お桃と松乃は奉行に案内され、台所に入った。そこには先日武信たちの畑で見たときよりも凄惨な光景が広がっていた。台所女中は、入り口の方を向いて倒れていた。
奉行は背中の傷を見た。ちょうど、細身の刃物が刺さったくらいの傷だ。
お桃は遺体に声をかけた。しかし得られた返答は畑泥棒の遺体と同じものだった。
奉行は曇った目でお桃を見た。
お桃は首を傾げた。奉行は松乃の横ではっとした表情になった。
考えてもわからない。お桃はそれがどうかしたのかと尋ねた。
松乃は遺体を指さした。確かによく見るとこの遺体は抵抗したような跡が見られない。刺し傷がなければ突然倒れたように見える、ごくごく自然な体勢だった。
入り口以外に外と通じているところは、竈の上の窓だけだ。しかしそれは人が入れるほどの大きさはない。
松乃はお桃を見た。視界に柱が入った。
松乃は柱を指さした。釘か何かが刺さっていたような傷がある。
奉行は役人を呼び、遺体を外に運ばせようとした。その時、袂のあたりから金属がこすれる音がした。
役人の一人が袂を探り、中から巾着を取り出した。中には一朱金が数粒入っていた。
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!