コツ、コツと私の靴がコンクリートと擦れる。
ユキちゃんが帰ってから、私は薄暗くなった町を1人で歩いていた。
目標は3人。
今日、ユキちゃんに話しかけていたあの平民たちだ。
あの年齢的に、まだ外を歩き回ってるはずだ。
「___それで、__」
「_まえ____やっ__」
正面からやって来たのは、私がちょうど探していた人達。
一か八か賭けてみるが、背丈や年齢の差から反撃を食らうかもしれない。
だが、今はそれもどうでも良い。
「君たち。」
私が空気を揺らすと、彼らはコチラに気づいたようで、6つの目を目が合う。
少しの間の沈黙を破ったのは、真ん中にいる人だ。
「………あぁ?んだよ、あんとこのお嬢様じゃねーか。」
向こうは私のことを知ってるようだった。
両隣の人達は口々に「知り合い?」等と質問を投げかけるが、どうやら真ん中の彼の父親の社長が、私のお父様らしい。
これは少し、未来のことを考えると心が傷んでしまいそうだ。
「んで、嬢様は俺らに何か用か?」
「えぇ。何となく予想はできるでしょう?」
私がそう言って3人をそれぞれ一瞥するが、彼らは心当たりがないようで、キョトンとしたアホ面を浮かべていた。
私はそんな彼らを見て、思わずため息が零れる。
「……分からないなら、もういい。」
私は事前に用意していた物のスイッチを入れると、激しい光の明滅と共に、電気の流れる音がする。
それを見た彼らは、顔を青ざめ逃げ出そうとした。
「悪には、罰を。」
勿論、そんな彼らを私は逃がしはしない。
彼らの身長近くまで飛び上がり、私は右端の人に強く電気の流れるスタンガンを押し付けた。
3秒ほど押し続けると、気絶してしまったようでその場に倒れ込んでしまう。
そこを狙って、私は深い刺傷を幾つか作らせた。
「1人。」
「てめ、っ!!」
私は倒れた彼の頭を踏み台にして、左端の彼に襲いかかる。
威勢は良いように感じれたが、体を押せばアッサリ倒れてしまった。
どうしてこんなにもつまらないのか。
この現状に落胆しながらも、私はその人の首に向かって勢いよく腕を振るった。
すると、これが驚いたことに頭ごと落ちてしまったのだ。
(……この力、想像以上に強力みたい。)
正直、魂の力を甘く見ていた。
ここまで強くなるとは思ってもいなかった。
(……これなら……。)
嬉しくて、私は無意識のうちに口角が上がってしまう。
胸が高まり、今のこの事実に歓喜してしまう。
「…っ、ははっ!」
抑えていた笑い声が漏れ出て、静かな住宅街に響く。
私は最後の一人に目を向けた。
私のお父様の下で働く人の息子。
でも、その子がどんな人であろうと、ユキちゃんに手を出すのは許されないこと。
「これなら…っ!これなら!ユキちゃんを守れる!」
勢いに任せてしまった結果、返り血がお気に入りの服に付いてしまった。
「あーあ」と残念そうな声色で呟くと、汚れ手で汚れた箇所を拭う。
だが、その汚れは広がるばかりで消える気配は一切ない。
「……まいっか。また新しいの買えばいいし。」
そうだ。ユキちゃんの新しい服も買おう。
あの綺麗なユキちゃんのことだ。
きっと、どんな服でも似合うに決まってる。
「水色もいいけど、ピンクも合いそうだよねぇ。」
どんな服を買おうか、私は想像を膨らませながら家に帰った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。