窓の隙間から入る仄かな春の香り
夕陽の差し込む放課後の教室
机を丸くし、その上にお菓子を広げる
美しく幸せな青春の一幕だ
なんの不満も文句も無い放課後の1ページ
ただ1つの難点を挙げるのならば、
何故か開かなくなった教室の扉を如何にかしては欲しい
一緒に教室から出られなくなった友人にそう問い掛けてみる
どちらも微妙そうな顔でマトモな返事は望めそうに無いが
ガチャガチャとドアノブを捻るが反応は無い
ついでに電話の方も反応は無い
危険防止の為、教室の窓は必要以上には開かない
つまり、詰み
全員沈黙
なす術無し
と思えば、耳を劈く大きな音が響き渡った
「 1年A組に残ってる、愛澄未来さん、
符硯ゆうまさん、あなたさん。
もう貴方達だけですなの!早くホールに来るなの!! 」
試してみると確かに電話が繋がり
「迎えに行くなの!」と言われた。一先ず安心だろう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。