た彼らは、顔を青ざめ逃げ出そうとした。



「悪には、罰を。」



勿論、そんな彼らを私は逃がしはしない。

彼らの身長近くまで飛び上がり、私は右端の人に強く電気の流れるスタンガンを押し付けた。

3秒ほど押し続けると、気絶してしまったようでその場に倒れ込んでしまう。

そこを狙って、私は深い刺傷を幾つか作らせた。



「1人。」

「てめ、っ!!」



私は倒れた彼の頭を踏み台にして、左端の彼に襲いかかる。

威勢は良いように感じれたが、体を押せばアッサリ倒れてしまった。

どうしてこんなにもつまらないのか。

この現状に落胆しながらも、私はその人の首に向かって勢いよく腕を振るった。

すると、これが驚いたことに頭ごと落ちてしまったのだ。



(……この力、想像以上に強力みたい。)



正直、魂の力を甘く見ていた。

ここまで強くなるとは思ってもいなかった。



(……これなら……。)



嬉しくて、私は無意識のうちに口角が上がってしまう。

胸が高まり、今のこの事実に歓喜してしまう。



「…っ、ははっ!」




抑えていた笑い声が漏れ出て、静かな住宅街に響く。

私は最後の一人に目を向けた。

私のお父様の下で働く人の息子。

でも、その子がどんな人であろうと、ユキちゃんに手を出すのは許されないこと。



「これなら…っ!これなら!ユキちゃんを守れる!」



勢いに任せてしまった結果、返り血がお気に入りの服に付いてしまった。

「あーあ」と残念そうな声色で呟くと、汚れ手で汚れた箇所を拭う。

だが、その汚れは広がるばかりで消える気配は一切ない。



「……まいっか。また新しいの買えばいいし。」



そうだ。ユキちゃんの新しい服も買おう。

あの綺麗なユキちゃんのことだ。

きっと、どんな服でも似合うに決まってる。



「水色もいいけど、ピンクも合いそうだよねぇ。」



どんな服を買おうか、私は想像を膨らませながら家に帰った。

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