第5話

第四章『最初の推理』
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2025/09/20 12:00 更新
広場に沈黙が落ちた。
雪は容赦なく降り積もり、村を音ごと閉ざしている。
その中で、篠田悠真は口を開いた。
篠田悠真
……皆さん、まずは冷静に整理しましょう。
篠田悠真
二人の犠牲者はいずれも“喉を裂かれて殺されていた”。
篠田悠真
これは本当に“人狼の牙”によるものだと思いますか?
村人たちは互いに顔を見合わせた。
勇作が怒鳴る。
葛西勇作
じゃあ何だ!獣じゃないっていうのか!
悠真は頷いた。
篠田悠真
ええ。むしろ“人間の凶器”、たとえば鋭い刃物による切り傷に近い。
篠田悠真
そして古老の辰五郎さんも“鉄が擦れる音を聞いた”と証言している。
篠田悠真
つまり、人の手による犯行と考える方が自然です。
広場にざわめきが走った。
“人狼”の恐怖にすがっていた村人たちは、かえって落ち着きを失っていく。
悠真は続けた。
篠田悠真
さらにおかしいのは、目撃証言が一致していないことです。
・勇作さんは“黒い影を見た”といい、
・浜田さんは“足音を聞いた”といい、
・辰五郎さんは“鉄の音を聞いた”。
篠田悠真
三つの証言はそれぞれ食い違っている。
篠田悠真
ただ一つ共通しているのは――『獣の咆哮を誰も聞いていない』ことです
勇作が眉をひそめる。
葛西勇作
だが、俺は確かに影を……!
弓枝が怯えた声で遮った。
葛西弓枝
あなた、あの夜は外に出ていたの?
葛西弓枝
一晩中家にいたって言ったじゃない!
場が騒然とする。
勇作は言葉を失い、怒りに任せて拳を握りしめるが、その沈黙がかえって疑惑を深めた。
悠真はさらに切り込む。
篠田悠真
そして最後に。
美緒さんが語った“村長が誰かと口論していた”という証言。
これは大きな意味があります。
村長は人狼伝説を利用した“何か”に気づき、その相手と争っていたのではないでしょうか
村人たちは息を呑んだ。
篠田悠真
結論を言います。
――この事件は、人狼の仕業ではありません。
誰かが“人狼に見せかけた連続殺人”を行っているのです
その言葉は雪を割るように村人たちの心を打ち、やがて恐怖が新たな形に変わっていった。
“見えない獣”ではなく、すぐそばにいる“人間”への恐怖へと。

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