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第9話

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2026/03/30 03:00 更新


 無陀野先生の冷徹な宣告と共に、
 私は羅刹学園の最下層にある
 「特別収容室」へと連行された。
 窓一つない、冷たい石壁に囲まれた部屋。
 唯一の救いは、私の【無垢なる聖域】が
 この湿り気を帯びた空気をほんのわずかに
 浄化してくれていることだけだった。

 あなた
 「(……私、どうなるんだろう)」

 自分の掌を見つめる。
 神門さんの前で出してしまった、あの桃色の光。
 隠し続けてきた私の「不純な血」が、
 ついにこの学園の平和を壊してしまった。

 その時、重厚な鉄扉の向こうから、
 聞き慣れた怒鳴り声が響いてきた。

 京夜
 「俺が自分の従妹に面会して何が悪い!」

 鬼1
 「花魁坂総隊長、これは桃源院の直命です。」
 「いくらあなたでも通すわけには……」

 京夜
 「……始末されたいの?かなりなドMだねぇ」

 氷点下の、でも激情を孕んだ京夜さんの声。
 次の瞬間、扉の鍵が強引に抉じ開けられ、
 息を切らした京夜さんが飛び込んできた。

 京夜
 「あなたちゃん……!」

 あなた
 「京夜さん… 大丈夫なの?」
 「こんなことしたら立場が……」

 あなた
 「俺の立場なんて、君の安全に比べればゴミ以下さ!」

 京夜さんは私の肩を掴むと、
 必死に自分の鬼の気を私に浴びせかけた。
 私の「桃の匂い」を、無理やりにでも自分の香りで
 上書きしようとしている。その指先が、微かに震えていた。

 京夜
 「いいか、桃源院の老いぼれたちが何を言っても、
  『何も知らない』と突き通すんだ。」
 「君の血を隠しきれなかったのは、俺の不徳…」
 「100俺のせいなんだから、あなたちゃんじゃない」

 あなた
 「……京夜さん。もう無理だよ。(笑)」
 「神門さんは確信してた。それに、四季くんも……」

 私が四季くんの名前を出した瞬間、
 背後の壁を蹴破るような勢いで、もう一人の人影が。

 四季
 「—— 誰がどうしたって?」

 あなた
 「四季くん!?」

 通気口のダクトをぶち壊して現れたのは、
 煤だらけの四季くんだった。

 四季
 「お前ら……。面会なんてヌルいことしてんじゃねーよ。」
 「今すぐここから出るぞ」

 あなた
 「四季くん、何を……ここは学園の最下層だよ!」
 「脱走なんてしたら、四季くんまで罰を受ける!」

 四季
 「関係ねぇ。こんな暗いとこでシケたツラしてる方が、
  俺にとっては『罰』だ」

 四季くんは迷いのない瞳で私を見据え、
 その大きな手を差し出した。

 四季
 「お前の血が何だろうが、俺はもう決めたんだよ。」
 「お前の手が、俺の熱すぎる血を冷ましてくれる。」
 「……それが例え、鬼を殺すための光だったとしても、
  俺には、っあー…要は俺らにはそれが必要なんだ」

 あなた
 「……四季くん」

 京夜
 「んー四季くん、俺の感動的な保護シーンに
  割り込まないでくれるかな!」
 「あなたちゃんの脱走をリードするのは、
  この俺、花魁坂京夜の特権だ!」

 四季
 「るせぇチャラ先! お前は隠すことばっか考えてるから
  後手に回るんだよ! 俺は奪いに来たんだ!」

 一触即発の二人。 でも、その喧嘩腰のやり取りが、
 私をこの絶望から救い上げてくれる。

 あなた
 「……ふふ。二人とも、相変わらずバカだね」

 私は立ち上がり、二人の間に割って入った。
 指先から、ほんの少しだけ【曼珠沙華】の糸を出す。
 今度は隠さず、淡い桃色の光を宿した、私だけの糸。

 あなた
 「……行こう。私、自分の血のこと、
  もっとちゃんと知りたい。……二人と一緒に」

 三人の力が、地下の冷気を吹き飛ばす。
 羅刹学園始まって以来の「救護班による大脱走」が幕を開けた。



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