第29話

やわらかな影の中
676
2025/06/13 14:45 更新




-You side-








静かな夜の気配のなかで、ジミンがそっと言った。




지민
지민
나중에 후회해도 좋으니까… 한 번만더 해도될까?あとで後悔してもいいから…もう一回、してもいい?






私が返事をする前に、
その目が、すでにすべてを語っていた。






ためらいと、覚悟と、切実なほどのやさしさ。




あなた
 …후회하지 않을 거야.…後悔なんか、しないよ




そう頷いたとき、
ジミンの指先が、もう一度私の手を探す。

その手のひらは、すこしだけ汗ばんでいて、
それが愛おしかった。







今度のキスは、ゆっくりとしたものだった。






最初に触れたのは唇の端。

それから、ためらうように少し引いて、
また、そっと真ん中に。













彼女の息が、私の息と重なる。
まばたきを忘れるほど、長い瞬間だった。

静寂のなかで、ふたりだけの呼吸が、
かすかな音を立てて重なった。





それは、恋という言葉でさえ追いつけないものだった。






ジミンが、すこし離れる。








지민
지민
…아, 안 되겠다…あー、だめだ




小さく呟いたその声は、
どこか恥ずかしそうで、笑っていた。






あなた
뭐가?なにが?





私もつられて笑う。

 

ジミンは、まだ私の手を握ったまま、
頬を指でかいている。







지민
지민
…あなたの韓国語表記이 조용하면, 너무 좋아서 마음이 아파져…あなたが黙ってると、好きすぎてつらくなる
あなた
…나는 말이 좀 없는 편인데…私、黙ってること多いけど
지민
지민
그래. 그거 다 아는데도, 힘들어. 왜 그런걸까.そう。それも知ってるのに、つらいの。なんでだろうね
あなた
사랑에 빠진 거 아니야?恋しちゃったんじゃない?





そう言ってみたら、
ジミンの瞳がまっすぐ、私を見る。








지민
지민
응, 맞아. 나…계속 사랑하고 있었던 것같아そうだね。恋してるんだと思う。ずっと





まっすぐだった。




その視線に、私は逃げ道をなくして、
でも、逃げたいとも思わなかった。






あなた
…나도 그런 것 같아…私も、そうかも




自分でも驚くくらい、静かに、自然に言えた。







その言葉を言うことが、こんなにも軽くて、
こんなにも重たいのだと、私は今やっと知った。

ジミンの目が、ほんの少し潤んで見える。







지민
지민
정말 너무 반칙이야…本当ずるいひと...





と言って、彼女は私の肩に頭をあずける。




それは、ふたりにとって、
すごく自然な姿勢だったと思う。













気づけば映画はもう終わっていた。


モノクロの映像は黒い画面へと
フェードアウトしていて、部屋の照明も消えたまま、
暗がりだけがそこにあった。




でも、その暗さはもう怖くない。








ふたりでいる夜の闇は、やわらかい影に満ちている。

それは、心の中にある不安やためらいが、
少しずつほどけていって、夜に溶けていく感覚だ。






私は、ゆっくりと息を吸い、
ジミンの髪に、静かに触れる。









あなた
…있잖아, 지금이라면 말할 수 있을것같아…なんかさ、いまなら言える気がする
지민
지민
뭐?なに?




ジミンが、小さく顔を上げた。





私が見下ろす位置にいるジミンは、
少しだけ不安げで、でも、その不安の下には、
希望の光が宿っているようにも見える。




私はそれに応えるように、ゆっくりと言葉を置いた。






あなた
지민이랑 함께 있으면, 마음 속 그림자가 부드러워져.ジミンと一緒にいると、心のなかの影がやわらかくなる
지민
지민
…부드럽게?…やわらかく?
あなた
내가 겁도많고, 차갑고, 많은 걸 말로 잘 못하는 그런거…自分が、怖がりで、冷たくて、いろんなことを言葉にできないこととか…
あなた
모든게, 그냥 이대로도 괜찮다고 느껴지게돼ぜんぶ、そのままでいいんだって思えるようになる





ジミンは、なにも言わなかった。

ただ、その目がゆっくりと細くなって、
ほんの少しだけ、泣きそうになっていた。







지민
지민
그렇게 말해줄 거라고는 생각도 못 했어.そんな風に言ってもらえるなんて、思ってなかった
あなた
진짜?ほんと?
지민
지민
응…내 안에서의 あなたの韓国語表記은 아마더멀고, 더 아름답고, 닿을 수 없는 존재였던 것같아うん…私の中のあなたは、もっと遠くて、もっと綺麗で、届かない存在だった
あなた
…그럼, 닿은 거네…じゃあ、届いたんだね
지민
지민
うん





 

ジミンは、そっと微笑む。




そして、もう一度、ほんのすこしだけ、
私の肩に寄りかかってきた。



その体温が、たしかに私の肌に触れている。






やわらかな影に重なるように、
そっと、ふたりの距離が縮まっていく。



これが恋だと、
これが関係の始まりだと、
誰かに名前をつけてもらう必要はなかった。













ジミンが、あの夜のように、小さな声で言った。





지민
지민
…사랑해, あなたの韓国語表記…好きだよ、あなた




私は、今度は頷いた。





あなた
응, 나도.うん、私も






 

ふたりの間の沈黙は、
もう、なにも隠す必要のないものだった。





夜の深さの中で、ふたりの呼吸が、
寄り添うように重なっていく。

やわらかな影の中で、
私たちはきっと初めて、ほんとうに近づいた。

 





プリ小説オーディオドラマ