──シオン視点
人は、見た目で判断される。
“整った顔”と“財閥の家の息子”という肩書きだけで、周囲は勝手に憧れて、勝手に怖がって、勝手に離れていく。
──どうせ、おまえは俺たちとは違う。
何度そう言われてきたか分からない。
誰もいない放課後の屋上で、シオンはフェンスにもたれて煙草に火を点ける。
もちろん、火を点けるだけで吸いはしない。ただ、煙の香りだけがこの空っぽな毎日を誤魔化してくれるから。
思い出すのは、あの後輩──ユウシ。
髪はやわらかそうで、声はどこまでも透き通っていて。
感情をすぐ顔に出すタイプなのに、必死でそれを隠していた。
「好きな人を信じたいだけ」なんて、聞いててイラついた。
でも──少しだけ、羨ましかった。
俺には、そんなふうに想える人なんて……いなかったから。
一週間前、リクに会った。
あいつは相変わらずだった。女の子を2人連れて、店の個室にのうのうと現れて。
その名前を出した瞬間、リクの笑みがほんの少しだけ、歪んだ。
シオンはその瞬間、グラスを置いて立ち上がった。
リクは、驚いた顔をして笑った。
シオンはそう言い残して、その店を出た。
本気なんかじゃなかった。
ただムカついただけだった。リクの「おもちゃみたいな愛し方」が。
でも──ユウシに会って、初めて分かった。
(……やべ、なんか……気になる)
目をそらされると、追いかけたくなった。
言葉に棘を出されると、もっと奥を知りたくなった。
あいつは、リクに囚われてる。
でも、その“檻”を壊してやりたいと思ってしまった自分がいた。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。