重たい空気が部屋を支配する。
また、依頼だ。
次は誰を殺すんだろう。ぐるぐるとした感情が私に渦巻く。
私は上司に渡された紙を見る。今回のターゲットは2人のようだ。とても美形で、かっこいい人たちだった。殺すなんて勿体無いぐらいで、欲を言うなら彼らと友達になってみたい。
この役職を選んだ分、私には友達がいなかった。だからこそそう思うだろう。
1人じゃない分大変だけど断れもしない、私は手にナイフを持って歩き始める。
ターゲットは意外にもすぐに見つかった。中華街の真ん中で傘を刺しながら歩いている。今は周りに人がいるから、2人になったところが狙い目。
成功させないと意味がない。成功させないと帰ることができない。
私はバレないように追跡し始める。
…!
やっと路地裏に行ってくれた、!
私は意気揚々と彼らに奇襲を仕掛けようとする。
いや、仕掛けた筈だ。
ナイフが手から離れた。
いつもこんなことはない筈なのに、反撃された?
あり得ない。相手は気づいてなかったのに。
音を立てたくないから使いたくなかったけど隠し持っていた拳銃を取り出す。
上手く狙いが定まらなかった。その隙に相手に拳銃を跳ね飛ばされた。
何故?
もう一つのナイフも取り出したいが、時間がない。
結局私は拘束された。
「どうしましょうか、この子」
「警察に突き出してもいいが…どうするか?」
「震えていてかわいそうですし…引き取ってあげるのも手ですよね」
「いいや、こいつは俺らの命を取ろうとした奴だ。また殺されかけるかもしれないぞ」
「それもそうですねぇ…ふふ、貴方はどうなりたいですか?」
目の前のターゲット達はくすくすと笑いながら私に問いかける。
勿論生きていたい、だけど失敗したことがバレたら生きることすらままならない。
そこから導き出された答えは
『殺してくれ』
その一言だけだった。
「あらあら…そんなこと言われちゃったら困りますね」
「俺らは手を汚したくないからな」
「では、1つ提案しましょう」
「私達は貴方を引き取ります、貴方のことを組織から隠しましょう」
「今回で死んだ事にする。代わりに俺らに害を与えない」
「この条件で引き取ります。いいですか?」
私は頷いた。
だって失敗してしまったんだから。
がやがやとした音に包まれている中華街で手を繋いだ3人は家に帰る。もう上司には会わないし会えないけれど、彼らと一緒ならまだ生きていられる。友達を通り越してしまったけれど幸せなのかもしれない。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!