「やーーっば、もうお昼の時間じゃん。」
フラフラ村を歩き回るうちに時間はドンドンと過ぎていき、気が付けば、いつもならお昼ご飯を食べている時間になっていた。
村の端っこギリギリまで行っていたフラワーは、駆け足で家まで一直線に向かって行く。
やがて家の前まで辿り着くと、走っていた時の勢いのまま、乱暴にドアを開けた。
「ひゃー、まだセーフだよね?まだご飯できてないよね?」
キッチンにいるであろうスカイたちに聞こえるように、フラワーはわざと声を張りながらそう言う。
だが、その声は家の中の違和感と感じると共に、段々と小さくなっていった。
やけに静かな家の中では、食べ物のいい匂いも、調理中の物音もしない。
食材でも買いに行っているのか、とゆっくりリビングに向かうと、彼の視線はリビングにあるソファに釘付けになった。
「…もうちょっと声抑えてろ。」
ソファにいたのは、少し怪訝そうに眉をひそめるスカイ。
そして、スカイに体を預けながら眠っているアリス。
アリスの体には柔らかいブランケットがかけられており、心地よさそうに小さな寝息をたてている。
「姉貴寝ちゃったの?」
「あぁ。あったかいもん飲んだら眠くなったんだろ。」
ゆっくりフラワーがアリスに近付くと、机に置かれているコップが三つ目に入る。
一つはスカイが飲んだであろうカップ、もう二つは、ガラス製のコップと少し大きめの子供用のカップだ。
子供用のカップにはまだ半分ほどココアが残っていたが、もう冷めきってしまっている。
「コイツも、まだまだガキだな。」
ココアを一瞥したスカイは、優しい目線をアリスに向け、彼女の頭を撫でようとする。
だが、その手はフラワーに掴まれたことにより、宙に留まることとなった。
「…姉貴に触らないでくれる?」
そう言うフラワーの目は、まるで敵を見ているような鋭いものだった。
スカイを掴む手に力が加わると、彼の顔が僅かに歪む。
すると、スカイはフラワーの手を振り払い、そのまま振り払った手をソファの背もたれに乗せた。
その様子を見たフラワーは、アリスを抱き上げると二階へと上がっていく。
いつもアリスと寝ている寝室へ彼女を運ぶと、そのまま自分のベッドに腰かけた。
自分の足の上にアリスを座らせ、腕で彼女の体を支える。
そのまま両腕で抱き締めると、アリスの肩に自分の顔を埋めながらゆっくりと深呼吸をした。
「さいっあく…ほんと…。」
絞り出した声は寝ているアリスに届いていたが、何の反応をもらえることなく消えていった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。